ペニスを撮影した話 フォト


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 オレの名前はソウ。モトラドだ。
 小型車のトランクに積んで持ち運べるように設計された、ちょっと特殊なモトラドだ。もともと車体が小さいが、ハンドルやシートを折り畳むと、さらにコンパクトになる。まあ、速度は出ないけどな。
 オレの乗り主の名はフォト。性別は女。年齢は十七。黒い髪は背中まで長い。
 いろいろあって今いる国にたどり着いたオレ達は、ここで生活を始めた。いろいろあってフォトはお金持ちになったが――、写真好きが高じて、依頼があれば写真を撮る仕事をしている。
 フォトは、そこから付いた通り名だ。彼女に、過去の名前はない。


 白衣の男がやって来た。中年くらいで、白髪交じりのオールバック。眼鏡をかけた知性的な顔立ちだ。
「いらしゃいませ、こんにちは! 私はフォト。この写真館の店主です」
 フォトが元気よく挨拶する。
「ふむ、女の子か。失礼だが男性のカメラマンはいないのかね」
 白衣の男は、何故か困った表情でそう言った。
「いいえ、私だけですが」
「噂通りか。だったら女の子に頼むことになってしまうが、実は撮影して欲しいものがある」
 仕方なくフォトを依頼相手に決めた様子だ。
「はい。なんでもお受けしますよ?」
「その撮って欲しいものが問題なんだが、医学に使う資料写真が必要になる。人の体のある部分に症状が出て、その状態を記録として保存したいんだ」
 オレには想像がついた。女の子に頼むのは躊躇って、だけどフォトしかいないから、仕方なく依頼を持ち込む。そりゃもうアノ部分しかないだろう。
「はい。どういった部分でしょう」
 しかし、フォトは直接聞いてしまう。
「ペニスだ」
「ぺに……」
 フォトは接客笑顔のまま固まって、完全にフリーズしていた。
「陰部、男性器。呼び方は色々あるが、まあアソコの写真がいる。だから女の子に頼むのはどうかと思って、男性カメラマンがいればいいと思ったんだが……」
「分かりました!」
 凍り付いていたはずのフォトは、恐ろしい早さで答えていた。
「いや、いいのかね。自分で話を持ち込んでいうのもなんだが……」
「医学としての資料ですよね。症状を記録に残すということは、他の多くのお医者さんが、同じような病気を相手にするのに役に立ちます。多くのお医者さんの役に立てれば、多くの患者さんの役に立つことにもなります。写真であれば任せて下さい!」
 その依頼にどんな意義があるのか。一瞬にして見い出すとは、コイツもプロの職業カメラマンらしくなったというべきか。


 詳しい話を聞いた。
 この国では初めてみる症状らしく、旅人からの感染か、持ち込んだ食事か何かから、どうにかして入り込んだのではないかと予想されている。まだ患者は一握りだが、もし増えるようなことがあっては一大事らしい。
 症状は精子が増えまくること。
 睾丸の中で、溜まるべきものが異常に溜まり、増えすぎるあまりに破裂する。まるで風船が割れるみたいに、玉の袋が壊れるのは、なかなかグロテスクな末路だ。モトラドのオレには関係ないが、もしオレが人間の男だったら、絶対にゴメンだ。
「寄生虫ということまでは判明している」
「寄生虫、ですか?」
「まず、睾丸に寄生する。そこで物質を分泌して、精子の異常増殖を促す。卵を産んで、増えた精液を幼虫のエサにするといった具合で、実際に破裂してしまった患者から、寄生虫の実物が見つかったことで判明したんだ」
「それじゃあ、既に被害に遭われた方が……」
 フォトは話を深刻に受け止めていた。
 普通にエグイことだ。ギャグなんかでは済まされない。
「射精によって追い出せる可能性もあるのだが、寄生虫も馬鹿じゃない。せっかく棲みついた場所から出されないため、寄生した男性を勃起障害にしてしまう」
「絶対に勃起しなくなるのか?」
 オレから聞いた。フォトの口からは聞きにくいだろう。
「絶対ではないが非常に勃起しにくい。自分の手で勃たせるのはまず無理だ。女性の手を借りれば可能性が高まることは判明しているが、女医や看護婦だから頼めることだな。医療上の措置だからやってくれるが、女性は数が足りていない」
