柚子に変わって・・・・・


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「こっちだ。榊遊矢」
「あ、ああ……」
 セレナが遊矢の手首を掴み、裏路地へと引っ張り出す。
 二人で物陰に隠れ、周囲に誰もいないことを確認しつつ、セレナはさらに落ちていた木材を立てかける。自分達の姿が外側から見えにくいようにしてから、壁によりかかった遊矢の舌で膝をつき、ベルトへと手をかけた。
「始めるぞ」
「けど、いいのかよ……。これじゃあまるで、セレナの弱みにつけ込むみたいで……」
 遊矢は申し訳無さそうな顔をする。
「弱みだと?」
「だって、そうだろ? セレナは柚子のことを気にして、俺への償いのために……」
「それは私自身が決めた事だ。お前自身が何か私にツケ込むようなことを言ったわけではないだろう。何を気にする」
「そうだけど、セレナ……」
「あれは私の戦士としての失態でもある。埋め合わせをしなければ、私の気が済まん」
「……わかった。頼む」
 また、そう言ってしまった。
 セレナの弱みというよりも、本当は流されている自分が気になる。まるで目の前の欲望に負けているかのようで、決まりが悪くて仕方がない。
 それでも、柚子と同じ顔をした少女にそうして貰えるかと思うと……。
 頭でも、心でも、別人なのはとっくにわかっていることなのだが、見た目が全く瓜二つな人間とそういうことが出来るかと思うと、燃え滾る欲望を遊矢自身抑えていられない。
 ただでさえ、思春期の遊矢は柚子を気にしていたのにだ。
 こうして女の方から誘われ、相手がそれを良しとしているのでは、とても拒んだり突き放すようなことはできなかった。
「口でするのは、フェラチオというのだろう?」
 柚子と違って、気の強そうな瞳が見上げてくる。
 しかし、同じ顔。
 これから、その唇が自分のものを咥えるかと思うだけで、遊矢の肉棒は既に限界まで勃起していた。
「……あ、うん」
「よし、やるぞ」
 セレナは遊矢のズボンから肉棒を取り出し、興味津々であるかのような、まじまじとした視線でしばらく見つめ、ようやく唇を近づける。
「うっ、セレナ……」
 唇が亀頭に触れて、その刺激に遊矢は震えた。
「気持ちいいのか?」
「ああ、すっごくいいよ。セレナ」
「生憎時間はある。たっぷりしてやるからな?」
 初めて口奉仕をするセレナは、どうにもコツの掴めていない拙さで、最初は小鳥がエサをつついて啄ばむように唇で何度も食む。
「ちゅくっ、ちゅくぅ……ぺろっ」
 やがて、チロチロと先端を舐めては唇で亀頭を包む。唇で噛むようにして、亀頭を揉むように力を加え、また唇を離してはチロチロ舐める。
「あぁ…………」
 頭の片隅では柚子を想って、セレナのくれる刺激に浸った。
 シンクロ次元を訪れた遊矢達は、わけもわからずにセキュリティに包囲され、危なかったところをクロウ・ホーガンに救われたばかりだ。クロウや子供達の住む家で、今少しのあいだ滞在している遊矢は、空き時間を埋める形でセレナに誘われ、ここで奉仕を受けている。
「……どうだ?」
「すっごく、気持ちいい」
「よし、もっと咥えてやろう」
 コツを試すかのようにして、セレナはより深くまで肉棒を咥えていく。およそ半分までがセレナの口内に埋め込まれ、残る根元は右手に握られ、手と口によって肉棒の根から先までがまんべんなく包まれた。
 セレナの頭が動き出す。
「――じゅっ、じゅるるっ」
「は、歯が……」
「すまない。噛まないように気をつけよう」
「あぁ……セレナ…………」
「んぷ……ちゅる……ぢゅるぅ……じゅぷぅぅぅ…………」
 前後運動が続くにつれ、セレナの口内で唾液が生まれ、肉棒に絡んでくる。広い舌の面積がべったり張り付き、研磨するように撫で擦り、刺激のあまりに射精感が込み上げていた。
「セレナ。俺、もう……」
 と、射精を告げる。
 ――よし、来い。
 セレナの目は、咥え込んだままそう言っていた。口に受け入れるために遊矢を見上げ、首に角度をつけた状態のまま舌を動かし続けている。
 ドクン、と。
 肉棒が弾んで、亀頭の先から白濁が放出された。
「……んっ、ゴクン」
 喉を鳴らして、セレナは精液を飲み下した。
「ありがとう。セレナ」
「礼などいい。それよりも、こちらには挿れないのか?」
 セレナはスカートの中に手を入れて、ショーツを膝まで下げていく。
「……ごくり」
 興奮した遊矢は息を呑んだ。
「さあ、いいぞ」
 壁に両手を突いたセレナは、自らスカートを捲り上げ、白い丸尻を遊矢に曝す。遊矢はその尻たぶを鷲掴みにして、肉棒を突き入れた。


