催眠おじさん 緋扇かるら


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 ただすれ違って行くだけで、誰もが嫌そうに顔を顰めて、逃げるかのような小走りで離れていく。特に女性がそんな反応を示しやすいのは、それほどまでに醜悪極まりない外見をしているオジサンだからだ。
 もう五十歳を越える老け込みも一つ。
 しかし、実に半端な禿げ方もまずい。ところどころから抜け落ちて、どころどころには残っているから、どうしても汚らしい印象になってしまう。むしろもう一本も生やさない方が、下手に生え散らかすより清潔感が出るだろう。
 脂ぎった髪質で埃が付着しやすくて、それが余計に汚さをかもし出す。
 それに体臭もあった。
貧乏なため、入浴回数を節約している男には、常に垢が溜まっている。体質もあり、少し皮膚をこすっただけで、たくさんの老廃物が指につく。髪を洗うのも週に数回だけだから、加齢臭と合わせて不快な匂いが漂いやすい。汗をかきやすいこともあり、夏場では体臭兵器だ。
 そんな条件を持つ男が、歩くだけで脂肪が揺れるほどに腹を出している。ブタのように潰れた鼻と、ブルドックじみて垂れ落ちた頬を併せ持つ。眼差しからして、ただ歩いているだけなのに、卑猥なものを眺めるときのいやらしい目つきそのものである。
 条件は十分に揃っていることだろう。
 だから、すれ違うだけの通行人がオジサンを避けたがる。
 ただでさえ条件を揃えていながら、さらにオジサンはいつでも獲物を物色している。街中を行き交う女性を見て、誰にしようかどうしようか、今日はどんなプレイを試そうかと、舌なめずりをしながら徘徊している。
 淫猥なオーラが全身から出ているのだ。
 この男は痴漢をやるに違いない。こんな奴と二人になったら襲われる。その獲物に向けるような視線で女の肢体を舐め回し、ニヤついたり薄笑いを浮かべる姿は、世界中の女性に警戒心を抱かせる。
 そんなオジサンの前に一人の少女が立っていた。

「久しいな。八咫鋼」

 少女はオジサンを『八咫鋼』と呼んでいた。
 緋扇かるら。
 ブレザーの内側にスクールセーターを着込んだかるらは、確かにオジサンの前に立ち、オジサンの顔を見て、まるで親の仇でも見るような恨みがましい視線を向けている。
「忌まわしき我が父の仇よ!」
 そう言われ、オジサンは困り果てていた。
(いやぁ、こんな娘が来るとはねぇぇ?)
 オジサンは霊感体質の持ち主だった。
 過去何十人もの霊に憑依され、そのために念じるだけで人を操る能力が身について、それは磨けば磨くほど汎用性を増していく。いつしか意識はそのまま肉体だけを操作したり、完全な人形として扱うのも、はたまたは自分の姿を別のものに見せかけることさえ自由となった。
 ここ最近で犯した女達は冬空コガラシという男を好いていた。
 ならば、周りの女の子には自分がコガラシに見えると念を振り撒き、彼の知り合いがたまたま寄って来ないだろうかと試してみれば、このような緋扇かるらの登場というわけだった。
(なんか厄介そうだし、どういうつもりなのか喋らせてみるか)
 と、念を送る。
 オジサンが人を操る手順など、ただ頭の中に思いを浮かべ、強く念じるだけだった。
「…………」
 それだけで、かるらは目に光のない人形と同じになる。
「君はどうしてコガラシくんの前に出てきたのかな? 父の仇? 詳しく教えてね?」
「……はい。わらわは八咫鋼に恋心を抱いておりますが、父を負かせた相手に惚れたとは、部下に伝えられる立場ではありません」
「へえ? 好きなんだ」
「……はい」
「だったら、手荒な真似はしなくていいよ。この僕を丁重にお迎えして、そしたら君はオジサンとセックスしようか」
「……はい」
 ここまでわかれば十分だった。
 オジサンがパチリと指を鳴らせば、それがスイッチのように人形状態の術は解け、かるらはかるらとしての意識を取り戻す。
 ただし、オジサンを八咫鋼であると催眠誤認したままだ。
「……八咫鋼よ。わらわと来てくれるというのだな?」
「そうだよ? かるらちゃん」
「よ、よかろう。着いて来るがよい」
 こうしてオジサンはかるらの屋敷へ招かれる。
 同じ屋敷に暮らす警備や他の住人さえも、オジサンの途方もない霊気を受け、誰も彼もが八咫鋼であると誤認していく。その瞳に映っているのは、オジサンの実際のルックスとは似ても似つかないコガラシの姿そのものなのだ。
 
(ええ!? 全部? これみんな冬空コガラシ!?)
 
