一衣とるう子のお風呂


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「ねえ、るう子。お泊りしない?」

 植村一衣がそう言ったのは、せっかくできた友達と、もっと友達らしいことをしたいと思ったからだ。
 お出かけしたり、メールで夜更かしをしてみたり。
 色んな楽しいことはしてきたが、もっともっと繋がりたい。るう子という友達と今よりずっと仲良くなりたい。ずっと友達同士でいたい。そんな欲張りな自分がいて、いつしか一衣は今以上の関係を願うようになっていた。
 たぶん、一度は願いがマイナスに働いたせい。
 再びセレクターになった影響でか、ウィクロスパーティーの際にマイナスを乗り越えて、るう子とはもう一度友達になることが出来た。しかし、そのほんの少し前までは、本当なら二度と友達なんて出来ない状態にいてはずで、一衣はそのあいだ、途方もない孤独感に陥りながら過ごしていたのだ。
 マイナスを振り切って、それまでは恐ろしいほどの寂しさの感情に呑まれていた反動で、一衣は少し欲張りになっていた。
 お泊り、したい。
 もっともっと長い時間、一日でいいから過ごしてみたい。
 わがままな自分を一衣自身も自覚する。
「お泊りかぁ……」
「……駄目、かな?」
「ううん。ちょっとおばあちゃんに聞いてみるね」
「わかった。じゃあ、またね」
「うん! また明日!」
 その日はるう子と道を別れて、二人はそれぞれの家へ戻っていく。
 帰り道、その道中。

「OK出るといいね」

 胸元から女の声が聞こえてくる。
 首からネックレスのように吊り下げたルリグカードを手に取って、一衣はそのイラスト面の中にいる遊月と向かい合う。
「うん。出るといいなー」
「絶対大丈夫だって! るう子のばあちゃん優しいからさ」
 遊月は強い。
 自分自身がカードになってしまったのに、今では何も気にしていないかのように、すっかり今の状態に馴染んでいる。
 遊月のそんな打たれ強さと、元気いっぱいの励ましを聞いて、少しばかり遊月に甘えたくなってしまう。
「うん。そうだけど、いきなり誘っちゃったし。ちょっと驚かせちゃったかな……」
 と、一衣は俯く。
 迷惑だったらどうしようという不安が、少しある。
 お泊りは実現するか。
 そんな些細な不安で、一衣の表情は曇っていた。
「だから大丈夫だって! るう子だって誘われて喜んでたよ?」
「本当?」
「ホントホント! だいたい、るう子も一衣も少し遠慮がすぎるんだからさ。たまには、ああやってガツンと誘った方が刺激になるよ」
「……そういうものかな」
「そうそう。一衣だって友達が欲しいのが願いだったんだし、女の子同士ならお泊り会ぐらい普通やってるし、何も罰は当たらないよ」
 力強く、前向きな励まし。
 まるで心の中の曇りに向かって、強い風でも吹かせてくれているかのように、不思議なほどに不安が薄らぎ、なんとなく安心めいた気持ちになる。
「ありがとう。遊月」
「いいってことよ」
 遊月はえへんと、威張るかのように背中を逸らしていた。

     *

 一衣ともっと仲良くなりたい。
 お泊りの誘いを受けた帰り、るう子は一人でステップでも踏んでしまいそうなほどにウキウキして、嬉しい気持ちで家に戻った。
 一衣と一晩過ごしたい。
 ――ねえ、るう子。お泊りしない?
 あの瞬間の一衣の顔には、るう子の方もドキンとした。
 まるで恥じらいある乙女のように、顔を赤らめながら誘われて、さながら愛の告白でもされたぐらいに心臓が弾みあがった。うっかり変な気持ちが沸きそうなほど、あの一瞬の一衣が可愛らしく思えてしまって、るう子は今でもドキドキしていた。
 お泊り、したい。
「ねえ、おばあちゃん」
 帰宅したるう子は、すぐに切り出す。
「今度、友達の家に泊まりたいんだけど……」
 と、言ってみる。
「いいよ? るう。約束はもう決まっているのかい?」
「うん! あのね。次の土曜日とかどうかなって」
「それじゃあ、お菓子をいっぱい持っていかないとね」
「うん! ありがとう! おばあちゃん!」

