季風鳴が電車に乗ったら


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 ち、痴漢……。

 やや混雑した電車の中で、中学生ほどの少女が深く俯いていた。
 黒髪をポニーテールにまとめていて、赤い紐リボンが長い黒髪と共に揺られている。薄紅のカーディガンとプリーツスカートは、小柄なせいでワンサイズは大きく見える。いかにもよそ行きの服といった感じだが、薄手のトレッキングシューズだけが山越えでもしたのかと思うほど履き込まれている。
 少女は季風鳴、とても気弱で世間知らずだ。

 さ、触られて――どうしよう――!!

 見ればプリーツスカートには、中年ほどの男の手の平が置かれていた。
 慌てたような戸惑うような表情を浮かべて、鳴は必死に俯いている。気の小さな性格をしているから、声を上げたり手で払いのける真似はとてもできない。肩と拳を強張らせ、ただただ怯えたように震えていた。
 ひとたび抵抗しないと思われれば、痴漢は遠慮を失くすものだ。中年男は活発にお尻を撫で回し、興奮に息を荒げてスカートを持ち上げる。ショーツの上から触り始め、鳴はますます身を硬くして震えていた。

 どうすれば……!

 まるで怯えた子犬である。
 お尻を捏ねる指の感触を如実に感じて、目尻に涙を滲ませる。身じろぎによって嫌がる素振りを見せようとするのだが、そんなささやかな抵抗は抵抗だとすら伝わらない。ショーツを介した尻肉の柔らかさは、ひたすらに中年を楽しませ、鳴は力強く目を瞑り続けた。
 そもそも、由緒正しき剣士の家系。
 山奥での修業暮らしで、それまでは俗世を離れていたために、生まれて初めてコンビニを見たのもつい最近だ。電車の痴漢などというものは、あくまでも知識的なものに過ぎず、実際に自分が遭うなど想像すらしていなかった。
 それが一人で電車に乗った途端、発車間もなくこれである。
 五指が沈めば、むにゅりと潰れた尻肉は、指の狭間にハミ出るように盛り上がる。捏ねれば捏ねるだけ変形を披露して、鳴は中年の生温かい手つきに鳥肌を立てている。
 ショーツのゴムに指を引っ掛け、尻の割れ目をなぞって下げた。

 ――ひっ!

 身がすくんだ。肩が弾んだ。
 太ももの付け根あたりまでショーツは下げられ、お尻の肌は外気に晒されてまっている。生肌のお尻が揉まれ、口をあわあわさせた鳴は、もはやパニックにすらなっていた。
 食い込む無骨な指。中年が味わう柔らかな尻肌。
 興奮しきった中年は、ついに電車内でペニスなどを取り出して、それを鳴の太ももの狭間に挟み込む。

 ――やだ! やだぁ!

 必死に首を横に振るが、中年は構わずにことを進める。鳴の背中に自身の身体を密着させ、服越しの胸まで揉み始めて、素股に挟んだ棒を振る。性知識のない鳴からすれば、いきなりペニスまで擦り付けてくるなんで、一体何が何やらわからない。
 どちらにせよ、鳴は痴漢の獲物に過ぎなかった。
 ここにきても抵抗らしい抵抗は何もできず、左右の五指に乳房は揉まれるままである。太ももに意識をやれば、股に密着してくる肉竿の熱さが如実にわかり、あまつさえそれはピクピクと脈打っている。
「や、やめて……ください…………」
 やっとのことで搾り出される声は、非常に弱々しく力のないものだ。
「やめて欲しいかい?」
 嫌に優しい、さも父親が可愛い娘を愛でるかのような声だ。それでいて胸を揉んでいる手が止まるわけでも、ましてや肉棒の前後運動が終わるわけでもなかった。
「……はい」
 鳴は素直に頷く。
「少しだけね。オジサンの言うことを聞いてくれたら、すぐに済ませてあげるからねぇ?」
「ど、どうすれば……」
「僕のおチンチンをね。その脚でぎゅーっと締め付けてごらん?」
「こここ、こうですか?」
 ガチガチに震えながら、鳴は太ももに力を込め、中年のペニスを股で圧する。より窮屈な肉の狭間に潰れた肉棒は、歓喜せんばかりに脈動して、中年はせっせと腰を振る。それは閉じ合わさった割れ目とも擦れ合い、鳴は一層のこと涙ぐむ。
「あぁー気持ちいい」
 胸を揉む手を片方だけ下へやり、中年は鳴の秘所を触り始める。薄っすらと生え揃う三角形の恥毛帯を指で掻き分け、初々しい縦筋をなぞり込む。
「やッ……!」
「大丈夫。我慢すればすぐだから」
 勝手なことを言いながら、中年は鳴の肉体を楽しんだ。その左手は服の下に潜り込み、下着越しの乳房を揉んで、右手はクリトリスを愛撫する。終わる、すぐに済むという言葉を信じて引き締められた太ももでは、太い肉棒が出入りする。
 祈るように待つばかりであった。
 そして、射精。
「ひッ……!」
 それはスカートの内側へと、ショーツのクロッチへと染み込む。精液など知らない鳴は、ペニスからの体液を出された事実と、それがオシッコというわけでなく別の何かだということに戸惑いながら、深いショックに心を抉られていた。
 背後でペニスをしまう中年は、鳴のショーツを再度持ち上げ履き直させる。

 気持ち悪いよぉ……。

 熱いぬかるみがすっかり染みて、汚液で濡れたショーツである。その嫌な感触が肌に接着した鳴は、駅への到着でドアが開くと同時に駆け出した。
 逃げるように必死に駆けた。
 鳴の中で、これ以来から電車という乗り物はトラウマだ。




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