きららの羞恥ショー


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 展示会モデル。
 ファッションショーと同じく、ファッションを見せるための場所ではあるが、モデルは歩くことなく同じ場所でポーズを取る。場合によっては、マネキンのようにじっとしていることもあるという。

「下着モデル?」
「うーん。まあ、やってみるか」

 それはマネージャーから話を持ちかけられた際である。
 下着で肌を晒すのは、中学生には恥ずかしすぎる話だが、モデルとして人前に立つ度胸を備えた天ノ川きららは、必要以上に躊躇うことなく、仕事を引き受けていた。

「水着だと思えばダイジョーブ、ダイジョーブ」

 と、さほど深刻には考えなかった。
 実際、きららは仕事をこなした。

「ポーズ決めてみようか。きららちゃん」
「はいはーい」
「もっと色気出して! そうそう! そんな感じ!」

 熱い眼差しでシャッターを切り落とすカメラマンの前で、モデルを囲むお客様やスタッフ達の立つ前で、ジュニア用の下着を見につけたきららは、複数のポーズ写真を撮らせる。恥ずかしいと思う気持ちはあるが、下着を着こなすファッションショーも存在する。
 もしも夢が叶って星空のように大きな舞台に立つときが来れば、将来そういう仕事もやるかもしれないのだから、今のうちに経験しておくことも悪くない。
 だから、きららは様々な下着を着こなした。
 来月発売らしい、花柄のピンク色。
 大人っぽさを意識した黒の豹柄。
 アロハチックなカラーリングで彩りの楽しいタイプ。
 その都度控え室を行き来しながら、用意されている衣装を順番に着こなして、あらゆる下着姿で人前に立っていた。
 そうした時である。
「これ、制服? セーラー服じゃん」
 次の衣装を見て首を傾げた。
「ちょっと、どういうことですか? マネージャーさん。下着モデルって話なのに」
「ああ、それね。ちょっとした趣向だよ。次はその制服の下に下着を着てね」
「どういうこと?」
「ちなみに、次はショーツだけでいいそうだから」
「なにそれ。よくわかんないなぁ」
 とにかく、着替える。
 カメラの前へ進んでいく。

「はい。じゃあ、スカート持ち上げようか」

 そして、そんなポーズの指示。
「――へ?」
 ただ下着のまま出ていくより、着衣の上からスカートをたくし上げてやる方が、よほどエッチなサービスのように思えて、さしものきららも顔が引き攣った。
「ずーっと下着姿やってたでしょ? 大丈夫大丈夫」
「あ、あははっ。そうだよね」
 引き攣りながら、スカートを持ち上げる。

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 フラワーで飾られた可愛らしいデザインにシャッター音が集中して、集まっていたお客様も当然ながらジロジロ見て、きららは急になんだか、モデルとは違うもっと別の仕事をさせられている気分になった。
 考えてみれば、モデルを鑑賞するために集まっているお客様は、男、男、男――。
 二十代前半の若い男が、手首に高そうな腕時計を輝かせる。リッチそうな四十代過ぎがふくよかな微笑みを浮かべている。それぞれの年代の男が、きららの下着を見るために、一様に視線を寄せているのだ。
(なんだろう。この変な感じ……)
 戸惑いながら、控え室の行き来で次のショーツに履き変える。
 今度は紐で結ぶタイプのものだった。
 腰の両側をリボン結びにする仕組みになっていて、布面積はかなり狭い。アソコが隠れこそするものの、少しだけハミ出しそうで心もとない。お尻の面に関しては、Tバックには程遠い程度の露出度とはいえ、やはり普通と比べてお尻のハミ出る量の多い作りだ。
 いやらしい下着だ。
 そんな下着を見せるためにスカートをたくし上げる。しかも、挑発的な表情で視線を寄越せというのだから、これでは男を誘う小悪魔だ――そういうのも悪くはないが、こうも卑猥なものを着てみせた経験はなかったので、きららには恥ずかしかった。
「じゃあ、悪戯っぽくお尻を向けて?」
「こうかな?」
 背中向きでスカートを指に摘んで、肩越しに振り向くポーズで、やはり挑発的な視線をカメラに向ける。普通よりも尻の露出している、Tバックでないだけマシな下着でお尻を強調したポーズを取るのは、内心ではとてもとても恥ずかしい。

 パシャリ! パシャリ!

