試合後のなつき 小川との時間


目次に戻る



  *原作七巻 プロレスの話 より


     ***



 初めはなりゆきのようなものだった。
 プロレス研究会の前の廊下を通りかかり、その際にタイガー小川から、一緒にタッグトーナメントに出場して欲しいと頼まれ、面白そうだったので出てみたのだ。
 その一回戦目は、なつきの一人試合で勝ったようなものだったが、それでも小川には少なからず好感を抱いた。
 元々は人と接するのが苦手な登校拒否児で、けれどテレビでタイガー仮面のプロレスを見て憧れを抱いてからは、少しずつ積極的になってきた。そんなことを口にした小川から、色んなプロレスの技を教えて貰い、なかなかの頑張り屋さんだと思っていた。
 それに高岡リナのペアと当たると、一回戦目のことを考えれば意外なほど活躍した。
 そして、あの再戦の要求では小川に男の部分を見た。
 体は小さいが、格好いいところがあるじゃないかと。

 それから――

 試合終了後、更衣室。
 着替えの部屋は各ペアごとに用意されるため、男女でペアを組んだ二人の場合、室内に仕切りを立てて、なつきはその中で着替えていた。
 その更衣室に戻ってすぐだった。
 リングであらゆる技を受け、スタミナと筋力も消費していた貴澄夏生は、急に足元がグラついた。腕で小川を巻き込んで、半ば押し倒すように倒れ込んでしまった時である。
「ごめーん。もう力が入らなくって……」
「大丈夫ですか?」
 心配する小川の声を聞き、微妙に間を置いて気がついた。
 ――硬い。
 仰向けで膝を立てた小川の上へと、その股の部分に腹を乗せる形となったなつきは、この接触のせいか、距離感のせいか、勃起してくるものの硬さを如実に感じた。
 カァァァァッと、なつきは赤く染まっていた。
 小川も小川で、すぐ近くになつきの顔がある事実にドキっと、緊張しきったように表情を変えていた。
 今のなつきは露出度が高い。
 プロレス用に用意してきたスポーツブラジャーと、V字にクイっと食い込むようなスポーツ用パンツ姿は十分に色気がある。尻の割れ目も浮き出ており、そんな肌色の多い女子と接触して、勃たないわけがなかった。
 それに、なつきもだ。
 スポーツをやる女性は性欲が強いという話がある。
 それは日頃の運動量が多いほど、普通の人よりテストステロンの分泌量が増えるから、つまり性的興奮を作り出す男性ホルモンが増えるからとも言われている。
 勝利の達成感に満ち溢れ、どこか興奮しているなつきにとって、肉棒との接触は非情に刺激が強かった。
 腹部に意識をやればやるほど、肉棒の形状が脳裏に浮かぶ。
(あれ? なに考えてるんだろう。私ってば)
 自分はそれで一体なにを想像してしまったか。
 急にいやらしい考えが浮かんできて、自分で自分が恥ずかしい。
「あっ……あの、勝てたのは貴澄さんのおかげで……」
 小川も意識しているのか。
 いかにも態度がたどたどしい。
「だからぁ、勝てたのは君の実力。もっといばっていいんだよ?」
 自分のいやらしい気持ちを誤魔化したいように、なつきは小川の試合ぶりを思い出す。
 いざ思い出せば、最後の最後でオイルを口に含んだ選手に気づき、口から火を吹く行為を許すよりも素早くキックを決めた。あの勇姿が頭に浮かび、それをやった男の一物が、まさに自分の肌に接触していることに思い至って、逆に何だか疼いてきた。
(な、なんだろう? この気持ちって、たぶん恋とかじゃないとは思うけど……)
 どうしても意識して、早く離れればいいのになつきは、傍目には自分から小川を押し倒して見える形のまま動かなかった。
 それどころか、無意識のうちに小川の胸板に触っている自分に気づき、ハッとしてなつきは手を引っ込めた。
「あ、あの貴澄さん!」
「はい?」
「ボ……ボク……あなたの事が…………」
(えっ、私のことが?)
 どこか鈍いなつきには、それだけではわからない。
 しかし、最後まではっきり言えば話は別だ。