 二人のこの関係は、次元を飛び立つ前夜にまで遡る。


     ***

 セレナが奉仕を決意したのは、柊柚子が自分の囮になったせいで行方を消し、別の次元へと移動してしまったことからだ。事実を知った遊矢は激しく動揺して、赤馬零児に食って掛かって激しいデュエルにまで発展した。
 自分にも原因があるせいか、気を落とした遊矢の姿に同情してしまった。
 ――私のせいで……。何か詫びでもできないものか。
 と、セレナはそんな風に考えた。
(しかし、人を慰めるなど。一体どうすればいい)
 アカデミアから出たことのなかったセレナは、そもそも世間に関することすら疎い。侘びだの慰めだのと思っても、何のアイディアも浮かばないのだ。

(こうなったら、誰かに聞いてみるしかあるまい)

 相談相手を求めたセレナは……。

     ***

「へえ? それで僕に相談を?」

「デニス。お前なら何か思いつくだろう」
「うーん。エッチでもしてみるとか?」
「何だと? それは恋人同士でするものではないのか?」
(あれえ? 冗談を言ったつもりだったんだけど、もしかして真面目に聞き返してきちゃってる?)
「どうなんだ。答えろ、デニス」
「ま、まあ……。本当はそうなんだけど、人間関係っていうのはそればかりじゃなくてね。恋人じゃなくても、エッチなことをするのは有り得るのさ」
「なるほど」
「もしそうするなら、どんなことをすればいいのか。どうすれば相手が喜ぶか。あとは避妊についても、きちんと調べてからにするんだよ?」
「だいたいわかった。ふむ、あとは自分で調べる」

(やれやれ……。
 もしかして、本当にシちゃったりするのかなぁ?)

     ***

「こ、これがセックス……」

 インターネットを利用して、初めて刺激的な動画を見たセレナは、男女の交わる光景に衝撃を受けていた。
「こんなにも浅ましく、動物的なことなど……」
 そう言いながらも、女が気持ち良さそうな声で喘いで、男がせっせと腰を振り続ける映像からセレナは目が離せない。無意識のうちに夢中になり、食い入るように見つめたセレナは、下腹部をキュンと疼かせていた。
「手コキ、フェラチオ……。体位にも種類があるのか」
 性行為に関して検索をかけたセレナは、それらに関する文章を読み漁り、今まで持つ機会のなかった性知識を次々に吸収する。
「だが、誇り高き戦士がこのようなことに夢中になるのか?」
 さらに検索をかける。
 すると、戦士が闘争本能を昂ぶらせるために女を抱くといった情報を見てしまい、それに影響されたセレナは、自分の中で性的なことを肯定し始めていた。
「うむ。ランサーズとして、榊遊矢は間違いなくエースだ。赤馬零児に負けはしたがな」
 そんな遊矢の闘争本能を刺激する。
 なるほど、戦いに勝つ上で重要なことかもしれない。
「確かデニスは避妊だとか言っていたが、なるほどコンドームか。よし、これさえ準備すれば榊遊矢を誘うことができる」
 颯爽と立ち上がり、遊矢の元へ向かって行った。

