ある日の夢 グイーネ ゲオルイース 百合


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 むぅぅ……。
 また、この戦争の夢か。相変わらず夢とは思えない現実感だな。
 それに夢の中で寝ていたのも、なんというかおかしな気分だ。

 監獄のベッドとは呼べないベッドで眠りにつき、こうして夢の世界に没入したゲオルイースは、今現在のここでの状況を思い起こした。
 そう、確か……。
 アーベント、ヴルウ、ベローの三人が見張りで、女二人が休息だった。
 だからゲオルイースは久々に、まだ魔族が現れる前の平和な時期にそうしたように、グイーネと共にベッドで眠っていた。同じ布団を共有している温もりと、少し手を伸ばせばグイーネの身体に手を触れられることの安心感に、ゲオルイースはどこか幸福に満たされていた。
 夢とはいえ、旧友とこうして一緒に過ごしている。
 それに何だか、グイーネは綺麗だ。
(いかんな。なにを考えているんだ。私は……)
 この一瞬で脳裏をよぎった邪な考えに、ゲオルイースは己の思いを頭から振り払うが、すやすやと眠る美貌の顔を見ていると、その感情は払っても払いきれないほどにおびただしく沸いてくる。
 駄目だ。我慢できない。
(ゆ、夢なんだ……だから本当は許されないことであっても……)
 ゲオルイースはグイーネに唇を重ねた。
「グイーネ……グイーネ……!」
 どうして、こんなにもグイーネが愛おしいのだろう。懐かしいと思うのだろう。まるで二度と会えないはずだったものが、何かの奇跡でここにいるかのような気持ちが何故だかして、決して離したくない思いにかられる。
 気がつけば、もう一度キスをしていた。
 熱い吐息のためなのか、少しばかり湿気が乗って、しっとしとした唇の柔らかさは、しだいにゲオルイースの心を狂わせる。
「あぁ……グイーネ……本当に……グイーネ……」
 何度唇を重ねても、何も知らずに寝息だけを立てているグイーネの寝顔を見ていると、悪い悪戯を楽しむ子供じみた高揚感と、いけないことをしてしまった背徳感と、さらにはグイーネの美貌にこんな形で触れてしまった喜びで、ゲオルイースの心はすっかりと満たされていた。
「だ、駄目だ。私はもっとグイーネを感じたい。自分でも、どうしてこんなにもグイーネのことが……! 自分でもわからないんだ……!」
 苛まれるかのように、存分にグイーネを味わった。
 唇はおろか、耳を舐め上げ、その穴の中身を舐め取って、首筋にも吸い付いた。キスというキスの雨が、グイーネのおでこにも、頬にも降らされ、顔面のそこかしこにゲオルイースの唾液が付着していく。
「……んっ」
「っ!」
 急にグイーネが寝苦しいかのような声を上げ、バレてしまったのかとゲオルイースはビクりとした。
(……まずい、か。これ以上は)
 自分の罪に初めて気づいてしまったかのように、ゲオルイースは身を引いて、グイーネに背中を向けて眠りに戻る。夢の中でまた寝ようというのもおかしいが、とにかく眠りにつこうとまぶたの裏側にある暗闇にでも意識を向けた。
 そのとき、だった。
「ゲオルイース」
 突如として名前を呼んでくるグイーネが、急にゲオルイースの背中に抱きつき、手の平でまさぐるように身体をさすっていた。
「ぐ、グイーネ……」
「ふふっ、甘えん坊さん」
 それはまるで、優しい母親が悪い子供をそっと諌めるかのような、意地の悪さと母性に溢れた声だった。
「……は、はは……なんの話だ? 今の私は昔の私ではないんだぞ?」
「そうねぇ、いつもどこかで泣いては私のベッドにもぐりこむ、可愛い女の子はどこへいっちゃったのかしらね。って、思っていたけど、ここにいたようね」