「好きです!」

 その瞬間、何かに射抜かれたような気持ちがした。
 それと同時に柳澤先輩の顔が浮かんで、自分の小川に対する気持ちはどういうものか。なつき自身にもわからなくなった。
「えっ、あの私が?」
「はい?」
「す、好きって言った?」
「好きです!」
 熱い眼差し、真剣な表情。
 本気だ。本気で好きになってくれている。
 素直に嬉しい。
 だけどわからない。なつきは彼が好きなのか。心は揺れても、柳澤先輩の顔が脳裏にチラつく具合が強く、これでは今すぐには答えが出ない。
 今すぐに?
 そこでなつきは気づいた。

 ――ボク、来週転校するんです。
 ――それまでに、みんなの記憶にボクの事を残せたらいいなあって……。
 ――タイガー仮面のように。

 小川は、そう言っていた。
 果たして、迷っているあいだに答えを出して、きちんと返事を決めてやることができるのだろうか。
 一週間か数日あれば、さすがに答えは出るかもしれない――出ないかもしれない。
 出なかったら、どうする?
 オーケーはおろか、断ることすらできないまま、なつきの返事を聞くことなく転校することになるなんて、せっかく勇気を出した小川に悪い。
 いや、それだけではない。
 迷いはあっても、それでも今の心昂ぶったなつきには、男としての気持ちをぶつけてくる小川の言葉は効いていた。
 なつき自身、自分でもわからない興奮に見舞われて、普段なら決して沸かないはずの考えに傾いていた。
 そうなると、なつきの出方は特別なものとなっていた。
「……ねえ、転校する前にさ。思い出、持ってく?」
 なつきは自然と、小川の頬に手を触れていた。
「……え?」
「あのね。今すぐには決められそうになくて、だけど返事を考えているあいだに小川君がいなくなったら……」
「あ、あのっ、つまり……」
「向こうのテーブルでいいかな」
 なつきはようやく立ち上がり、テーブルの上に仰向けで横たわる。
「ほ、ほ、ほ、本当に……あの……」
「……うん。優しくしてね」

     **

 小川は動揺していた。
(だ、大丈夫なのか!? これでもし、貴澄さんが嫌がったら……)
 人と話すのが苦手で、不登校だった過去もある小川だ。目の前に横たわる女がいても、恐れ多くて手が出ない。自分ごときが触れた途端、嫌がったり不快な思いはさせないかと、つい考えてしまっていた。
(ええい! じれったい!)
 そんな自分の弱さを振り切って、それで優勝したはずだ。
 まず高岡リナの言葉が聞いた。
 目の前でなつきが倒されて、そのあとだ。

 ――てめぇなつきのパートナーのくせに、なんで助けなかったんだ!?
 ――フォローに入ればこうまでやられはしなかった!
 ――お前がなつきを半殺しにしたも同じだ!

 そのとき、なつきの優しさを思い出した。

 ――キミは決して弱虫じゃないよ。
 ――諦めないで、勇気を出して。

 そして、再戦の要求を行った。
 なつきの言葉がなかったら、高岡に責められたまま下を向き、意地を見せようなどとは思わずに、あのまま負けで終わっていた。あの優しさがあって、そのなつきを助けなかったことの責任を感じたから、マスクもないのにリングに立てた。
 そもそも、なつきが偶然にも廊下を通りかかっていなければ、自分はタッグトーナメントに出場していただろうか。
 ありとあらゆるきっかけが、なつきにある。
(ゆ、勇気を出したんじゃないか!)
 小川は緊張を押さえ込み、震えながらテーブルに乗り上げて、仰向けとのなつきに覆い被さり手を伸ばす。
(……自分のカラを破ったんだ! だから……だからやるぞ!)
 恐怖はあった。
 やっぱり、自分の指がなつきの肌に触れると同時に、一瞬にして不快な思いをさせ、全てが台無しになるのではないかという予感がした。ありもしない爆弾を恐れるように、自分の手で爆発のきっかけを作りはしないかと恐ろしかった。