     *

 そして、土曜日。
「お邪魔しまーす」
 玄関から一衣に迎えられ、るう子が一衣の部屋へ向かって行く。
「よかった。今日は一日一緒だね」
 と、微笑む一衣。
「今晩は一緒に寝ちゃおっか」
「……う、うん! そうしたいな」
 るう子の冗談めいた誘いに、恥じらいながらも一衣はまんざらでもない様子だ。
 少し、羨ましくなった。
 ルリグとなって、今ではカードの内側にいる遊月は、るう子とも一衣とも、友達でこそ有り続けはしているが、決して肌で触れ合うことはできない。カードの中という空間を隔て、イラスト面の壁を境に、そこから現実世界に手を伸ばすことが決してできない。
 二人は手を繋いだり、一緒に写真を撮ったりできるのに……。
 遊月にはできない。
 正直、それだけは寂しいし羨ましい。
 しかし、それ以上にルリグとなって思ったことは、他のセレクター達に同じ運命を辿らせてはいけないという事だ。既になってしまった自分はともかく、一衣やるう子が同じ目に遭うなんてことは想像もしたくない。
 ましてや、自分がルリグになればあの白い部屋に行けるかもという、一度はるう子が考えていた黒幕への接近方法だって、遊月としては絶対に反対だった。
 ルリグでいるのは寂しいが、慣れればどうにかやっていける。
 触れ合えることが羨ましいからこそ、それを主張して二人の仲をぎくしゃくさせてはいけないような気がしている。逆に応援してやるぐらいに大っぴらで、前向きにならなくては、カードの中の空間でなんて生活はしていられない。
 それに――。
 願いがマイナスに働いたことのある一衣。
 自らルリグになることを選びかけていたるう子。
 一度は危うい道を歩んだ二人には、きっちり安心できる仲になって、見ていて安心できるような友達同士であって欲しい。
 そうでなければ、遊月の方がハラハラするし、心配にもなってしまう。
 だから、るう子がお泊りに来れて本当に良かったと思っている。
 自分の感じる寂しさ、羨ましさについて、何も感じないわけではないが、遊月だって二人とは友達に間違いない。
 少なくとも、今はこれでいい。
 笑い合う一衣とるう子の二人の笑顔を、遊月は微笑ましく見つめていた。

     *

「あちゃー。またるう子の勝ちかー」
 プレイマットの上に置かれた遊月は、何度目かわからない一衣の敗北に苦笑い。
「るうだって何度か負けたし……」
「でも、るう子の方がずっと勝ってる」
 あまりにも負けが込んで、一衣は少しばかりムキになる。
「じゃあ、もう一回シよっか」
「うん。次は勝つから!」
 二人はデッキを切り直し、手札を揃えてバトルを行う。
 一衣の手でフィールドに出ることで、この二人のバトルに遊月も混じり、結果的に三人でバトルを楽しんだ。
 セレクター同士のバトルでも、普通の戦いはできる。一衣が遊月を出す変わりに、るう子はイオナを出さない条件で勝負しているので、何のプレッシャーもない、ただの純粋なバトルを楽しむことができるのだった。
「ずっとこんなバトルができればいいのにねー」
 るう子は言う。
「そうだよね。セレクターとしてのバトルだったら、こんな風に楽しくなんてやっていられないっていうか……」
 一衣もそれに同調していた。
 この話になると、少し空気が沈んでしまう。
 るう子はずっとタマのことを気にかけているし、できることならセレクターバトルに関わった全ての少女を救いたいとも思っている。
 そのために必要なのは、黒幕へ近づくこと。
 だが、未だその方法はわからない。
 せいぜい、るう子が自分を犠牲にする道を一切放棄してくれているくらいで、マユに関する謎は何一つわかっていない。
 今は何も情報がないのだ。
「やめやめ! この話は今日は無し!」
 遊月は大声を出して話題を止めた。
 別に今このタイミングでなくとも、こんな話はいつでも出きる。せっかくのお泊りなのだから、もっと普通に楽しく過ごさなくては損ではないか。
 と、遊月は思うのだ。
「あはは……。ごめんね。遊月」
 今度はるう子が苦笑い。
「同じカードばっかりじゃ飽きるもんね。次はトランプとかにしよっか」
 一衣の提案で一対一のババ抜きをすることに。
 トランプを用意して、二人は自分達の手札をそろえた。
 ウィクロスではるう子の方が強かったが、カードが変わったせいか一衣の方が順調に手札を減らして、あっという間に手札は二枚。
「うう……」
 このタイミングでババを引きたくはないるう子は、一衣の握る二枚の手札を相手に、長い時間を迷い続けた。
「どうする? るう子」
 笑顔の一衣。
「こっち!」
 るう子が右側のカードに決め、そちらを引きかけたその時だ。
「いいのかなー? そっちで」
 遊月がからかうように言ってくるので、るう子はカードを取るのを躊躇って、再びどちらか迷い始めてしまう。
「いいもん! こっちで!」
「はい、ざんねーん」
 思い切って引いたるう子を、遊月は大いにからかった。
「あー! うそー……」
「はい。次は私の番ね」
 ここで一衣がババを取れば、勝負はまた同じ状況に戻ってしまうが……。
「あーん。負けたー」
 るう子はがっくりと肩を落としていた。
 ババ抜きは、一衣の勝ちだった。