「きき、き、気のせい! じゃ、ないか? ここにいるのは人類解放軍の――」
「ゲオルイース」
 必死に慌てた言い訳は、そうやって名前を一言呼ばれるだけで封じ込まれた。
(わ、私は……)
 背中には、グイーネの膨らみがぶつかっている。後頭部には顔が近づき、ゲオルイースの髪の隙間をささやかに通り抜け、グイーネの熱い呼吸が届いている。
「いいのよ。私も、また甘えてもらえて、ちょっと嬉しくなっちゃって、よかったらこのまま続けてみない?」
「続けるだと? 何を言って……」
「嫌かしら? そっちからキスしたくせに」
「うっ、それを言われると……」
「じゃあ、決まりね」
(ううっ、勝手に決められた……)
「脱ぎましょう? この先、何があってもお互いを覚えているため……」
 死地である以上、生きて戦い抜ける保障はない。
「…………わかった」
 静かに頷くゲオルイースと、どこか決意めいているグイーネは、お互いに背中を向け合いながら、お互いの衣擦れの音を意識しながら、一枚ずつ、だんだんと脱いでいく。そうして二人は一糸纏わぬ姿となり、万人が息を呑むであろう美の裸体がこの場に揃った。
「では横になってごらんなさい? ゲオルイース」
 ……恥ずかしい。
 しかし、ゲオルイースの方から唇を奪っている手前、断ることなどできはしない。
「……本当に……するのか? ……グイーネ?」
「嫌かしら? 私じゃ」
 穏やかな微笑み。そんな言い方をされてしまうと、まさかグイーネを嫌うわけのないゲオルイースには、もう何も言えなくなる。
「キス、しましょうか」
 そっと両手で頬を包まれると、手の平の温もりがあまりにも心地よく、うっとりと蕩けてしまうゲオルイースへと、今度はグイーネの方から唇が重なった。
 そして、ただ触れ合うだけのキスではすまない。
「――んっ、むぅっ!」
 ゲオルイースが驚いたのは、舌が攻め込んで来たからだった。
「あむっ、じゅつるぅぅ――」
 大きな口を開けるグイーネは、ゲオルイースの唇をいっそ食べようとしている勢いで、大胆なまでに貪っている。
「んっ、んぬぅ、んぁ……んんぅ…………」
 ねっとりと唾液を帯びた舌先が、ゲオルイースの唇を押し開き、まずは前歯を舐め取って、さらに口内へと潜り込む。何かを探さんばかりのグイーネの舌は、その先端でゲオルイースの舌を見つけるなり、絡ませ合うための動きを始めて一層貪り尽くしていく。
 息など忘れていた。
 口に広がるグイーネの温度と、頬を優しく包んでくれる両手ばかりが、ゲオルイースの身も心も完全に満たしきる。
 少し呼吸が苦しくなって、そうなって初めて口呼吸ができないことに気づいて、まさにそのタイミングでグイーネは唇を遠ざけた。
 濃い糸が何センチにもわたって引いていくのは、決して一本だけではない。舌と舌を繋ぐ糸の他にも、唇に張った唾液粘膜でも糸が作られ、銀の輝きは数本以上にものぼっていた。
 ぽつりと、ゲオルイースの顔を濡らすのは、一滴の雨粒だった。
「どうして……こんなに嬉しいのかしら……」
「ぐ、グイーネ……?」
「本当に、どうしてかしらね。ゲオルイース……」
 一滴ずつ、一滴ずつだけ、降ってくる雨粒は、ゲオルイースの頬で弾けて、唇の狭間にも流れ込み、あとはベッドシーツを少しばかり濡らしていく。
「どうして、だろうな」
 ゲオルイースにもわからない。
 ただ、今目の前にいるグイーネは、この先何があろうと、絶対に忘れてはならないものの気がしてならない。
 そんな理由などありもしない予感にかられ、二人は一心にまさぐりあった。
 お互いの肉体を触り合う二人の手は、乳房の上に絡みつき、ゲオルイースの豊満さが手の平に潰れゆく。グイーネの胸にも、五指の強弱がつけられて、やがてして乳首が立つ。淡い色の突起を責め合い始め、甘い痺れが走り出す。
