もしもの監獄の夢 共に躾を・・・


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 いつもの薄暗い監獄で、ボロ布を敷いただけのベッドとは呼べないベッドの中で、眠りに落ちて夢の世界へ没入していく。
(ここは、監獄か)
 夢でありながら、自分のいる場所は起きている時の監獄と変わらない。
 ただ、そこにはグイーネがいた。
「お目覚めかしら、ゲオルイース」
「ん? あ、ああ……そのようだ……」
 戦場ではない。ここにグイーネがいる夢だ。
 もしここに、かつての旧友がいてくれたらと、そんな願望がもしかしたら心の奥底に隠れていたのかもしれない。
(夢だからいいが、現実なら笑えないな)
 と、ゲオルイースは心に思う。
「もうすっかり元気ね。スティアラちゃんに会ってから、いつものゲオルイースの顔に戻ってきたわ。それまでのあなたは、心が消えてしまっていた……」
(この夢では、グイーネと共に行動して、一緒にスティアラに会っているということか。ということは、ラスターもか?)
「それにしても、まともな服を与えて欲しいものよね。こんな紐だけなんて」
「ああ、全くだ。あの獄長め……」
 ゲオルイースに与えられた着衣物は、服とは呼べない単なるボロ紐で、どうにかして結び目を固定することで、辛うじて乳首や性器を隠せている。しかし、全裸に限りなく近い露出度を余儀なくされ、ふと見えたグイーネの尻など、割れ目に紐の食い込んだTバックだ。
「……すぐに着替えて、行きましょう? 昨日は時間がなくて引き返したけど、火と水の魂式であの扉を開けられる。それが脱獄に繋がるかどうかはわからないけど、まずは確かめてみるしかないわ」
(そうか。わかってきたぞ。戦場の夢で火の魂式を見つけたが、そこで目を覚ますはずが、どうやら別の夢に移ったらしい。きっとそれだけ、グイーネのことが懐かしいから……)
 ふと、気づく。
 懐かしい?
 どうして自分は、グイーネを懐かしいなど――投獄される前の平和な記憶が、もうとっくの昔の出来事に思えてきているからか。
 そういえば包帯を巻いていないが、まあ夢だ。
 隠すべき怪我など、ここでは負っていないのだろう。
「行こう。グイーネ」
 ゲオルイースは立ち上がり、土の中に隠した装備を掘り返す。まともな着衣を手に入れてはいるのだが、獄中で所持品が整っているなど怪しいことこの上ない。看守や獄長の前では決して見せるわけにはいかないものだ。
「待って、来るみたい」
 と、グイーネ。
 どうやら、看守が檻に近づく足音を聞き取ったらしい。
「……躾とやらか」
「でしょうね。そして、従わなければ反省部屋で一週間。素晴らしくてたまらないわね」
「耐えることしか許されない。実にもどかしい話だ」
 だが、グイーネが一緒だ。いや、グイーネを巻き込んでいる。共に耐え抜いていけるかのようで、罪悪感がなくもない複雑さは、きっとグイーネも同じ気持ちだろう。
「グイーネ様。ゲオルイース様。獄長がお呼びです」
 従わされているに過ぎない、本当は二人にそんなことなどさせたくない、良心的な部類の看守は、それだけ遠慮と躊躇いの篭った声をかけ、鍵穴に鍵を差し込む。
 二人は、その背中についていく。

「グッモォォニィィィング!」

 獄長はいかにも二人の肢体を嘗め回し、じゅるりと唾液の音の出る舌なめずりで、これから行う『躾』とやらに既に興奮している様子だ。
「相変わらず下品な男ね」
「全くだ」
 グイーネの言葉には同意しかない。
「その服従する気のなさが躾の時間を招くんだぜぇ? さっさと腹の底まで奴隷になって、心の奥底まで俺様に跪きなぁ!」
「ありえないわね」
「全くだ」
 同意しかない。
 この男の思い通りになるということは、精神的にも逆らう気力を一切失い、正気すら保てないまま恐怖の中で盲従する。バルカン女王がそうであったように、心の中まで追い詰められれば、もう脱獄という発想だえ持てなくなる。
「おらおら、二人して咥えなぁ! お口でペロペロ奉仕しやがれってんだ!」
 およそ会話が通じないこともわかっている。
 だが、この屈辱は……。
「もちろん、反省部屋で看守達から一週間犯され続けるコースがご希望なら、無理にやり必要はないけどなぁ!」
 一週間、それは脱獄への支障がありすぎる。
 獄長の独断一つで、一体どんな目に遭わされるかもわからない立場上、こうなったらやるしかない二人は、実に苦々しい表情で顔を寄せ合う。
「さっさと済ませましょう。ゲオルイース」
「それしかないか」
 汚物でしかないものに口を触れさせ、いっそ泥水の方がマシに感じる汚辱を味わう。無念でならない二人の舌は、涙ながらの思いで肉棒に這っていた。