     *

 そうして、二人は遊んで過ごして……。
「ねえ、お二人ともさー」
 夜を周って、夕食も済んで、時間のことを思った遊月は二人に対してこんな提案を持ちかけるのだ。

「一緒に風呂でも入ってくれば?」

「――ふぇえ?」
「……るう子と一緒に?」
 二人は同時に顔を赤らめ、気まずいような恥らうような、微妙な空気をたちまち醸し出すのだった。
「別に友達同士なら普通だって。男同士だって温泉とか行くだろ? 女の子のお泊りもさ、だいたい一緒に風呂とか入るんだよ」
 遊月は案外適当に言っているのだが、二人はそれを見抜けない。
 元々、友達が欲しいと願いを抱くほど、これといった相手のいなかった一衣と、本人は気にしていなかったが人間関係の希薄だったるう子である。お泊り会がどういうものか。何が普通で何が行き過ぎか。二人揃ってそのラインを知らないので、遊月の言葉を二人は完全に鵜呑みにしてしまう。
「ふ、普通なんだ……」
「じゃあ、るう子。入ってみる?」
「……どうしよう。入る?」
 二人は目と目で見つめ合い、モジモジしながら迷った挙句――。

 ――入ってみよっか。

 二人は心を決めるのだった。

     *

 ――ちゃぽん。

 るう子と一衣は湯船に浸かる。
 ちょうど良いお湯の温度に肩まで使って、全身をくつろぎで満たしながらも――。
「なんか変な感じだね」
「うん」
 るう子も、一衣も、肩の触れ合いそうで触れ合わない、微妙な距離感を保って体育座りで背中を丸めていた。
 体育やプールの授業で着替える時は、肌を見せずに着替えるテクニックを使うので、おおっぴらに体を見せ合う機会はない。
 つまり、人前で丸裸なんて初めてだ。
 恥ずかしいような、気まずいような、おかしな気持ちにるう子はなり、一衣も赤面したまま湯面に向かって俯いている。
 しかし――。