 さしものオジサンも面食らった。
 壁のいたるところや天井にまで、コガラシのポスターやうちわが飾られて、テーブルにはマグカップが、ベッドには抱き枕まである始末だ。
「そ、そうじゃ! 大ファンなのじゃ!」
 かるらは全てを白状する。
「そなたに憧れるうちにこういうものを作るのが趣味になってしまっての。やはり気味が悪いかのう?」
「まあいいんじゃない? 趣味は人それぞれだし」
「本当か? 引いておらぬのか?」
「俺は君とセックスができれば構わないからねぇぇ?」
 オジサンが手を触れると、かるらは抵抗なく受け入れる。何をされても構わないかのように目を瞑り、頭を撫でれば嬉しそうにモジモジする。頬に触れても、耳を揉んでも喜んで、どこか期待に満ちた熱い視線さえ向けていた。
「そうじゃのう。わらわとてそなたと交わることを夢に見てきておる。そういうことをするのは構わないのじゃが、やはり緊張するものじゃのう?」
「大丈夫。俺はとっても上手だから」
 腰のくびれに手をまわし、オジサンはかるらをベッドに導く。
「や、やはり……。ゆらぎ荘の女子共にも手をつけておるのか? そなたほどの男じゃ。モテないはずがないからの」
「まあ、一応?」
 寝かしつけていくように押し倒し、上から覆い被さったオジサンは、ブレザー越しの肩や二の腕を撫で回し、鎖骨のラインも指先で探っている。
「そうか……! わらわよりも先に交わっておるなど! 悔やんでも悔やみきれるが、よもやここまで来てしまえば、そなたはもうわらわのものじゃ」
「そうかもねぇ?」
「さあ、好きにせい。わらわの愛と美貌の虜になるはずじゃ」
「ではでは頂きまぁぁぁす」
 オジサンは艶やかな唇へと貪りついた。
「んぐぅっ、んっ、激しい……これが口付け……!」
 それは欲望の動物が、己の欲求のままに貪り尽くしている姿に過ぎない。傍からすれば美貌の少女が不潔なオジサンの犠牲となっている光景と映るだろうが、かるらの中ではコガラシにそうされていることになっている。
 愛する者に襲われているから、かるらの目は悦んでいた。
「嬉しい?」
「ああ、嬉しいぞ! 八咫鋼!」
「へえぇ? もう一回してあげようか――ちゅぶぅっ」
「んぶぅっっ、ふむぁ……く、苦しいほどの……もっと……! もっとじゃ!」
 いくらでも食べて欲しいと顎を突き出し、唇が重なるたびに興奮度を増していき、かるらの瞳にはもう完全にコガラシしか映っていない。その手が胸を揉んでいようと、もう片方の手がスカートの中に忍び込もうと、コガラシの欲望が自分に向いている事実は、かるらをより悦ばせるものとなる。
「かるらちゃーん。可愛い顔になってきたねぇぇ?」
「そなたの手が触れておるのじゃぞ!? 喜ばずにいられようか!」
「じゃあ、俺のことも喜ばせて欲しいなぁぁぁ?」
 オジサンはスクールセーターをたくし上げ、その内側にある白いワイシャツのボタンを外していく。せっかくの制服は着せたまま、はだけた前のブラジャーもどうにかずらし、豊満な乳房を露出させ、生の胸を揉みしだいた。
「あっ! あぅぅ……!」
 手に余るほどの巨乳を弄り、乳首にも刺激を与えると、かるらは可愛く鳴き喚く。
「ほら、かるらちゃんばっかりが気持ちいいから、今度は俺にもね」
「はううっ、わらわに何か奉仕をさせようというのか」
「パイズリフェラってわかるかなぁ? して欲しいなぁぁぁ?」
「よかろう。わらわに任せよ」
 立ち上がったオジサンは、ベッドシーツに両足を沈めた直立姿勢でベルトを外し、とっくにそそり立っている一物を解き放つ。楽しみそうに恥ずかしそうに待ち構えていたかるらは、大きな大きな胸の狭間に肉棒を包み込んだ。
「嗚呼、そなたものもを胸に抱ける日が来ようとは……」
 乳圧をかけて上下にしごき、谷間から突き出る亀頭に唇を押し当てる。舌を伸ばしてペロペロと唾液を塗り、かるらは奉仕に励んでいる。
 こうして挟んでいてもまだ余るほどのボリュームと、ふんわりとした弾力に包まれた感触の心地良さで、オジサンの肉棒は至福の快感で満ち溢れていた。
「ちゅっ、ちゅむぅぅ……どうであろうか?」
 愛情を込めたくてたまらない口技で、たっぷりと亀頭を頬張り、先っぽをペロペロ舐めてはまた頬張る。
「うん。とっても最高」
「そうであるか。であれば、ますます励まねばのう?」
 しだいにコツを掴んだかるらは、自分の谷間に完全に顔を埋め、竿も亀頭も全て包んだ上下運動に徹していく。
「はむっ、はぶっ、ちゅぅぅ……じゅむぅぅ――つじゅっ、にゅぷぅ…………」
 乳房で竿を温めてやるように、唇で亀頭を癒してやるように、かるらは本当に『八咫鋼』に対する気持ちを宿している。想い人に喜んで欲しい健気な心で奉仕に力を入れている。
「そろそろ一回出そうかなぁぁぁ? ごっくんって、飲んで欲しいなぁぁぁぁ? だからフェラチオオンリーでお願いねぇぇぇ?」
「うむっ、胸はもうよいのじゃな」
 献身的にペニスに仕え、一生懸命頑張る顔で頭を前後に動かし続ける。
「ちゅむぅぅ……じゅっ、ずっ、ちゅるぅぅ――じゅむっ、ちゅぷぅ…………」
 敵である八咫鋼への恋心が周囲に知れては、かるらの威厳と信頼はガタ落ちだったか。ならばこんな姿が知られたら、果たして落ちるだけで済むであろうか。落ちるどころかマイナスにまで食い込みそうだ。
「出るよ? 出るよ? 飲んでねぇぇぇ?」
 込み上げる射精感に合わせて宣言すると、かるらは上目遣いの目で頷く。
 よかろう、出すが良い、と。
 目がそう言っていた。
 精液を飲むべくしてもう少しだけ奥まで咥え、口腔に肉棒の収まったかるらの顔が、オジサンを向いている。自分の奉仕で悦ぶ『八咫鋼』を見るために、彼が出そうとする精子をいくらでも飲むために、あらん限りの口技で頭を前後した。
「じゅっ――じゅじゅっ、ずっ、ちゅるっ、んぷっ、ちゅむぅぅ――――」
 その動きは活発となり、やがてオジサンは解き放つ。