 シャッター音だけではない。
「色っぽいねえ」
「とても中学生とは思えない」
「いやはや、来てよかった」
 そんな風に男達が喜んでいる。
(今日の仕事って、ある意味かなりハードかも)
 オシャレを披露するはずの場で、むしろ体の方を披露するのは、きららにとって何とも気になって落ち着かない。
「次から、また下着姿に戻ろうか」
「はーい」

 ――なんだったんだろう。セーラー服って。

 制服を脱ぎ、次に用意された下着を見た時、きららはぎょっとした。
「――って、次はこれええ!?」
 それはTバックだった。
 レースがやけに派手な以外、ブラとクロッチは普通だが、お尻の部分だけが紐状で、尻たぶの露出が前提となったデザインにされている。
「こ、これ履くの?」
 どうしよう?
 今更、仕事を下りるとも言えない。
 この仕事を取ってくるために、マネージャーやら、プロデューサーやら、色々な人達が尽力しているわけで、自分一人のわがままで仕事を蹴るのがどういうことか、中学生ながらもきららはよく理解していた。
 だから、はっきりとものが言える性格のきららではあるが、今から嫌だとは言い出せない。
 プロ意識がそれを許さない。
「やるしかない! これも試練! 超えたらその先がある!」
 と、気合いを入れる言葉で自分自身の背中を押し、きららはTバックの下着で人々の前へと姿を見せる。

「おおおお!」
「さすが、きららちゃんはお尻も可愛いねぇ?」

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 お尻に対する一斉のコメント。
 連射されるシャッター音。
 腰をくの字に折ったポーズを頼まれたきららは、肩越しの振り向きで微笑んでみせながら、下着というより、お尻への注目を集めている。
 ファッションモデルでありながら、肌に注目を集めている。
 お尻にはまさに紐しかかかっておらず、割れ目だけが唯一隠れている感触が、きらら自身の肌でよくわかる。
「M字開脚いってみようか!」
「う、嘘!? ちょっとだけですよ?」
 驚きながら脚を開いて、アソコの形状のほとんど浮き出た、性器のハミ出ないギリギリのギリギリという布面積だけの股に視線が集まり、カメラレンズが向けられて、きららはどんどん恥ずかしい気持ちになっていく。
(おかしい! 絶対ヘンだよ! これ)
 初めは堂々としていたきららだが、しだいに周囲の目つきに気がついて、どこか性的に見られているとわかって、だんだん恥ずかしくなってきた。
 だが、次の下着が待っている。
 シースルーだ。
 しかも、ブラジャーの部分は紐が三角形の図形を成すだけで、乳房を覆う布が存在しない。つまるところ、乳が丸見えになるような、肌を隠すための衣類として、一切の機能を果たしていないものだった。

「へえ? あんな乳首の色してたのか」
「さすがに恥ずかしくなってきたかな?」
「アソコも毛が見えてるよ?」

 男達は盛り上がる。
 膝立ちで腰の後ろに両手を回し、やや斜め向きになることで、少しばかり股間を強調したポーズを取ったきららは、アソコに対して集中的にシャッターを浴びている。

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 ほとんど肌の透けたアソコの布から、きららの性器はほぼ透けて見えている。割れ目の形状も毛の生え具合も、全てが明確に見て取れるのだ。
 裸と何が違うのか。
 耐え難くなり、赤面しきったきららは、存在しない蒸気がジュワァァと立ち上って見えるほどに顔を熱く沸騰させた。
 唇は歪み、頬は強張り、表情が悲鳴を上げている。
「――ううっ!」
 もう無理だと言わんばかりに、熱さか痛みの我慢ゲームに耐えかね限界でも迎えたかのように、きららは両手でそれぞれ胸とアソコを覆い隠す。
「お? いいねえ、そのポーズ。こっち向いて?」
「……はい」
「いいよ? その顔、女の子らしくて」

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 恥ずかしさに耐えかねる姿さえ、何枚も撮られ続けた。
 何枚も、何枚も……。




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