遊星とアキの初夜


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  *アキは過去にディヴァインと寝ている設定


      †


 ――その夜。

 十六夜アキと不動遊星。
 二人の関係が進むところまで進んだ現在、とうとう最後へ踏み出そうと心を決めた遊星が、アキをホテルへ誘っていた。アキとしても、もう受け入れても良いと思っていたため、ただ頷いて部屋へ入った。
 アキはお互いの想いをわかっている。
 遊星は自分を愛してくれているし、アキも遊星が大好きだ。
 そして、交際の果てにここまで来た。

 唯一つ、アキには不安があった。

 押し倒されたアキ。
「ねえ、聞いて? 遊星」
 まずは唇を塞がれたアキは、遊星からの口付けが終わると同時に、ゆっくりと口を開いていた。
「どうしたんだ? アキ」
「私にはまだ、遊星に話していないことがあるの」
 と、前振りを置く。
 だが、アキの中には恐怖があった。
 今まで遊星には隠していた秘密を話すことで、もしかしたら、これまで築き上げてきたお互いの愛に罅でも入りはしないかと。最悪、この関係が壊れてしまわないかという恐怖がある。
 それほど、お互いの関係に関わる秘密がアキにはあった。
「遊星。私、もう初めてじゃないの……」
 悲しそうに、そう言った。
「そうか。アキ、お前はもう……」
「私がアルカディアムーブメントにいたことは知っているでしょう? あの時にもう――してしまったの」
 アキが口にしたのは、ここまでだった。
 悲しそうに、申し訳無さそうに口を閉ざすアキを見て、遊星の脳裏によぎるのはあの男――。
「…………ディバン」
 その名を聞いて、アキは静かに頷いた。

 ……アキの瞼に、かつての光景が蘇る。

     †

 化け物と揶揄され、魔女と呼ばれて、異形の力を振るっていた当時のアキは、自分を必要とさえしてくれるなら、道具のように利用されても構わないと思っていた。
 ディヴァインの目的は、サイコデュエリストを兵隊として送り出すこと。
 後に事実を知った時も、別に構わなかったと感じていた。
 ただ、必要とさえしてくれれば……。
 そんな状態にいたアキは、ベッドに誘われ、体を明け渡すことさえ躊躇わなかった。

 ――アキ、お前は美しい。
 ――綺麗な薔薇には棘がある。
 ――黒薔薇の魔女を抱いてやれるのは世界中でも私だけだ。

 ディヴァインの語る言葉の全てが、耳障りの良い甘い台詞のように聞こえた。瞳がとろけ、脳が麻痺したようになり、この時のアキの心は完全にディヴァインの手中にあった。

 そして、全てをディヴァインに捧げていた。

 巧みに言葉を操るディヴァインが、乙女心に巧妙に付け込んだとも言えるだろう。

 まず、手始めにキスをした。
 そっと重ね合わせるだけのキスから、しだいに激しい大人の口付けを交わすようになっていき、彼が求めるならば舌を絡め合うことが普通と化した。
 体中を触られた。
 うなじ、頬、腰のくびれ。
 恋人にしか許されない場所にディヴァインの手垢がつき、二人きりの時に胸を揉まれることも当然と化していた。抱き合いながら、キスをしながら尻を揉まれることもしょっちゅうだった。
 自分はディヴァインのものだと実感していた。
 キスをされれば頭が麻痺して、朦朧とした夢見心地な気分になって、こうなるばどこを触られても不快はない。胸を鷲掴みにしつつ、もう片方の手にお尻を撫でられ続けた日々が、アキの記憶には鮮明に残っている。

 例えば、町でデュエルに勝った時。

「今日もよくやったな。アキ、ご褒美をやる」
 そうして強く締め付けるようにして抱擁され、舌を捻じ込まれた瞬間は、どれほど心地良かっただろう。
 温かい優しさに包まれたようになったアキは、背中に巻きついていた腕が下へいき、両手が尻を包んできても、そこにあったのは喜びだった。
 彼が自分を求めてくれる乙女の歓喜であった。
 初めて男のものに触れたのも、この時だった。
「アキ」
 耳元で名前を囁いてきたディヴァインは、アキの右手を優しく握り、下へ下へと導いた。彼の胸板へ当てていた右手はスライドして、腹部を通過し、やがてズボンの膨らみへ到達する。触れてしまった恥じらいと、こんな事をしている緊張感と、男のものはこんなにも硬いのかという感慨に包み込まれ、強張りながら優しく撫でた。
 すり……すり……。
 と。優しく撫でるようにして。ディバインの胸板に顔を深く埋め込みながら、優しい手つきで撫で続ける。棒状の硬い形を包み込み、形状を確かめるかのように、上下にさすっていた。
「明日、君の全てを貰う」
 耳元で、ディヴァインから告げられる。
「わかったわ。ディバイン」
 受け入れたのは、彼が自分に愛を与えてくれると思ったからだ。