 ――ドクゥゥゥ! ドクッ、ドクン! ビュルルン!

 脈打ちのように弾ませて、かるらの口内に白濁を打ち込んだ。
「――んっ、んんっ!?」
 事前に告知したとはいえ、それでも驚きを隠せないかるらは、しかし唇に力を込めて一滴もこぼすまいと気を遣う。喉を鳴らして飲み込んで、少しずつ腹に収めて、もうシーツを汚す心配がない量まで飲みきると、かるらはやっと口を離した。
 ねっとりと、精液と唾液の混ざった糸が、舌先と亀頭の先のあいだに長々と、数センチもかけて伸びて行き、ゆうに十センチは越えたところでやっとプツリと断ち切れた。
「わらわにそのようなものを飲ませようとはのう?」
「いやぁ、気持ちよかった。嬉しいよ? かるらちゃん」
「……まあ、そなたが喜んでおるならそれでよい。じゃが、ここまでしたからには、そなたの愛もわらわに見せてもらわねば困るのだぞ?」
「もちろんだよ。たっぷりと愛してあげるけど――」
「う、うむっ」
 愛すると答えた途端、期待に満ちた表情でかるらはごくりと息を呑む。
「お掃除フェラってわかるかな。先にそこまで済ませてね」
「仕方がないの。まあ、ゆらぎ荘の連中に負けてはおれんからのう! そなたが望むなら、どこまでも応じてみせようぞ」
 かるらは再び肉棒にお仕えして、カリ首の下に付着した白い汚れを舌で舐め取る。それはカウパーと唾液が混ざり、前後運動していた唇によってよく練られた泡立ちが、白い塊のような形で残った恥垢にも似た汚れである。
 口を拭き掃除の道具にして、ペロリペロリと清掃活動に励んでいる。
 舐め取った代わりに唾液だけが肉棒の表面に残されて、唾液だけが肉棒の皮膚に染み付いて、そのままヌラヌラとした光沢を帯びていく。
「これくらいかのう? どうじゃ? 八咫鋼よ。まだ続けるかのう?」
「いいや、そろそろ愛してあげるよ。たっぷりとねぇぇぇぇ?」
 実にいやらしく、下品な笑みを浮かべるオジサンだが、かるらの目にも耳にも、それは誠実なコガラシのものとしてしか届いていない。
 ――ああ、愛してやるよ。お前だけを、真剣にな。
 などというのはオジサンの想像だが、催眠をかけた相手の脳では、そのように変換されていてもおかしくないのだ。