 チラッ、

 一衣の視線が向いてきて、るう子は全身で緊張した。
 お互い、体が気になるのだ。
 るう子もやはり、一衣の体の方に目がいって、例えばどんな胸をしているのかなんて、ついつい確かめたくなってしまう。
 興味があるのだろうか。
 一衣の体に。
 大きくはなく、かといって膨らみがないでもない。膨らみかけとしかいえない、るう子と同じくらいであろう胸が、体育座りの膝に隠れている。湯面を通して、その潰れた横乳がるう子の視線を引いていた。
 一衣の視線もるう子の同じような横乳に、体育座りの膝と身体の狭間にチラチラと向いていた。
「るうね。今、少しおかしいかも……」
 そんなことを、ぼっそりと言ってみた。
 すると――。
「私も、ヘンかも」
 一衣は再び、るう子の胸にチラリと視線を寄せかけて、真っ赤になって逸らすのだった。
 お互い気になってしまうらしい。
 だからというわけではないが、るう子はふと思いつく。
「ねえ、一衣。洗いっこしない?」
「背中流すの?」
「うん。背中とか。あと、前も……」
「前も? どうしよう」
 一衣は迷う素振りを見せながら、悩み初めて……。

「うん。いいよ?」

 恥ずかしそうに、一衣は頷いてみせるのだった。


     *


 手の平に泡を乗せ、一衣はるう子の背中に触ってみる。
「うひっ」
 るう子はビクッと肩を弾ませて、ピンと背筋を真っ直ぐ伸ばした。
「大丈夫? くすぐったい?」
「ううん? 平気」
 一衣はその肩から背中にかけて、腰にかけてまで泡を塗りたくり、くびれたカーブを両手で掴んで左右でさする。ふんわりとした肌の柔らかい触り心地と、石鹸で滑りのよくなった感触が混じり合い、手の平へ返ってくる気持ちの良さが一衣の手つきを活発にした。
「脇まで綺麗にしてあげる」
 一衣は悪戯に微笑んで、その手を脇下へスライドさせる。
 脇の内側を指先で虐めると、るう子は既に伸ばしていた背筋をより硬くして、腰をくねらせるようにして抵抗する。
「ひゃあ! 一衣、くすぐったいよぉ!」
「駄目だよ。ちゃんと洗わなくちゃ」
「そうだけど、くすぐったい……!」
 るう子の抵抗がやや強まる。
「動いちゃダメっ」
 もがくるう子を捉えるように、一衣はその体をるう子の背中へ押し付けて、ぎゅっと抱き締めるようにして押さえ込んだ。
「ひ、一衣……」
「洗いっこって言ったの、るう子だよ? ちゃんと洗わせて」
「うん。動かないから、くすぐらないで」
 るう子は懇願してくる。
「じゃあ、前も洗うよ?」
「前……?」
「前もって言ったのるう子だから、このまま洗うね?」
「……うん」
 るう子は恥ずかしそうな顔をしながら、大人しく一衣の手つきを受け入れる。
 一衣は背中へ胸を押し付けて、るう子の白いお腹を触り、円を描くようにして撫で回す。腹一面に泡を塗ると、今度は下へ手をスライドして、太ももの上を揉み始めた。
「一衣……」
 もがくでもなく、何を言うでもなく、るう子は静かに口を結んで一衣に脚を触らせる。
 一衣はるう子の太ももを、付け根から膝にかけて、手を前後にスライドさせるようにして洗い始めた。揉むような手つきで感触を味わいつつ、前後往復で何度も行き来し、るう子の太ももをじっくりと堪能する。
「洗いっこって、普通だもんね」
「う、うん! まだまだ普通だよね」
 お互いに言い訳のように確認して、普通だと言い合った。
 既に二人の心の中には、おかしなスイッチが入ってしまっているのにだ。
「次の場所、洗うね」
 一衣はさらに手を移動させ、ついには小ぶりな乳房を揉んだ。
「一衣ぇ……」
 るう子は目を細め、甘い声を漏らして一衣を呼んだ。
「……るう子」
 一衣もるう子の耳に顔をくっつけ、名前を呼ぶ。
 泡を塗るために胸を揉み、表面をぐるりと撫でる。真っ白な泡の粒が乳房の皮膚全体に引き伸ばされ、もう十分に塗りきったにも関わらず、一衣はそれでも揉み続けた。何かに取り憑かれたかのように一心に、夢中になって手を動かし、やがて乳首まで摘み始める。
「一衣ぇ……」
 懇願のような声が一衣を呼んだ。
「るう子の胸って、柔らかい」
「そうかな」
「うん。すっごく」
 揉んでいるうちに、しだいに一衣の体が動き始めた。背中へ押し付けた乳房を擦り付けるようにして、身体を上下に動かす。
 尖った乳首が、るう子の背中を突いていた。
「一衣……?」
 るう子の乳首も硬く突起しきっている。
「るう子、私……」
 一衣の手がスライドした。
 胸を揉んでいた片手が下へ下へと、肌の上をべったりと移動して、るう子のお腹を通過していく。やがてヘソの下の下腹部へ、大事なアソコへ向かっていき……。
「――だ、ダメ!」
 さすがに慌てた声を上げ、るう子は一衣の手首を掴んだ。
「ご、ごめん! るう子!」
 一衣も慌てた声で謝る。
「う、ううん? 怒ったわけじゃなくて……」
「でも、私……」
 気まずくなりかけた。
 妙な沈黙が重い空気で圧し掛かり、気まずくなった。
 そんな空気を一掃するように、るう子は言った。
「次! 私の番だから!」
「そ、そっか。それじゃあ、お願いします」
 そうして、二人は椅子の上を入れ替わって、今度はるう子は泡を手に取る。
 るう子の手が、一衣の背中に触った。