「あ……うっ……」
「可愛い声ね。ゲオルイース」
「グイーネこそ」
「――ひゃん!」
 するとグイーネは、やったわね、と、そう言わんばかりの意地の悪い微笑みを浮かべて、標的を秘所へと変えた。
「ひゃっ! そ、そこは!」
 縦筋をなぞられただけで、ゲオルイースの全身に刺激が走った。
「あら、随分と蜜を溜め込んでいるわね」
「そ、そんなこと……」
「それじゃあ、これはなにかしら?」
 濡れた証拠を見せ付けるため、少しの愛撫で秘所を苛めたグイーネは、指に絡めた愛液をわざとらしく見せつける。
「それは……なんだろうな……」
「ゲオルイースの禁断の蜜」
「い、言うな!」
「では禁じられた滴でどうかしら?」
「神秘的に言うのも無しだ!」
「甘い汁。ゲオルイースのエキス。乱れた証拠品」
 ありとあらゆる言い方を思いついては、グイーネはそれを耳元へ囁いて、熱い湿気を宿した吐息でゲオルイースの耳を苛める。もちろんアソコへの愛撫は言うまでもなく、愛液を塗り伸ばさんとしたぐるぐるとした手つきが、ますますゲオルイースの身体を高めていた。
「あっ、んんっ! んんんっ! こんな……やられっぱなしでぇ……! わっ、あっ、わたしだって、さわるぞ! グイーネ!」
「――ひゃ!」
 責められるばかりのゲオルイースは、どうにか反撃の手を繰り出し、グイーネの秘所に指を置くなりまさぐり始める。
「……ぐっ、グイーネだって濡れているじゃないか」
「あ、あら? ゲオルイースほどではないわ」
「そんなはずはない! お、お前の方が濡れているんだ!」
 そう決め付けたいために、ゲオルイースは手を活発にして、割れ目の形をなぞってやる。それが十分に刺激となり、グイーネも息を乱して腰もくねらせ、ゲオルイースの高まりぶりに瞬く間に追いついていた。
「望むところよ。ゲオルイース」
「グイーネ……!」
 どちらともなく自然と意地を張り合うと、二人ともの意識は、もうアソコだけに集中していた。自分の秘所に置かれた相手の指。相手の秘所に触れている指への感触。二人のクリトリスが陰核包皮から顔を出し、まずグイーネがそれを見つけたと思いきや、すぐにゲオルイースも同じ場所に狙いをつけた。
「あっ、うっ、んんぅ……んふぁ……あぁ…………」
 グイーネは腰をくの字にヒクヒクと、弾むかのように感じている。
「んんっ、んぁぁ……! あっ、あぁぁぁぁぁ……!」
 ゲオルイースは髪を振り、首から上でよがっている。
 絶頂は近かった。

「ん! くふぅ――!」
「――――んんんん!」

 どちらが先だったかなど、二人にはわからなかった。
 ただ、果てたグイーネの身体から力が抜け、崩れ落ちるかのようにゲオルイースの上に重なる。その体重を感じ取り、乳と乳が潰しあっていることにも気づき、それからゲオルイースはグイーネに脚を絡めて抱き返す。
「こういうのも、悪くはないわね」
「ああ、グイーネ。できれば、また」
「次は、私の方からしてあげる」
「楽しみに待っていよう」
 グイーネの体温を全身に受け止めて、二度と離したくないかのように両腕に力を込めていたゲオルイースは、やがてようやく、眠気というものの奥底へ落ちて行く。

 夢の中でそうなることは、目覚めの時を意味していた。

 薄っすらと目を開くと、そこにあるのは薄暗い監獄の天井と、ボロ布でしかない布団。
 そうか、夢か。
 だけど――。

 グイーネ、もしも会えたら……。
 ああ、グイーネ。




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