 もみっ、

 それでも、小川はなつきの乳房を揉んだ。
「あうぅつ〜〜〜〜〜っ!」
 途端になつきは、ビクンと肩を弾ませた。顔を赤く染め上げて、何を言ったのかもわからない異音を漏らし、胸を揉まれたことに対する動揺であるような、恥じらいであるような、表情筋が震えて強張る顔となっていた。
 小川は思わず手を放す。
「す、すみません! 大丈夫ですか!?」
 咄嗟に尋ねた。

 コク、コク、

 言葉はなく、見たこともないほど真っ赤な顔のまま、なつきは硬くうなずいた。
「あのっ、やめておきますか?」
 すると、今度は首を振る。
「……で、では揉みますからね。貴澄さん」
 ――コクッ、
 と、喋る余裕がない勢いで、緊張と動揺を帯びたなつきの乳房へと、小川はもう一度手を伸ばして、恐る恐ると手の平に包み込む。
 もっちりとしていた。
 遠慮がちに押し込めた指が、脱力と同時にあっさりと押し返され、揉めば揉むほど元の形状に戻ろうとする張りの良さがよくわかる。やがて不安や恐れより、興奮の方がよほどまさって鼻息が荒くなり、小川は乳揉みに熱中していく。
「……ねえ、どう?」
「は、はい! 貴澄さんの胸っ、とても素晴らしい揉み心地です!」
「そう? そんなに褒められちゃうとケッコー……」
 まだ白かった耳までも、頬の朱色が濃くなるにつれて染まっていった。
「貴澄さんこそ、ボクが力を入れすぎたりは」
「ヘーキ。君は優しいから」
 なつきは受け入れてくれている。
 それが小川の不安も緊張も和らげ、異性の胸を揉むということに少しは慣れ始める。布地越しの曲面を撫でるようにして、フェザータッチですりすりと、指腹でまんべんなく可愛がる。下乳をなぞり、横乳をそーっとこすり、露出した谷間の部分にまで指を這わせた。
 スポーツブラジャーの締め付けで、中央に寄せ上げられた乳房が合わさって、谷間に出来上がる乳と乳の合わせ目に、その直線に人差し指を入れてみていた。
 性感帯に刺激が溜まってきてのことだろう。
 乳首が、突起していた。
 硬い尖りが、布地を内側から押し上げて、このスポーツブラジャーを介しても、乳首の形状が浮きかけになっている。
 好奇心が膨れ上がった。
 そこに触れば、一体何が起きるのだろう。どんな感触がするのだろう。
 それがもし爆弾のスイッチだったとしても、押してみないではいられないと例えられるほどの強い好奇心にかられ、小川は乳首に触れにかかっていた。
 両方の乳首を指で摘んだ。
「――にゃんっ」
 異常に可愛い喘ぎ声で、なつきは髪を振り乱した。
(き、貴澄先輩が! こんな反応をするなんて!)
 信じられないものを見た気持ちで、より一層の好奇心にかられた小川は、なつきの声や反応をもっともっと確かめるため、自分の指を楽しませるため、集中的に乳首を弄った。
 爪で優しく引っ掻くように、カリカリと何かをほじり出す仕草のように、両手の人差し指で左右の乳首を同時に責める。
「あっ、にあぁぁ……あぁぁ……」
 指に挟んで強弱をつける。少し引っ張る。押してみる。色んな責め方を試していき、そのたびに悩ましそうな色気ある表情を浮かべ、首でよがっている姿に興奮した。
 もうたまらない。
 スポーツブラジャーのゴムに指を入れ、夢中で持ち上げ脱がしにかかる。なつきは少し驚く顔をして、恥らう素振りで一瞬だけ慌てるが、すぐに観念したようにまぶたを飛ばし、静かなバンザイをして大人しく脱がされた。
 瑞々しい乳房が、小川の視線を釘付けにした。
 綺麗な球体ともいえる整った美乳は、ふっくらと上向きに張り出して、その乳山の頂点には硬い乳首を咲かせている。
 とてつもなく高価な宝を拝んでいるような気になり、それを自由に触れる小川は、ほとんど理性が薄れていた。
「……貴澄さぁん!」
 食いつくように揉みしだいた。
「あっ! 小川く――んっ……!」
 今度は生肌に指を押し込み、餓えた猛獣が少しでも腹を満たしたい勢いの手つきで、驚くほど柔らかい細やかな指使いでマッサージを施している。
「貴澄さん! 貴澄さん!」
「ちょっと……! お、小川君! 痛いって」
 なつきの言葉にハっと手を止め、我に返った小川はたった今の自分を恥じる。欲望と本能のままに相手を傷つけては駄目ではないか。
「ご、ごめんなさい!」
 思わず手を離す小川だが、なつきは言う。
「大丈夫よ! その――さっきみたいに優しければ、ちょっとだけ――」
 その先の言葉は小声がすぎて、危うく聞き逃すところであったが、小川は耳に神経を集中させて聞き取っていた。