「フォトにやらせようとは思うなよ?」
「ソウ!」
「いや、いい。言葉が悪かった。妙な捉え方をされても仕方がないが、フォトさんには写真しか頼まない。医者でも看護師でもないからな。それは病院側の仕事だ」
 別にそこまで白衣の男を疑ってはいないが、フォトが妙な善意を起こしてもして、性接触をした患者が、フォトに対してまた妙な勘違いをする。なんてことになっては困るからな。
「とにかく、撮影は引き受けます。仕事は急ぎでしょうか」
「日が経ってしまうと、記録に残すべき状態ではなくなってしまう。明日には病院に来てもらえると助かるよ」
「では明日。時間は――」
 日程を取り決めると、白衣の男は疲れた顔をして、やけに早足で出て行った。
 よっぽど忙しくて、疲労を溜め込んでいるみたいだな。


 撮影相手となる患者は、五十歳くらいだろうか。
 ルックスはお世辞にも良いとはいえない。髪は脂っこくて硬そうで、しかも円形ハゲで顔立ちも悪い。別に普通の表情をしているだけだろうに、いやらしい視線をして見える。肌にも脂汗が滲んでいて、腹はぶよぶよで太っていて、女が生理的拒否反応を示しそうな全ての要素を詰め込んでいた。
 そんな患者がズボンを脱いで、下半身を曝け出し、診察用のベッドに横たわっていた。
「…………」
 フォトは、カメラを両手に抱えてじーっと見ていた。
 色んな感情があることだろう。
 被写体に選ばれて、自分のペニスを撮らせるために脱いだのに、カメラマンに嫌な顔をされては相手が傷つく。だけど乙女としては肉棒なんて直視できない。しかし、きちんと正面から見なければ、撮影の仕事にならない。
 エスパーってわけでもないが、フォトの浮かべる視線には、そんな感情がありありと出ているわけだ。
 瞳がきょろきょろと、色んなところに泳ぎそうでいて、実際には泳いでいない。泳ぎそうに見えるだけで、ペニスをきちんと直視している。
 まずは非勃起状態を取るので、さっさと照準を合わせてシャッターを押す。裏側や玉の部分も撮るというので、女医の手で角度を変えてもらったり、患者に脚を開いてもらい、少しばかり時間をかけたが、ひとしきり必要な写真は揃っただろう。
 あとは勃起状態の撮影だ。
「では勃たせますねー」
 女医は患者に呼びかけ、ペニスを握ってしごき始めた。
 十分美人だ。胸も大きい。こんな女にシてもらえて、嬉しくない男がいるものか。いないはずだと思うのだが、何分経っても、十分以上が経過しても、未だに勃起しないのは、白衣の男の言葉通りだ。
「もう彼女では勃ちませんか」
 白衣の男が問いかける。
「ああ、勃たんね」
「では別の看護婦を……」
「いいや、その子でどうだ?」
 どこかせせ笑っているような、全てを嘲っているような、実に性格の悪い笑みを浮かべて、患者はフォトに目を向けた。
 途端、白衣の男は厳しい表情になる。
「彼女はカメラマンです。医療上の措置には協力させないつもりです」
 きっぱりと断った。当然だ。そうでなくては困る。
「だがねぇ? 他の看護婦も、女医も、もうオレは興奮せんよ。飽きたんだよ」
 患者は大げさなまでに肩を竦める。
「だが、しかし……」
「アンタが自分で言ったんだぞ? 勃起障害を踏み倒して、勃起に持ち込める可能性は、興奮率と関係がある。アンタ自身の研究成果だ。だったら、それなりの女を用意するのが、病院の責任ってもんじゃあねえのか!」
「カメラマンには要求するなと、事前にお話したはずだ! 勝手な主張は許されない!」
「けど時間がないんだろ?」
「……」
 白衣の男は黙った。
「時間がないというのは」
 フォトが尋ねると、
「お嬢ちゃん。オレのチンポは――、いや、タマタマは、もうすぐ破裂するんだよ」
 老獪な笑みを浮かべてそう答えた。
「そうなんですか?」
 フォトは、白衣の男や女医に目を向けて確かめた。
「ああ、その通りだ」
 白衣の男が認めると、