     ***

 そして、セレナは遊矢の部屋を訪れた。
「榊遊矢。お前には戦士として奮い立ってもらう必要がある。いつまでも落ち込むな! 前を向くためにも私を抱け!」
 セレナ本人は真剣な顔でそう言って、遊矢をベッドに押し倒す。
「お、おい! ちょっと待てって! セレナ!」
 倒されて、セレナが馬乗りになることで、慌てふためく遊矢。
「何故だ。男とは欲望を持つものではないのか?」
「それはっ、そんなこと……いきなり言われても……」
「意気地のない奴め! 女の方から誘っているのだぞ!」
 じたばたともがく遊矢を体重で押さえつけ、抵抗を封じようと手首を掴む。セレナは力の限りを尽くして遊矢と揉み合い、苦戦の末にとうとう遊矢の右手を自分の乳房に運んでみせた。
「あっ……」
 強引にそうされたとはいえ、セレナの胸を揉んでしまった遊矢は凍りついた。
「どうした。好きに揉めばいい」
「けど……」
 遊矢はセレナから顔を背けた。自分の手の中に柔らかい感触がある事実に、遊矢は心臓を大きく鳴らしていた。
「揉まないのか」
「それは……」
 揉めと言われても、本当に揉むには踏ん切りがつかない。男としての欲望は確かにあるが、こんな形でいきなり胸を触らされ、動揺していることもあり、指を動かすに動かせない。このまま揉んでしまいたい反面、それでいいのだろうかという理性が働き、理性と欲望の板ばさみで遊矢の手はいつまでも止まっていた。
「柚子のことは私にも責任がある」
「セレナ……だからって…………」
「柊柚子はシンクロ次元にいると、赤馬零児は言っていたが。私と服を交換したせいで、本当に融合次元に拉致されなかった保障はない。あの提案に簡単に乗るべきではなかった」
「けど……」
「このままでは私の気も済まない。戦士には前を向いてもらう必要もある。これは私からの頼みだ。私を抱いてくれ」
「セレナ……」
 遊矢の中で、柊柚子が重なった。
 性格は全く違う。振る舞いも違う。別人なのはとっくにわかっていることだが、視覚的には柚子を見ているのと変わらないのだ。
 そんなセレナが馬乗りになってきているせいで、ちょうど股間がつぶれている。セレナの股の重心を受け、遊矢は完全に勃起していた。
「するんだ。遊矢」
「あ、ああ……」
 押しに押されて、遊矢は初めて指を動かした。
 セレナの胸を揉み始めた。
「遊矢。こっちも……」
 セレナは遊矢の左手も掴み、もう片方の乳房へ運ぶ。

 もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、もみっ……。

 初めは困惑の中にいた遊矢だが、しだいに熱中していって、いつしか活発に指を踊らせも揉みしだいていた。
 やがて、セレナは無言で赤いジャケットを脱ぐ。
 目の前でシャツがたくし上げられ、ヘソが、胸元が、少しずつ見えてくる光景から、遊矢は目が離せなくなった。背中に腕を回したセレナが、ブラジャーのホックをパチリと外し、肩紐を片方ずつ横へと下げ、上半身裸になるまでの一連の流れを、遊矢はじっと見つめていた。
 生の胸へと、遊矢はそーっと手を伸ばす。
 セレナが特に何も言わないので、再び両手に乳房を包んで、長々と揉みしだいた。

 もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、もみっ、もみっ……。

 これだけで、どれだけ時間を費やしたか。
 小一時間は揉んだ気がする。
 それでも飽きがこなくて、遊矢は指を動かし続けていた。
「遊矢。これを用意してきた」
「コンドーム……」
 目の前にそれを突きつけられ、遊矢はごくりと息を飲んだ。
「私が下になる。あとは……好きにしてくれ……」
 セレナと上下を入れ替わり、今度は遊矢がセレナに被さる。スカートの中へ手を入れて、下着越しの秘所へ指を触れると、セレナはビクっと、少しだけ驚くように震えていた。
 セレナの顔に恐怖や躊躇いはない。恥じらいもない。
 ただ、じっと押し黙っていた。遊矢のすることを受け入れるため、全身から力を抜いてだらりとしていた。
「セレナ……」
「どうした。手が止まっているが」
「い、いや……いいのかなって……」
 コンドームを渡されたということは、つまり最後までということだ。
 ……いいのだろうか。
 押しに流され続けたせいで、少しは薄れた遊矢の中の躊躇いが、ぼんやりと蘇った。
「本当に意気地のない。貴様はそれでもデュエリストか?」
「こ、これとデュエルは関係ないだろ?」
「そうとも限らん。戦士とはこうして英気を養うこともあるそうだからな」
「英気って、お前……」
「遊矢からしないなら、私からするぞ」
「わかった! わかったって……」
 またセレナに押し倒されそうな予感がして、慌てた遊矢はそう言った。
 そして、秘所に愛撫を行った。割れ目を上下に擦るように、揉むようにして、右手を丹念に動かしていく。
「んっ、んぅ…………」
 初めて恥じらいを覚えたように、セレナの頬が赤らんだ。恥ずかしいことをしているのに、今更になって気づいたように、セレナは唇を丸め込んでいた。
「脱がせていいか?」
「……ああ、構わん」
 スカートを脱がせて、ショーツも取り去る。
 丸裸となったセレナの秘所に触れ、するとセレナはビクンと喘いだ。その驚いたような表情が可愛らしくて、遊矢はますます指を動かす。活発な手の動きにセレナは身悶えして、両手をよがらせた。
「気持ちいいのか?」
「わからん。これが快感ということなのか」
「そうだと思う。濡れてきてるし」
「――んんっ」
 快楽にセレナは震える。
「そろそろ、挿れてもいいか?」
「……構わん」
 いよいよだ。
 遊矢はコンドームを装着して、先端をセレナの秘所へ近づける。ぴったりと膣口に押し付け、腰を前へ進めていき――。