 ――気持ちよかった。

 自分の手が、なつきを感じさせた。それをなつき自身が認めた。
「ありがとうございます。貴澄さん。それでは気を取り直して」
 自信のついた小川は、今一度なつきの乳房に両手を置いた。
 そう、優しく。
 乱暴に指を押し込んで、痛い思いをさせてはいけない。
 皮膚のほんの表面あたりで、産毛を撫でているかいないかといった微妙な手つきで指という指を這い巡らせる。暴走しそうな自分は抑え、なつきの様子をよく確かめながら、じっくりと時間をかけて愛撫する。
 乳輪をぐるりとなぞり、乳首をつまむ。クリクリと優しくねじり、軽く引っ張り、指で押し込む。また乳輪をなぞり続けて、つまんではねじり、丁寧な責めに徹していた。
「はむっ」
 やがて乳首に吸い付いた。
「あぁ…………!」
 赤ん坊になりきってチュパチュパと、吸い上げるように乳首を持ち上げ、すぐに唇を離す小川は、乳房の形状がプルンと元に戻るところを眺め、また吸い付いては持ち上げる。吸い付いては持ち上げて、もう片方の乳首にも同じことを繰り返した。

 ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、
 ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ、

 乳首が左右とも、唾液濡れの光沢を帯びていく。
 さらに執拗に舐め込んで、また乳先を唇の中に捉えると、口内で舌先を奮って乳輪や乳頭をなぞり抜く。
「……んんぅ……おがわ……くっ……っあん!」
「下も脱がしますよ。貴澄さん」
 スポーツ用のパンツに手をかけ、引っ張り上げる。なつきは抵抗なく脚を束ねて、抵抗なく脱がされるまま全裸となった。
 小川の手は秘所へと移り、割れ目をなぞる。
「んっ! んぁぁ……!」
 愛液のぬかるみが、小川の指腹にまとわりつく。
 活性油を挟んで滑りのよくなる愛撫は、みるみるうちに活発にアソコを嬲り、クリトリスを突起させていく。ぷっくりと膨らむ肉芽を指に捉え、なつきの顔色を見るにそこが弱いと察した小川は、割れ目からクリトリスにかけてを指責めした。
「はぁっ、あっ、あくぅぅぅ……! むっ、ふぅっ、おっふぁぁ……!」
 ビクビクと、時折電流でも加えているように、太ももの筋肉や足首が強張り、なつきは下半身全体でよがっている。
(貴澄さんがボクの指で!)
 肉芽をつまむと、電流が弾けたように両足がピクっと揺れる。指の腹で撫でていると、狂おしいような表情で顔を左右に振りたくる。
 この手でなつきを支配してしまっている気がして、充足感が胸の底まで広がった。
(よ、よし! このまま最後まで……)
 小川もズボンを脱いだ。
 ずっと、破裂せんばかりに勃起していた肉棒は、一刻も早くなつきの膣内に入りたくて疼いている。ムラムラとした淫気を帯びて、秘所の割れ目に先端をぶつけると、いよいよなつきも表情を変えた。
「……挿れるんだね」
「はい。最後までさせて頂きます」
「わかった。いいよ」
 なつきはゆっくり、目を閉じる。
「いきます」
 そして、小川は腰を押し込んだ。