「最初はオレ以外にも患者がいた! 症状には個人差があるからな! オレよりも若い男が、恋人にしてもらって、なんとか症状を抑えていたが、射精で寄生虫が抜ける可能性は限られている! そいつは助からなかった! やがて同じ女では抜けなくなって、だけど恋人以外の女は拒み続けた末に死んだ! 出血か? ショック死だったのかな! ひひひ!」
 完全に目がイっていた。
 狂人がおかしなことを口走って聞こえるが、一応事実なんだろうな。
「会社員をやっていた男が死んだ! オレより後から患者になったくせに、進行が早くて破裂しちまった! 政治家も弁護士も死んだ! 今度はオレもそうなる! あんな死に方はしたくない! だがロクに治療法も見つかっていない! アンタらにできることは、そうやって写真なんかで記録を取って、研究資料を積み上げることだけだ! 協力してやろうってだけで、オレってすごく良心的だな! 治せるようになるのは何年後だ? オレが死んだあとか! はははははははは! そいつは傑作だ! 傑作じゃねえか! もし死ななかったらどうする? 確かに歳かもしれねえが、こんなジジイになってから女にでも生まれ変わるか?」
 睾丸破裂の運命が決まっていたら、狂っちまうのも当然か。
 白衣の男は静かに頭を抱えていた。
「……申し訳ない。フォトさん。お金は約束通り払う。今回は帰ってくれ」
 そりゃそうだ。気のおかしくなった患者の相手は、カメラマンの仕事ではない。これはもう帰るべきだ。
「帰りません」
 オレは絶句したね。ここで帰らないっていうのは、そういうことだぞ?
「まだ引き受けた仕事が終わってません。私にはやるべきことが残っています!」
「そうそう。お嬢ちゃんの手でオレのチンポを……」
「これからも、患者は出るかもしれないんですよね? 治療法もわからなくて、どういう結末になるかだけがわかっていて、そんな怖い病気にかかっていたら、誰だって! そんな人達を少しでも多く救えたら、いつか治療法か見つかったら! だけど私はお医者さんではありません! 写真しかないんです!」
 ああ、もう駄目だ。こうなったらフォトが帰ることはない。
「し、しかし……」
 白衣の男は困るばかりか。
「他の女医さんも、看護婦さんも、みんなもう一度はしたんですか?」
「ああ、そうだ」
「だったら、こうしましょう。私の手で何も出来なければ、確かに撮影できるものがないので帰らせて頂きます。ですが、もし私が彼を勃起させたら、撮影は続行できます」
「しかし、病院としては……」
「私はやります! やるべきだと思っています!」
 フォトは瞳に、強い意志を宿していた。


     *


 患者はフォトと二人きりを要求した。
 フォト自身がそれを飲み、口うるさい医師も、女医も、モトラドのソウとかいうやつも押しのけて、患者と二人だけになっていた。
「偉いねぇぇぇ? お嬢ちゃん」
 患者は起き上がり、フォトの胸を揉む。両手でがっしり掴んで、服の上からじっくりと、揉み心地をよく確かめてやる。
「……」
 こんなオジサンに揉まれたら嫌なはずだが、フォトは少し驚くだけで、すぐに先ほどの、強い決意の篭った目つきに戻り、何も言わずに患者のことを見つめ返している。
「勃起しますか?」
「おん?」
「私の胸を触れば勃起しますか?」
 カメラマンとして来ているんだ。よっぽど仕事を無下にできない性格なんだろうな。
「そりゃ、お嬢ちゃんの努力しだいだ。お嬢ちゃんほど可愛ければ必ず勃起する。もし勃起しなければ、お前さんの努力が足りないってことだ」
「わかりました。手で握って、上下にすればいいんですか?」
「ひひっ、初めてか?」
「はい」
「歳はいくつだい」
「十七歳です」
 これは凄い話だ。五十歳のオレが十七歳にしてもらう。もし患者が結婚して、子供でも作っていれば、そのくらいの娘がいてもおかしくなかった。
「十七歳か。十七歳とは、生きてみるもんだなぁ? さっそく握ってくれ」
 患者は仰向けに寝そべった。
 すると、いつも女医や看護婦が『医療措置』を施すときみたく、患者の目をきちんと見て、相手の様子を伺いながら、右手に患者の一物を収めていく。初めて触るフォトの手つきは、まじ一瞬だけ引っ込んで、真っ赤な顔でそーっと、恐る恐るといった具合に指を巻きつけ、握り込むから、その可愛らしさだけで興奮した。