 ずぷぅぅぅぅ……。

 と、遊矢は肉棒を挿入した。
「んぁぁ……くぅ…………!」
 セレナは初めての感覚に苦悶している。
「っ、セレナ……!」
 遊矢はゆっくり腰を動かす。

 ずるぅぅぅぅ……ずにゅぅぅぅぅぅぅ…………。

 初めてで痛いのではないかと、遠慮の混じった腰遣いは、ゆったりと出入りしている。
「あっ……うっ……うぁ……あぁぁ…………」
 小さな声を搾りながら、セレナはピストン運動に震えていた。痛みとも喘ぎともつかない震えた声で、遊矢の肉棒を大人しく受け入れていた。

 これが二人の初めての交わり――。

     ***

 そして、現在――。
「――くぅっ、うぁっ!」
「大丈夫か!? セレナ!」
「さ、最初より……良くなって…………」
「俺もゆっくり動くから、声が出すぎないようにな」
「……わかった」
 壁に両手を突いたセレナは、遊矢と二回目の交わりを行っている。一度目は気持ちよさよりも痛みの方が上だったが、二度目になると痛みはなかった。
「――んんっ、んぅっ」
 声を抑えるため、セレナは片手で口を塞ぐ。
 尻を撫でながら腰を振っていた遊矢は、セレナの背中に抱きついて、後ろから乳を揉みながら動き始めた。密着した状態で、吐息が耳にかかってきて、セレナはますます快感に喘ぐ。
 心地良い。
 アカデミアにいたころは知る由もなかった快感が、じわじわとセレナの心をほぐしていた。
「気持ちいいよ。セレナ」
「――あっ、んぁっ、私も……だ…………」
「ありがとうな。俺のために」
「礼など、いい……んぁっ……あぁっ……!」

 じゅぷっ、ずぷっ、にゅぷん――ぬちゅ――ずちゅん!

 水音が鳴り響く。
 いつしか二人は体位を変え、セレナは壁によりかかった。片足を上げた状態で、遊矢の胸にしがみつきながらピストン運動を受け入れた。

「ゆう……やぁ…………」
「セレナ…………」

     ***

 二人は果て、体力を消耗したセレナはその場でぐったり座り込む。
 自然と、セレナは遊矢の手を握っていた。
「とても良かったぞ。遊矢」
「そ、そうか? なら良かった」
「だが、少し怖いな」
「……怖い?」
「こんなに気持ちの良いことは初めて知った。自分がこんなことで溺れるのではと、少しだけ気がかりだな」
「平気さ。セレナなら。お前は強いデュエリストだろ?」
「お前もな。榊遊矢」
 きっと、遊矢の隣は柚子の居場所なのだろう。
 柚子がいないことをいいことに、この場所を完全に自分のものにすることは許されない。そもそも自分は、遊矢を慰めることが目的だったはず。
 しかし、今だけは――。

 セレナは遊矢の肩に寄りかかった。

「お、おいっ! セレナ……」

 慌てた顔をする遊矢の姿が、なんとなく面白かった。

「必ず辿り着こう。柚子の元へ」
「ああ、ありがとな。セレナ」




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