 ずにゅぅぅぅぅぅぅ――

 未経験の膣穴へと、壁と壁の寄り合う狭間を広げるように進んでいき、根元の奥まで到達するに心が満ち溢れた。
 ――繋がっている。
 この腰を動かすだけで、なつきは自分の肉棒に合わせて反応する。穴の大きさのせいなのか、狭いところに押し込んだ圧迫感が、きつい締め付けとなって絡んでいる。熱い膣内の温度と膣壁のヒクンとした蠢きが感じられ、少し動いただけでも射精してしまう予感にかられた。
 背筋を伸ばして見下ろせば、脚の左右に開けた結合部から、引き締まった腰のくびれに丸い乳房と、悩ましそうな赤い顔の全てが見える。
 何か大きなものを手に入れた気持ちでならず、嬉しくて嬉しくてたまらない。
(本当によかった! 自分のカラを破って本当に!)
 しかし、腰を動かすことには躊躇った。
 すぐに出そうだからだ。
 もう既に射精感がせりあがり、油断すれば弾けてしまいそうになっている。下腹部に力を入れて必死に堪えていなければ、とっくに白濁を吐き出しているのかもしれない。
(いや、もう……出るかも……)
 そう思って、膣内射精にならいように腰を引くが、肉棒を抜こうとするだけでも、ねっとりと愛液を含んだ膣壁との摩擦は刺激が強い。生まれて初めて性交に及ぶ、ついさっきまでは童貞だった小川には、この快感には耐えられなかった。
(――出る!)
 こうなったら、即座に腰を引いて抜き取った。
 間一髪。
 危うく膣内に出さずに済んで、代わりになつきの肢体が白濁に汚れていた。腹から胸の部分にかけて、熱くて白い液体が、ところどころに付着していた。
 少し、放心。
 それから、すぐに人の体に体液をかけてしまったことの罪悪感にかられた。
「ごめんなさい! 貴澄さん!」
「えっ、大丈夫だけど、これがなんといいますか。男の人から出る……」
「……はい。精液になります」
「そっか。これって、一回出たら終わり?」
 それは素朴な疑問について尋ねる顔だった。
「あ、あのですね。体力というか、出すものさえ残っていれば二回目以降も……」
「ってことは、もう一回?」
「へ?」
 小川はきょとんとした。
「だって、こーゆーことって、はじめてなんだもん。わからなくって」
「だけど貴澄さんの体力のこともありますし……」
「ヘーキだよ。私なら」
 ごくん、と息を呑んだ。
 なんとなく、特にそんな決まりもなかったのに、一回出せばこの時間は終わるものだと、何となくとしか言えない理由で思っていた。あれで終わってしまったのだと、てっきり思い込んだ小川には、この流れはありがたいことこの上ない。
「も、もう一度お願いします!」
「うん。いいよ」
 そうなれば、なつきの胸やアソコを触っていれば、すぐにでも勃起は取り返せる。両手でそれぞれ、上下の恥部を愛撫して、ムクムクと硬く育ったとき、小川はもう一度亀頭を押し込み挿入した。
「っふあ……あぁ……!」
 根元まではめ込むと、なつきの口から熱い吐息が漏れ出した。
「動きますよ。貴澄さん」
 今度こそ、小川はピストン運動を行った。
 慎重に慎重に、様子を見ながら引き抜いて、もう少しで亀頭が外に出るまで腰を下げると、緩やかに貫くように優しく押し込む。
「あ! あぁ……! あん! んん!」
 自分の動きで痛がらせないかと気にかけていたが、なつきの喘ぐ様子を見るに、慣れていくごとに少しずつペースを速め、小川は初めての体験を噛み締めた。
 結合部に目をやれば、自分自身の肉棒がなつきの穴に出入りしている。
 抜け出る竿部は、膣口の中で塗られた愛液を帯びて、ヌラヌラとした濡れの光沢をまんべんなく纏っている。
 ゆさり、ゆさりと、腰をゆったり揺らしていると、水音が鳴っていることにも気がついた。