 本当なら、胸を揉んだだけで勃起していないと話はおかしい。
 寄生虫のせいだ。寄生虫がいなければ、とっくに限界まで勃起している。
「これで、いいのでしょうか」
 フォトの手が上下に動き始めた。
「おおっ、いいよいいよ?」
 萎れていた患者の一物は、徐々に大きく育っていく。しかし、半勃ちよりも柔らかい、勃起というよりは硬くなり始めの段階で、それ以上は育たない。
 黙々と五分ほど続けても、それ以上の硬さにはならなかった。
「お嬢ちゃん。ちゃんとやる気出してるか」
 患者は説教じみた厳しい顔つきになる。
「やっています」
「だがな。努力が足りていないんだ。だからこの程度しか勃たないんだ。ここまで勃ったんだから、必ずちゃんと勃起するはずなんだがなぁ?」
「他にどうすれば……」
 エッチの知識が少ないフォトは、本当にどうすればいいのかわからない。
「口だ。口を使え」
「舐めたり、咥えたりすればいいんですか?」
「そうだ。やってみなさい」
 患者は起き上がり、ベッドの横から両足を下ろして、背筋を伸ばして座る姿勢になる。フォトはその股ぐらで、姿勢を低めて、肉棒に顔を近づけた。
「……」
 フォトは躊躇った。
 口という場所は、食べ物を食べるための場所であって、男が用を足すためにある汚い部分を咥えるのは、手で触るよりもずっとずっと抵抗がある。
「やっぱり、醜いオジサンは嫌かい?」
「そんなことは……」
「そうなんだろう? こんな顔だし、ハゲだもんねぇ? 汚いし、勝手だもんねぇ?」
「そんなことはありません!」
 フォトは思い切って口をつけ、先っぽの部分から、ペロペロと舐め始めた。
「おお……!」
 患者は感激する。
「――ちゅっ」
 フォトは亀頭に唇を押し付け、そのまま手コキを行った。軽やかに上下にしごき、先端から少しずつ口に含んで、亀頭の約半分を唇の内側に収めたフォトは、ペロリペロリと舌を使って刺激を与えた。
 さらにもう少しだけ、患者の肉棒は膨らんでいく。
 しかし、それ以上は何分かけても硬くならない。
「じゅむぅ……じゅるっ、ちゅっ、んむぅぅ……」
 きちんと奥まで飲み込んで、頭を前後させるようにしてみても、それ以上大きくならない。時間をかけるにつれて慣れてきて、テクニックが身につきつつあっても、ある段階まで育った肉棒は、決してそれ以上にはならなかった。
「何でもやります。他に方法はありませんか?」
 今度はフォトの方から尋ねていた。
「いいのかね。お嬢さん」
「今回の撮影は、とても大事なことだと思っています。何としてもやり遂げたいんです!」
 フォトの眼差しは真剣そのものだ。
「ようし、心意気はよくわかった。ならばオジサンが次なる奥義を伝授しちゃおう」
 そう言って、患者がフォトに教えたのはパイズリだった。
 乳房に挟んで刺激する方法があるのだと、そう教わったフォトは服を脱ぎ、ブラジャーを外して上半身裸になり、肉棒を抱き込んだ。
 一生懸命、乳房を使ってペニスをしごく。
 左右からグニっと、プレスをかけて、上下に動かし、乳肌の中でムクムクと育ってくるのを感じ取る。途中でパイフェラまで学んだフォトは、自分の谷間に口を近づけ、舐めながら胸を使うことまで行った。
 しかし、途中まで大きくなると、またそれ以上成長しなくなる。
「お嬢ちゃん。こうなったら、セックスしかないねぇ?」
「はい。セックスとは?」
「男と女が、赤ちゃんを作るときにやる行為だよ」
「あ、赤ちゃん……!?」
 フォトはみるみる赤らんだ。
「だけど、望まないのに子供が出来たら大変だろう? 避妊の方法があるから、セックスっていうのは妊娠を防止しながらやるんだよ。ああ、もちろん子供を生みたいときは別だけどね」
「……は、はい。それで、どうやるのでしょう」
「おちんちんをお嬢さんのアソコの穴に挿入するんだ」
「それって……」
 口で咥えるよりも、胸に挟むよりも抵抗があって、やはりフォトは躊躇った。
「やっぱり、嫌かね? 心意気は嘘だったのかねぇ? お嬢ちゃんはその程度かい」