 れろっ、れろぉぉぉ……。
 べろぉぉっ、ぺろっ、ぺろん――。

 二人がかりの舌使いは、肉竿の左右を少しずつ唾液に濡らしている。
「おおうっ、頑張れ頑張れ、そうやって俺様の機嫌を取りやがれ。特に救世主様の場合は身内どもを捕らえてあるからなぁ? もし噛み切ろうとでもしてみれば、闘技場で殺し合いをやらせるぜぇ?」
(ぐ、グイーネの身内だと!? この夢はどうなっている? 過去の思い出の再現ではないようだが……)
「んで、英雄様ぁ、お前をお慕いしている看守どもがやたらといやがるからな。下手をすればお前に懲罰を与える代わりに、英雄大好き連中あたりがこの世からの辞表を出すかもなぁ!」
(ただでさえ逆らえない立場の女に対して、その上に人質まで出して来るとは、一体どうすればここまでのクズが誕生するんだ)
 そして、獄長の人間性がゲスなものであればあるほど、そんな男に奉仕している自分は何なのかと、あまりにも情けなくなってくる。目の前にあるグイーネの表情にも、ゲオルイースが抱いているのと変わらない感情が、ありありと浮かんで見えていた。
「あむっ、はむぅぅ……ぢゅつぅぅ…………」
 グイーネは側面を唇で挟み、ハーモニカでも吹くように顔を左右に動かしている。ゲオルイースもそれに習い、二人の頭が交互に動き続ける分だけ、さらにまぶされていく唾液は肉棒の皮膚に染み込み続けた。
 ただ、早く終わらせたかった。
 獄長を満足させ、刺激を与えて射精に導こうとしているのは、この時間が一秒でも早く過ぎて欲しいと願いを込めてのことである。

 はぶっ、れろっ、ペロペロペロ――。

 懸命に、丹念に、グイーネは亀頭を嘗め回した。触りたくもない不潔なものを我慢している顔つきで、肉棒のおぞましさに鳥肌を立てながら、先端からカウパーを吸い上げようとまでして励んでいた。
(……グイーネ一人には頑張らせない)
 ゲオルイースも舌を動かし、グイーネに負けない活発ぶりを披露する。
「だいぶ俺様のシンボルの美味さがわかってきたなぁ!」
 それを獄長は、いかにも都合のいいように解釈していた。
(そんなわけがあるか! 何が美味しいものか! こんなもの!)
 いっそ噛み切ることができたなら、どれだけ溜飲が下がることか。
 グイーネも、ゲオルイースも、何かを言いたい視線で睨み上げ、美味しいわけがないことをどこか主張しつつも、奉仕を中断することはない。
「はぶっ、じゅむぅぅっ、じゅるっ、ちゅるるん」
 ゲオルイースは亀頭を飲み込み、顔を前後に貪った。
 こうすれば終わる。
 そうすれば、たった一秒でもいいから時間が縮まる。
 そんな感情ばかりが、ゲオルイースの奉仕には篭っていた。
「あむぅぅっ、ちゅむっ、じゅむっ」
 今度はグイーネが亀頭のポジションを確保した。金髪の頭が前後に動くと、綺麗な唇には亀頭の赤みが出入りする。そのあいだゲオルイースは竿の側面を舐めてやり、時にはキスもしながら、グイーネと交代で亀頭を責めた。
(まだか! くそっ、どうせ射精をするんだろう? せめてさっさと出せばいいものを!)
 やがて二人は、二人分の舌で亀頭を集中的に舐めていた。
 ぺろぺろと、頬のくっつき合ったゲオルイースとグイーネが、できうる限りの素早い舌使いによって舐め込んで、それでもすぐには射精に至らなかった。
 結局、何分間の奉仕になったのかもわからない。
 きっと十分間以上はかけて、やっとのことでビクビクと予兆を示し、熱い白濁が解き放たれるときには、二人の顔はまとめて精液に汚された。
「ハハハハハ! 英雄様と救世主様が手を組んで挑む相手が、俺様のシンボルだったとは泣ける話だなぁ? あぁ? なんだ? 嬉しくて歓喜でぷるぷる震えてるのかぁ? そんなに嬉しかったなら、もう二、三回はヌいてもらおうかァ!」
 獄長の気まぐれな思いつきが、やっと終わったと思った二人の心を踏みにじる。
 さらに二十分、三十分と、嫌というほど時間をかけて、獄長の肉棒を味わった。
 その屈辱の時間が、本当にやっと終わる頃に出てくる言葉はこれである。
「おら看守ども! そいつらを仕舞ってこい!」
 獄長は二人を人間だと思っていない。
 看守の中に、二人の境遇を思う者達が少なからずいるというのが、せめてもの救いといえた。

 そして、檻の中に戻った二人は――。

「ねえ、ゲオルイース。もし機会があったら、切り落としちゃう?」
「それはあまりにもむごいというか可哀想というか」
「不思議ねぇ? なんだか、その台詞をどこかで聞いた覚えがあるわ」
「よしてくれグイーネ。こんなはしたない話題が二度も三度もあってたまるか」
「ふふっ、でもよかった。まだ戦えそうね? ゲオルイース」
「ああ、こんなところでも、支えになるものを見つけたからな」

 どうしてだろうか。
 あんな目に遭ったばかりというのに、不思議と心が癒えてくるような……。

 それから――。

 今度こそ本当に目が覚めて、脱獄に向けてまた行動を開始するゲオルイースは、たった今までの夢に思いを馳せる。

 そうか。
 私は、過去の思い出にも支えられている。
 アーベント、ベロー、ヴルウ――。
 それに、グイーネ。

「よし、行くか」

 今日もゲオルイースは、水の魂式を使って再現した鍵により、檻の向こうへ歩み出た。




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