 そして、翌晩。
 いよいよ時を迎え、シャワーを浴びたアキはベッドの上へ横たわる。するとタオルを取り外され、秘所を指で嬲られた。
「あ……あはぁぁ……」
 すぐに目を細めた。
 ディバインの指遣いで股を濡らして、ここに彼からの愛を受け取る準備が進む。とても緊張するようでいて、期待感も沸くこの瞬間に、胸を大きく躍らせた。
「いやらしいね。アキ」
「いやぁ……」
「アキ。君のアソコがトロトロだ」
「言わないでぇ……」
 意地悪な言葉を全身に浴び、肉貝の隙間からみるみるうちに愛液を滲ませる。
「さあ、アキ。初めてを頂くよ」
 アキのアソコはすっかり出来上がり、ディヴァインの怒張した先端が当てられる。ずにゅぅ、と腰が押し出され、ぬるぬると滑る込ませるようにして、根元までが挿入された。
「痛いかい? アキ」
「……だ、大丈夫よ。ディバイン」
「いい子だ。アキ」
 ディヴァインは優しい微笑と共に、ピストン運動を開始する。抱擁で包み込み、優しく頭を撫で、愛を囁きながら行われる初体験は、本当に心躍るものだった。
 まるで砂糖菓子のように甘い、夢の体験をしたような――。
 幸せなあまり、破瓜の痛みなど意識になかった。
 ただ、ディヴァインに愛されている喜びだけが、アキの心を満たしていた。

 それからは、ほとんどの事をしてしまった。
 あらゆる体位で性交を試し、四つん這いで後ろから突かれるのが気に入った。対面座位で抱き締め合い、相手の体温を感じながら腰を弾ませるのも最高だった。
 唇でペニスを包み、慈しむように舌を動かす。ディヴァインの股へ向かって、一生懸命に頭を前後した。
 この時に舌で感じた肉棒の皮の皮膚と、口内に出された精液の味は、今でも思い出せてしまう。
 熱くて青臭いような味を、ディヴァインの味だと思って飲み込む自分がいたものだった。
 乳房で怒張を包み込み、丹念にしごきあげる。谷間で感じた肉棒の硬さと熱さも、肌で思い出せてしまう。初めて挟んだ時は胸に出されて、二回目は顔にかけられ、そのまた次は胸と口を同時に使った。
 尻に、背中に、腹に。
 色んな場所に精液をかけられた。
 避妊薬を与えられ、膣内射精も何度かされた。
 口も、胸も、尻も、全てがディヴァインに使われ続けたあとなのだ。あらゆるプレイで、手や尻でアソコを慰め、何度も何度もセックスしている。
 この体に蓄積された性経験と、感度の良さも、全てがディヴァインによるものだ。
「お前に必要なのは不動遊星ではない。この私だ!」
 そんな事を言われながら、ずっと突かれ続けたこともある。
 だからこそ、アキの中には迷いがあった。
 人に使われ続けた体を、遊星に捧げることに。ディバインのものが入った自分の秘所に、遊星のものを迎え入れてもいいのだろうかと迷いがあった。