「いいえ! やります!」
「ひひひひっ、それじゃあオジサンとセックスだ。丸裸になってごらん?」
「わかりました」
 フォトはズボンもショーツも脱いで、診察用ベッドの上に仰向けに横たわる。コンドームが装着できる程度には勃っているので、患者はコンドームを付けた。
「いきなり挿れたら痛いからね。まずはこうやって、濡れらしてやるんだ」
 患者はフォトのアソコに触って、ねっとりとした愛撫を行う。
「んっ、くぅ……!」
「気持ちいいかい?」
「は、はい……少しだけ……」
「うんうん。もう少し濡らしたら、挿れるからね?」
 しばらく、患者はフォトの秘所に刺激を与えた。割れ目をなぞり、肉貝を揉むようにしていると、だんだん愛液が出て、指の滑りが良くなって、ますます活発な愛撫になる。突起した肉芽を見つけて、患者はそこを集中的に刺激して、フォトはだんだん喘いでいた。
「っあ! あぁ……!」
 フォトの乱れる姿に興奮するので、肉棒の育ち具合は維持されている。
「よーし、よしよし。それじゃあ挿れるからね? 脚を開いてね?」
「ひゃっ、はいぃぃ……!」
 フォトは仰向けのままM字開脚を行う。
「さあ、入るよ? オジサン、お嬢さんの初マンコ頂いちゃうよぉぉ?」
 患者はフォトに挿入した。
「あうぅ……! んっ、んぐっ、あぁぁ……!」
 初めての感覚に、フォトは大きな声を上げていた。
「どうだい? お嬢ちゃん。これがセックスだ」
 患者が腰を動かし始める。
「あっ、あぁ……! お、大きく……!」
 自分の膣内を出入りして、奥を貫いてくる感覚が、内側で膨らんでいくのをフォトは感じた。
「そうだねぇ? お嬢ちゃんとエッチができたからだ」
「あうっ、んんん! さ、撮影を……!」
「撮影? オジサンとのセックスが優先に決まっている」
 患者はフォトの胸を鷲掴みにして、揉みながら腰を振り、小刻みに打ちつけることでフォトの身体を揺らし続ける。
「あぁっ! うっ、うぁぁ……! あぁ……! と、撮ったら……! 続き――してもっ、構いませんから――写真を――写真を――」
 喘ぎながらも、フォトは仕事を忘れない。
「またお嬢さんが勃たせてくれればいいだけだろう? ほら、もっと締め付けて!」
「駄目です! ちゃんと写真を撮らせて下さい!」
「君ねぇ……!」
 黙らせてやろうとばかりに、患者は肉棒を使いこなし、指先で乳首まで刺激する。喘ぎ声しか出させないため、大いに感じさせようとするのだが、
「写真をぉ……! とっ、おぁ……! らせて――――」
 フォトは決して、仕事を放棄したがらない。
「しょうがない。撮ったら、ちゃんと続きをするんだぞ」
 いつのまにか、セックスの続きは『ちゃんと』やらなければいけないものと化し、根負けした患者は一旦肉棒を引き抜く。
「はぁ……はぁ……」
 息を荒くして、フォトはカメラを手に取った。
 患者には一度寝てもらい、レンズ越しにペニスを見て、立派にそそり勃つものにシャッターを押し、また別の角度からもピントを合わせ、シャッターを落としていく。
 撮影は滞りなく進んだ。
 お互いに全裸なこと、撮影対象がペニスであることを除けば、フォトの表情は情熱をもって仕事に取り組む職業マンのものでしかない。
 ただ、途中で尻を揉まれていた。
 亀頭のアップや裏面からのアングルなど、複数のショットが必要なため、上から見下ろすようなアングルでも一枚撮りたい。被写体の場所を考えると、患者の腹部にカメラを置き、寝そべるような姿勢で撮るのがやりやすい。
 つまり、仰向けになった患者の顔に、フォトは自分の体を乗せることになる。その時に患者は手を伸ばし、尻を撫で、揉み込んだのだ。
「…………」
 シャッターを切るまで、フォトは絶対にレンズから目を離さなかった。集中力の限りを尽くして、撮影だけに専念していた。


 そして、患者は続きを要求した。フォトは応じた。
 精液増加による睾丸破裂は、患者を射精に導いてやれる誰かでなければ延命できない。同じ女性で射精を繰り返すと、やがて出なくなる。フォトは患者の新しい相手となった。
「……」