     *

 るう子は少し、興奮していた。
 同じ女の子の手だというのに、一衣の手で背中からお腹まで、そして太ももと乳房を丹念に洗われて、全身を愛撫された心地良さにうっとりと目が細くなっていた。気持ちも体も、ほんのりと熱くなり、るう子は活発な手つきで綺麗な背中を撫で回した。
「んっ、るう子ぉ……」
 くすぐったいというよりも、まるで別の何かが込み上げているかのような、快感を堪える声を喉の奥から搾り出す。
「んん……つはぁ…………」
 そんな甘く熱い吐息を聞き、るう子の気分も変わっていき、
「さっきのお返し!」
 るう子は一衣の背中に抱きついた。
「えっ、るう子……!」
「るうだって、揉むもん」
「るう子ってば……もう……」
 乳房を揉まれ、背中には押し付けられ、一衣は驚いた顔をしていた。しかし、一衣だって同じことをしているのだから、すぐに諦めたような顔をして、仕方ないかと言わんばかりにるう子の指を受け入れる。
「えへへっ、一衣のおっぱいも柔らかいね」
 もはや、洗いっこという建前はない。
 るう子はただ一衣の胸を揉み、手の平いっぱいにその感触を味わっている。平べったいようでいて、ほんのりと膨らみのある乳房に指を踊らせ、手の内側に乳首の突起を感じ取る。るう子はそれを摘んで刺激して、指先で弾きまわした。
「ああん! もう、るう子ぉ――」
「一衣だって変な触り方したもーん」
「し、してないって……」
「嘘。絶対したよー」
 それこそ、仲良し同士のじゃれ合いのように、るう子の愛撫に一衣はひたすら身悶えする。
「んんー……許してー……」
「だーめー」
「そんなー」
雰囲気のままに気分を傾け、大胆になったるう子は一衣の太ももにまで手を伸ばし、自分がされたのと同じように膝から付け根へと手をスライド往復する。一衣の気分もどんどん変わり、このまま何をされてもいいような気持ちになっていた。
 そして、るう子は欲望と好奇心にかられていた。
 このまま一衣の秘密を暴きたい。
 この子の大事な部分はどうなっていて、その時一衣はどんな顔をするのか。
 不意に全てが知りたくなった。
 まるで欲望に操られるようにして、るう子はやがて秘所へと手を伸ばす。その割れ目へと沿うように、指を差し込んでいった時、一衣は静かにビクっと肩を弾ませて、驚いたような戸惑うような表情を浮かべつつ、るう子の愛撫を静かに受け入れていた。

