アンジュの身体検査


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 その女、アンジュの尻穴が指に撫ぜられていた。

 身体検査という理由で、全裸に剥かれ、テーブルの上に上半身を寝かしつけられたアンジュは、尻を無防備に突き出す形となっている。手枷で両手を封じられ、抵抗を許されないアンジュは、他人の手で肛門に触れられるという恥辱を問答無用に味わっていた。
 もちろん、アンジュは叫んだ。

「……やめなさい! やめろォ!」

 必死に声を上げていた。

「私はミスルギ皇国第一皇女・アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギなるぞ!」

 だが、この世界でノーマに人権は認められない。皇女としての権限も、人としての尊厳も剥奪される。ノーマであったことが発覚して、アルゼナルへと連れて来られたアンジュは、身分ばかりか本名さえも取り上げられ、想像を絶する扱いをまさに受けている。

「――いや、お前は今からアンジュだ」

 アルゼナルの総司令官、ジルは冷酷にそう述べた。
 そして機械の義手で、何の配慮も遠慮も無く、肛門へ指を押し付けグリグリとほじり始めたのだ。
「――いやぁぁあああ!!!」
 恥辱のあまりの絶叫だった。
 アンジュは皇国皇女として生まれ育ち、元々は人気者で、自分がノーマであるなど想像もしていなかった。こうして監獄まで連行され、検査を受ける憂き目にあっても、未だに何かの間違いだと信じてやまず、所持品の指輪を没収される際には、監察官に向かって「触るな」「下級役人の分際で」と暴言まで吐いている。
 そして、プライドも高い。
 そんなアンジュが、肛門の皺をなぞられているのだ。

 ぐに、ぐに、ぐに、ぐに……。

 と、機械義手の冷たい指先で、揉みほぐすかのように弄っている。
「――やめろ! やめろと言っている! やめろォ!」
 喚くのも当然だった。
「お前の尊厳を奪ってやる。ここに来たということがどういうことなのか。今のうちから学ぶといい」
 ジルはそう言って、両手で尻たぶを鷲掴みに、親指で肛門を広げられる。
「――ひぃっ!」
 アンジュは急速に赤面して、溜め込んでいた涙をこぼした。
「ほう? これが皇女様のケツの穴か」
 放射状に皺を広げる窄まりが、容赦なく視線に晒される。アンジュの肛門は、まるで視姦に耐えかね喘ぐかのように、ヒクヒクと収縮を繰り返した。
「――み、見るな!」
 肛門括約筋に力が入り、皺が縮まる。
 そして、力が緩んで、縮まっていた皺が伸びる。
 力み具合で皺の窄まり方が変化して、ヒクヒクと肛門は蠢き続けた。
「人の……人のこんな場所を!」
 アンジュは暴れようと体を揺するが、手枷で両手が使えない状態だ。抵抗など意味をなさない。ただ手間取るというだけで、結局は全ての検査は遂行されると決まっているのだ。
「意外と黒ずんでるな。皺は何本だ? 数えてやろう。いち、に、さん、し……」
 嬉々として本数を声に出して数え始めるジルの声に、全身が総毛立ち、アンジュは限界まで赤くしきった顔をさらに熱くして苦悶した。
 アンジュはただ皇女に生まれ育っただけでなく、十六歳のうら若き乙女でもある。羞恥心の高い年頃に、突如として身分を剥奪された挙句に、肛門をまじまじと観察されているのだ。
「十六本か。エマ、記録しておけ」
「そうしましょう」
 監察官のエマ・ブロンソンは、書類に記録を書きとめる。
「こんなことをして! こんなことをしてタダで済むと――」

 ベチン!

 尻をぶたれた。
 スナップの利いた手首から、しなやかに繰り出されたビンタが、尻たぶをプルンと揺らす。
「タダで済むから、こんなことをしている」
 ジルは冷酷に言った。
「お前に尊厳はない。お前の方こそ、あまり楯突くとタダでは済まなくなるかもな」
「……ぐぅっ!」
 アンジュは屈辱に飲まれるしかなかった。受け入れきれない事態へのショックと、裸に向かれた衝撃と、尻穴を弄られる羞恥と屈辱だけが、アンジュの心内を満たしていく。それ以外の全てが頭から追い出される。
 やめろ! やめろ!
 それしかない。それだけをアンジュの心は叫んでいる。
 そして、この場所はそんな些細な感情などまるで無視する。
「さて、検査だったな」
 ジルは中指を挿入し、肛門の中身をほじり、直腸の中を探るように動き回る。直腸壁のいたるところをなぞり尽くし、調べている。
「……あっ……あぁ……あっ………………」
 心と、尊厳そのものを掻き乱されているようだった。
 尻穴に感じる機械義手の硬い冷たさと、それが直腸へ侵入して中身をほじくってくる違和感は、まるで心をねじ伏せ蹂躙してくるかのようで、一秒たりとも耐えられない。耐えられないのだが、だからどうするということもできず、アンジュはひたすら、屈辱に対する喘ぎを漏らした。
 ずぷっ、ずぷっ――。
 肛門を侵略され、
「やめ………やめ………ろ…………このぉ………………!」
 アンジュはただ悔しがるだけの声しか出せない。
「どうだ? 皇女様。ケツ穴をほぐされる気分は」
 ジルはわざとらしく皇女と呼ぶ。
「お、おのれぇ……」
「ん? どうだと聞いているんだ」
 指をゆっくり、深く出し入れしてみせた。肛門を意識させ、指が出入りしている実感を与えていく。ジルの機械義手の指がどんな形で、どんな長さか。どうでもいい情報が尻でわかってしまうほど、嫌でもそこに意識が集中した。
「このぉ……!」
 指が根元まで埋め込まれ、直腸にずっぽり収まる。それがゆっくり、ひどくゆっくり引き抜かれ、指の先端ぎりぎりまで抜かれたところで、再び内部へ侵攻してきて、何度も何度も執拗に出入りばかりを繰り返した。
「……くっ、ううっ」
 アンジュはただ、涙を流す。
「おっと、下の穴も調べないとな」
 ジルは肛門から指を抜き、次は膣口を探り始める。未だ男を知らない、処女の穴にまで容赦無く挿入され、アンジュは心底実感した。
 ここでまともな扱いは受けられない。
 本当に身分を剥奪され、このような扱いをされるのだと、膣内に入り込む機械義手の指の触感から身に染みた。
 だが、何かの間違いだ。
 きっと、ミスルギ皇国からの解放命令が届くはず。
 そして、決して赦さない。
 皇女であるアンジュにこのような扱いなど、絶対に赦さない。
 きっと、制裁を……。
 その時のことばかりをぼんやりと夢見て、虚ろな目で、アンジュは膣内検査を受け続けた。




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