 フォトは四つん這い。両手でシーツを少し握り、お尻は患者の方へ向け、これから挿入される直前にいる。
「よーし、今日も挿れちゃうぞ?」
 患者はウキウキとしながら、ずっぷりとペニスを挿し込んだ。
「……ん! んっ、んぅっ、んあん!」
 尻に腰をぶつけるようにして、ゆさゆさとピストン運動を行うと、フォトの身体も衝撃で前後に揺れる。柔らかく丸いお尻は、ぶるかるたびにプルンプルンと、瑞々しく振動していた。
「お嬢ちゃん。本当は嫌なんだろう? こんな汚いオジサンと」
 醜いルックスの患者は、円形ハゲの頭頂部がつるりと輝き、その周囲に残っている髪は脂質でゴワゴワしている。顔立ちも完全に崩れていて、普通の表情をしていても、いやらしいことを考える目つきに見える。しかも歯は黄ばんでいて、口臭があって、ぶよぶよに太った腹の脂肪もだらしない。
 女の子がムリだと感じる要素が、たっぷり詰め込まれた男である。
「いいえ……」
 しかし、フォトはそう言った。
「おや、どうしてだい」
「お医者さんが教えて下さったお話は真実です。誰かが射精させないと、あなたの睾丸は、だからこれは、人を救うことです」
 きっぱりと答えると、
「うっひひひひ! えひ! いひひひひひ!」
 患者は醜く笑った。
「……んぁ――あぁ……! あふぁっ、あっ、――んくぁ――ひあっ、ひっ、はぁん!」
 腰振りが激しくなって、フォトはより喘いだ。
「こんな病気にかかれてラッキーだよ! おかげでオジサン、こんなに若くて可愛い子とヤれるんだ! 面白ォ! 最高ォ!」
「あぁぁ……! ひっ、ふぅぅぁ――はぁぁ……! あぁっ、んひぁ……!」
 じきに射精のときになり、コンドーム越しに広がる熱い白濁をフォトは感じた。もしかしたら、寄生虫が運良く精液と一緒に出ている可能性があるので、使用したゴムや精液は必ず病院に提出する。
 看護師を呼んで持っていかせて、後始末が済むと、まだ勃たせる元気を残した患者は、今度は対面座位を要求した。フォトは応じた。
 あぐらをかいた患者と、正面から抱き締め合うような形で、アソコの穴にはぴったりと肉棒を収めたフォトは、下腹部に力を入れて締め付けたり、上下に動いて、患者に快楽を与えてあげていた。
 そして、患者はお尻に手をまわし、揉んだり撫でたり、好きなように楽しんでいた。
「お嬢ちゃん。オジサンが嫌いになったでしょう」
「……どうして、ですか?」
「オジサンはね。もう、お嬢ちゃんとセックスがしたいだけなんだよ?」
「不幸だったんですね」
「え?」
「だから、きっと神様が、プレゼントをくれたんです。病気は一時のもの。きっと治ります。きっと、きっと――」
「…………」
 患者は何も言わなくなった。
 ただ気まずそうに、それでもセックスだけは楽しんだ。


     *


 
 オレの名前はソウ。モトラドだ。
 オレの乗り主の名はフォト。性別は女。年齢は十七。黒い髪は背中まで長い。
 例の寄生虫を除去する方法や、病気が出てきた原因が突き止められ、新聞でそのニュースを読んだフォトは、まるで我が幸せのように舞い上がっていたが、病院から帰ると暗くて悲しそうな顔をしていた。
「あのおじいさん。亡くなったって……」
「ああ、残念だな」
 オレにはそれしか言えなかった。
 フォトから聞いた死亡時刻と、新聞にある治療法の発表時期を見比べると、ちょうどあのジジイが死んだ翌日に、約一名の完治に成功している。そのタイミングなら、クソジジイを救うことも出来たはずだが、さては病院の連中……。
 あの白衣の男、あのジジイを嫌っている様子だったし、決してありえない話じゃない。
 しかし、あの勝手な爺さんが死んだところで、オレはちっとも悲しくない。
「あと、一日早ければ……」
 だからオレは、余計に何も言えなかった。
 ただ、一言だけ言わせてもらおう。
「フォト。お前は女神だよ」
「ソウ。何言ってるの?」
「いいや、やっぱり忘れてくれ」
 それ以外、あとは何も言わなかった。





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