栞子の乳房検診


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 俺は思わず目を奪われた。
 篠川栞子。
 なんて綺麗な人なのだろう。
 学生時代から医学を学び、晴れて患者の診察を受け持つようになった俺は、まだまだ経験が足りないために女性の胸というものを見慣れていない。場数を踏んだ医師ならもっと見慣れているものなので、美人だろうと何とも思わずに診察に臨めるものなのだが、俺の場合はまだ完全には欲情めいた気持ちを封印できない。
 もちろん診察に支障が出るほど興奮したり、我を忘れて揉みしだくような真似は決してしないが、栞子ほどの美人では見惚れてしまう。
 黒髪の長髪。ブラウスの上からでもわかる大きな胸。
 うむ、衣服を内側から膨らませるような、こんなパンパンの巨乳をしていれば、男なら大なり小なり目を奪われるのが普通のはず。
 とにかく、冷静に診察をしなくては……。
「あ、あの……。よろしくお願いします」
 なかなか気の小さい人らしい。
「どうも、篠川さん。さっそく問診から初めていきましょう」
「……はい」
「妊娠や出産のご経験は」
「ありません」
 栞子は顔を赤らめて、恥ずかしそうな細い声でそう答える。
「性交経験は無いということですね」
「…………はい」
 さらに恥ずかしそうにして、小さな小さな声で頷く。
 ふむ、処女か。
 なんとも初々しいというべきか。ちょっとした質問くらいで、ここまでモジモジする女性なんていうのは滅多にいない。
 というのも、乳がん検診に来るのは三十代や四十代の女性が多い。歳がいっていればいっているほど、既に経験があって見せ慣れている可能性は高まるし、診察を受けた場数のおかげで割りに冷静に服を脱ぐ。
 しかし、二十代でも症例がないわけではない。
 彼女は健康を思って来たのだろう。
 俺はさらに生理周期や病歴、家族暦といった必要な質問を行って、それらの回答について問診表にチェックを入れる。生理や月経について答えるときは、やはり恥じらいっぽく赤らんで、どうにも可愛らしかった。
「では視診触診の方に移りますので、服の方をお願いします」
「……はい」
 既に耳まで染まっている。脱ぐ前からこんなに赤くて、この人は乳房の視触診に耐え切れるのだろうか。
 栞子は衝立の裏へ移動し、まずは上から脱ぎ始める。
 衣擦れの音から、俺は想像した。
 裾の内側へ腕を引っ込めた栞子は、中から上へ持ち上げる形で一枚脱ぎ、軽く折りたたんだブラウスを脱衣カゴの中へそっと置く。男性医である俺の存在を気にしつつ、羞恥に染まった表情で背中へと手をまわし、ブラジャーのホックを外すのだ。
 ブラジャーが落ちないように、胸を隠すかのように、片腕で胸元を支えた栞子は、左右の肩紐を一本ずつ順番に下げていく。
 隙間から引き抜く形でブラジャーを取った栞子は、両腕でしっかりと胸をガードしながら、すっかり肩の縮んだ赤面姿で衝立の裏から姿を見せた。
「……脱ぎました」
 椅子に座った栞子は、モジモジしながら両腕を横に下ろす。
 すごく、良い胸だ。
 ただ大きいだけでなく、綺麗な丸みのカーブを成して、美乳といえる形状なのだ。乳輪も決して大きすぎることがなく、小さすぎるわけでもない。
 こんな凄いおっぱいを観察できるなんて……。
 いや、あくまでも診察だ。医師というのは信頼が大切な職業なので、患者に疑われるようなことはあってはならない。
「ではじっとしていて下さいね」
 俺はそーっと顔を近づけ、視診を開始した。肌質から皮膚疾患の有無を確かめつつ、表面におかしな凹凸がないかもじーっと見ていく。

 じぃぃぃぃ……。

 と、必然的に視線を注ぎ込む形となる。
 栞子は静かにじっとしているものの、顔が明らかに言っていた。
 ――は、恥ずかしいです……。
 大人しい彼女なら、控えめに小さな声で言うかもしれない。
「同時に触診も行っていきます」
 断りを入れてから、俺は栞子の乳房に触れた。下から持ち上げるような形で指先に乗せ、手に重量を感じ取る。
 やっぱり、凄くいい胸だ。
 俺は鷲掴みにして指を沈め、しこりや異常な張りがないかを探り始める。診察目的のマニュアルに則した揉み方で、あくまで医療行為の範囲を外れないように務めた。
 いや、しかし――。
 少しは長めに触っていたい。
 ふと顔を見ると、栞子の頬は恥じらいで上気していた。
「少しかかりますので、ご辛抱下さい」
「は、はい。大丈夫です」
 俺はさらに探りを入れ、しこりの有無を確認すると同時に、揉み心地に関しても手に覚えこませていた。もっちりと張り付くようでいて、ふんわりともしている優しい質感が、柔らかな弾力で沈めた指をそっと押し返す。

 モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。

 じっくり揉み込む。
 顔にはいやらしさを出さず、真剣さを装い続けた。

 モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。

 とても心地良い。
 いつまで揉んでいられるだろう。
 長くやりすぎれば当然まずいが、もう少し揉んでいたい欲求もある。
 あと三十秒。

 モミ、モミ、モミ、モミ、モミ、モミ――。

 俺は普通の患者を揉むより長く、この手に栞子の乳房を味わった。




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