     †

 だから、アキは告白した。
 自分は既に清らかな身などではないことを――。
「あの時は、こんな風に後悔する時が来るなんて思ってもいなかったわ。あの時の私は、本当にディヴァインのことばかりを考えてしまっていた」
 懺悔のようにアキは語る。
 すると。
「アキ――」
「んんっ!?」
 唇を塞がれた。
 いつもは優しく、そっと重ね合わせてから、心の扉を丁寧に開くようにして侵入してくる。強引さのない舌の侵攻には、いつもアキの意志を確かめるような動きがあり、アキからも舌を絡め合わせてサインを出すことで、やっと少しは強引になってくるのだ。
 それが、今日はいきなり強引だった。
 まるで侵略してくるように、遊星はアキの唇を頬張り、限界まで伸ばした舌で口内を蹂躙する。遊星の思ってもみないやり方に、アキは驚いて目を見開いたままになっていた。
「――ゆ、遊星?」
 やっと口が離れ、唾液が糸を引いてから、アキは恐る恐る名を呼んだ。
「アキ、そんな事はずっとわかっていた」
 遊星は言う。
「いや、そんな事というほど、軽いものでもないか。だが、とにかくわかっていた。きっと、もうしているのだろうと、今までの様子から気付いていたさ」
「そ、そうなの?」
「ああ」
「いいの? 私は一度あの人で染められているのよ?」
「アキ」
 遊星の手が、アキの頬に優しく触れる。
「遊星……」
「俺がお前を染め直す。他の誰かに抱かれたお前を、俺が全て上書きしたい」
 真剣な眼差しだった。
 人を真摯に愛した真面目な目で、遊星はアキの心を見抜いてくる。
 こうなると、もう駄目だ。
「……お願い。遊星、私をあなたで染めて頂戴」
「言われるまでもないさ」
 そう言って、遊星はアキの唇へ顔を落とす。
 再びの口付け。
 遊星はアキの唇を飲み込まんばかりに頬張って、舌で口肉を撫で回す。キスでうっとりさせたまま、腰のくびれに手を這わせる。そこからゆっくり、ゆっくりと上へ向かい、やがて乳房が包み込まれた。
 ――始まる。
 遊星との、初めての夜が始まる。
「んぁ……」
 遊星に乳を揉まれて、アキは全身を熱くした。日頃は機械弄りに夢中になったり、けれど仲間の絆に熱くなり、死と隣り合わせのデュエルでも果敢に戦うあの遊星がだ。自分の胸に夢中になってくれていると思うだけで、アキはとてつもなく興奮していた。
 あの時とは少し違う。
 ただ必要とされたがための喜びと、度重なる経験で体が生理的反応を覚えただけの性行為と違って、今はもっとアキ自身が興奮している。
「とても柔らかい」
「……そ、そうかしら?」
「ずっと、こうしてみたかった」
「もう、エッチね」
 そう言ってやると、遊星はやや気恥ずかしい顔をする。それでも乳揉みを続行し、存分に指を躍らせ食い込ませる。
 乳首を摘まれ――
「んぁぁ……!」
 アキは喘いだ。
「ふふっ、こうか」
「――あっ、ゆうせ……あぁ……!」
 遊星はアキが感じるコツを見つけて、責めていく。突起した乳首は敏感に弾けて快楽を放出し、アキの息を大きく乱す。
「ゆうせぇ……」
 助けを求める目で、彼を見た。
 こんなにも体が反応するのは、やはりディヴァインに慣らされているせいだ。あの男のおかげで感じる体が、忌まわしい過去の証に思えてアキの心を縛り付ける。
「アキ、どうされた?」
「……え?」
「ディバインと何をしたことがある」
「ど、どうしてそんな事を……」
「奴のした事で、俺のまだしていない事は全て無くしたい。全て埋め尽くすことで、上書きできる気がするんだ。だから、全て教えてくれ。俺がアキの何もかもを塗り替える」
「そうなのね。嬉しい」
 以前と同じだ。
 怪物と蔑まれ、荒れてしまっていたアキの心に遊星は入り込み、アキの心を救ってくれた。
 今もまた、アキを助けようとしてくれている。
「でも遊星? 色々とあるから……。一晩では無理だと思うの」
「出来る限りやってみたい」
「そう? でも、せっかく遊星となのに……。昔を思い出しながらするのは、少し嫌だわ」
「なるほど。だったらこういうのはどうだ?」
 遊星は、アキの耳へ顔を近づける。
 耳元で囁く内容は、アキの目を丸めさせるものだった。

 ――三日間、お前を調教し続ける。

 遊星は、耳元でそう宣言してきた。
「ゆ、遊星? 三日もって、そう言ったの?」
「ああ、そうだ」
「いきなり、そんなにするなんて。もたないわ」
「十分に休憩は取らせるさ。それに、逃がすつもりもない」
 遊星はおもむろに手首を掴み、ベッドに深く押し付ける。アキは両手を封じられ、抵抗ができなくなった。
「意地悪だわ遊星。あなたとは初めてなのよ?」
「だからこそさ。忘れられない体験にしてやる」
 フフッ、と微笑む遊星。
 その笑みには、あらゆる意味で背筋がゾクっとした。何をされるかわからない、ちょっとした恐怖もあり。けれど、どこか期待してしまう部分もあり。
 アキはただ顔を赤らめ、瞳を閉じた。
「……もう! どうにでもして頂戴」
 どの道、される覚悟はしてきている。
 やる内容が増えるだけと思えば、たいしたことはない。
 ……はず、だ。




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