 じゅっぷ、ずぷっ、ぬぷ、つぷ、にゅぷ、じゅぷん――。

 摩擦が粘液を捏ねているためなのか。愛液の泡だったものがいくらか結合部に付着する。
 ザラつきのある肉壷は、竿にも亀頭にも言い知れない刺激を与え、引き抜くたびにカリ首が段差に引っかかるとでもいうべき快感に見舞われる。
「動いてるよぉ……小川君のがぁ……!」
 なつきの顔立ちが熱に浮かされていく。
「ボクも気持ちいいですッ」
 神経が燃焼して、内側が爛れているかのような快感が、ペニスを通じて足の裏にまで伝わってくる。

 じゅぽ、ずぽ、ぬじゅっ、ぶじゅっ、じゅず、ぶず――。

 いつしか、リズムは一定だった。
 生産工場にある工業機器が、同じ動きを延々と正確に繰り返しているように、小川のピストン運動にも定められた軸が守られていた。
 一見すると小柄な小川も、プロレスのために鍛えた肉体の持ち主だ。腰振りに使う筋肉も、肉体を酷使するだけの体力も、普通の人間と比べて優れている。
「んあっ、はふっふぁ、んっんっくぅっ、ふぁああ……あっあっあぁ……!」
 なつきの乱れた姿を見ているうち、もっと乱してやれないかと小川は思った。
 もっともっと、この腰使いによって喘ぎ声を奏でるため、小川は速度を変更した。
「――あぁぁ! あっ、はげし――んっ、んっんっあっ、ひぁあああ!」
「貴澄さぁん! ああっ、貴澄さん!」
 もうお互い、快楽にとり憑かれていた。
 膣壁と肉棒が結合部で溶解して、溶けた部分から癒着し合って、一体化してしまっているのではないかと錯覚するほど、快楽電流に満ちていき、小川は夢中でなつきを求めた。
「――ひっ、おあっ、あっ、小川――くぅん!」
 腰の動きに合わせて肉棒が収縮する。まるで精液を搾り取ろうとしているように、肉茎をこれまで異常に激しく締め上げ、分泌される愛液量も増えていく。
 どんどん滑りが良くなって、小川はますます速度を上げた。
「ぼ、ボク! もうイキます!」
 そして、射精の予感に満ちていた。
「出して! 小川君!」
 最後にはほとんど頭が真っ白だった。
 気がついたら射精していて、もう一度精液を浴びたなつきの身体は、さらにいたるところに白濁をへばりつけていた。
 だが、そこにあるのは自分の手で快楽を与え、この肉棒によって息を乱したなつきの姿だ。そう思うと達成感に満ち溢れ、何か偉大なことを成し遂げた気分になっていた。
(……したんだ。貴澄さんと)
 大きく肩で息をして、小川は余韻に浸っていた。
「……しちゃったね」
「はい」
「小川君のこと、忘れないよ」
 そんなことを言われるとドキリとする。
「ボクはもっと強くなります! 転校してもプロレスは続けます!」
「そうだね。そうしたら、私……」
 なつきはおもむろに視線を動かし、ベンチにある自分の荷物に目を向ける。その視線の先を追うと、そこにある胴着の帯に小川は気づいた。
「あれ? あの胴着、名前が……」
 胴着の帯にある名前が、柳澤雅昭だ。
「ああ、あれ? 前の主将の柳澤先輩からもらったの」
 ……知っている。
 その人が、どれだけ強い空手部の主将であったか。伝え聞いているし、見たこともある。
 そうか。あの人がライバルか。
 今こうして交わったばかりのはずなのに、なつきの心には別の男がいたかと思うと、さすがにがっくりきてしまう。
 だからなつきは、答えが出せないと言ったのだ。
 いや、待てよ。まだチャンスはある。だってここまでしたではないか。
 いつかきっと、柳澤先輩をも越え、なつきのことを……。


 この思い出と、強くなろうとする志しを胸に抱えて、それから小川は転校日を迎えていった。





目次に戻る

inserted by FC2 system