     *

 なんだか、いけないことをしてしまっている。
 女の子同士なのに、駄目だとは思っているのに、一度スイッチの入ってしまったるう子の指はそう簡単には止まらないし、一衣の気持ちにもなんだかおかしなスイッチが入っていて、るう子のやる事に抗えない。
 タブーを犯すことが面白いことのように思えてしまった。
「あぁ……るう子ぉ……嘘ぉ……」
 人の指が自分の大事なところをなぞってくる、たまらない刺激と快感に、一衣は甘い声を出してしまっていた。
 気持ちいいのだ。
 るう子の細く柔らかい指が、自分のこんな場所に触ってくる。
 気持ちよくて、もっとしたくて、一衣は言う。
「私も、るう子のところ……洗う…………」
 もはや、別の意味でしかなくなっている「洗う」という言葉。その言葉が示すままに、一衣はるう子に体を向け、今度はお互いの手がお互いの股へと伸びて、秘所をまさぐりあうような形となった。
「……綺麗にしないとね。一衣」
「うん」
 二人はそれでも泡を使ってヌルヌルと、周囲を何周も回る形で愛撫し合う。ただ石鹸のぬめりだけでなく、しだいに別の液が膣奥から滲んできて、二人の顔はさらにとろけた。
「お風呂って気持ちいいね」
「うん」
「なんか、ヘンなことになってるけどね」
 そうるう子は苦笑する。
「すごく仲良くなっちゃったね。私達」
 一衣は言った。
「うん。私、一衣と友達になれてすごく嬉しい。嬉しくて、なんか、ちょっと調子に乗っちゃってるのかな。今……」
「乗っていいよ? るう子なら構わない」
「本当?」
「うん!」
 二人はおもむろに抱き合って、お互いの乳房を押し付け合うような形で、そのままの形でお尻を揉み合う。小ぶりな肉に指をくねらせ、食い込ませ、撫でるようにして泡を塗る。一衣はるう子の、るう子は一衣の、それぞれの尻肉の具合を丹念に確かめて、手に覚え込ませんばかりにじっくりたっぷり揉み続けた。
 その下では脚を絡ませ合った。
 熱烈に強く抱き合い、お互いの体温を感じ合った。
 そうしているうち、激しく求め合っているその最中に不意に目と目が重なって、お互いに見つめあった瞬間――。

 ちゅっ、

 二人とも、本当に無意識のうちに、何かに流されるかのように自分の唇を相手の口へと近づけて、それが自然であるかのように口付けを交わしていた。

「ねえ、一衣。私達って……」
「友達、だと思う。すっごく、すっごく仲良しの」
「そうだよね。これからも、友達でいい?」
「うん。また、お泊りに誘うから、来れたら来てね」
「行く。いつでも行くから」

     *

 風呂上りの二人が手を繋いで戻ってきて、遊月は少々目を丸めた。まるで風呂に入る前と出た後で、この二人の関係に何か変化でもあったかのような、少し前までとは雰囲気の違うるう子の微熱を帯びた顔と、一衣のいじらしさがそこにはあった。
「なんだなんだ?」
 やけに仲良しな二人を見て、遊月はだいぶ首を傾げた。
「さーて、寝よっか。一衣」
「一緒に寝ようね。るう子」
 このやり取り。
 一体なんだ?
「お二人とも、何かあったのかー?」
 遊月は尋ねる。
「べっつにー?」
「なんでもないよー」
 るう子と一衣は、それぞれ答えた。
「おいおい、私だけ仲間外れじゃん。ちゃんと教えろよー」
 と、文句を言ってみる。
「どうする? 一衣」
「どうしましょう」
 二人は悪戯に微笑み合い、それから悪戯っぽく二人揃って遊月を見る。
「じゃあ、遊月も一緒に寝ようか」
 と、るう子。
「三人で、ね」
 一衣も一衣で、らしからぬ意地悪な笑み。

 なんだ? この嫌な予感は!
 大丈夫だよね。
 私、カードだし。
 別に何かされたりとかするわけないよね?

 妙な不安に顔を引き攣らせ、その晩、二人の抱き合う枕元に遊月は置かれた。
 そんな遊月の運命を知るのは、遊月自身と三人だけ。


「…………私は仲間外れというわけね」


 その晩の出来事を、イオナだけが知らずに終わった。





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