     ***

 緋扇かるらは待ちわびていた。
 寝かされるままに従って、背中をゆったりとベッドシーズに沈めていき、仰向けとなって股を小さく開いてやる。しかし、恥じらいで少ししか開かない脚のあいだに八咫鋼は入れない。これから挿入を行うため、逞しい手でがっしりと脚を掴むと、かるらの姿勢は大胆なM字開脚へと帰られてしまった。
「あ、こんな……! これはなかなか……恥ずかしいものじゃのう……」
 恥じらう乙女の赤らみで、八咫鋼から視線を背けるかるらだが、そこにどんな緊張や羞恥があろうと、彼の眼差しをチラチラと見てしまう。真剣に愛そうとしてくれる表情で、すっと肉棒の先が当てられ、いよいよ秘所の入り口と亀頭が触れ合うと、かるらの胸は期待と緊張だけに満たされた。
「するからな? かるらちゃん」
「……よ、よいぞ? してくれ」
「けどな。俺はお前に一つだけ、秘密を明かさなくちゃいけないんだ」
「秘密じゃと? こんな直前まで来ていように、何をこのタイミングで明かす秘密があるのじゃ」
 もうかるらの秘密のワレメは、少しだけ押し込まれた肉槍の先端で、ずにゅりと数ミリほど入った分だけ開かれている。
 あとは貫くだけ、一つになる直前なのだ。
「それはねぇぇ? ここに八咫鋼なんていないんだよぉぉぉぉぉ?」
「……ひっ! な、なんじゃ!?」
 急に寒気が走って、かるらは表情を歪めていた。
 あれほど誠実で心身共に逞しく、真っ直ぐな瞳で愛情を捧げてくれていた八咫鋼が、急にゲスな表情を浮かべて見えた。女さえ抱ければいい、セックスをやりたいだけの下心満載の卑猥さが滲み出ていた。
(そんな! 気のせいじゃ! あの八咫鋼がそんなはずなかろう!)
 しかし、かるらの目の前で八咫鋼の顔がぼやける。まるで水の表面でかき混ぜたように視界の景色が変形して、歪みが元に戻る頃には、そこには本当に八咫鋼などいなかった。

 ――だ、誰……じゃ……?

 呆気に取られた。
 かるらの目の前にいる男は、まるで見たこともないオジサンだった。それもただの年老いた人間でなく、かるらでさえも引き攣り息を呑むほど、怪物的なおぞましさを放つ醜いにもほどのある顔立ちと、でっぷりと脂肪でたるんだ皮膚。ブタじみて太った手足。
「お、おぬしは誰じゃ! 何者じゃ!」
「僕はホームレスのオジサンでぇぇぇぇぇす!」
 こんな笑顔が世界に存在することが恐ろしいほど、狂気的に歪んだ口元から、加齢と不潔さからなる口臭が噴き出ている。
「偽者だったのじゃな……?」
「そうでぇぇぇす!」
「わらわの想いを弄んだのじゃな!」
 断じて許すまいとする目つきで、かるらはオジサンを睨みつける。
「そして、これから肉体も弄びまぁぁぁす! 処女もらいまぁぁぁぁす!」
「させるとでも思うたか! この下劣めが!」
 かるらが直ちに制裁を加え、目にもの見せてやろうと試みるのは、ほとんど当たり前の反応だった。巨大な霊力を持ち、なんならゆらぎ荘の連中を相手にしても負けない自信があるほどのかるらとあらば、そこいらの霊能者など取るに足らない存在であるはずだった。
 だが、かるらの肉体は動かなかった。
「体が!? 指一本動かぬぞ!」
 オジサンの力はそれ以上なのだ。
 ありとあらゆる霊に憑依され、数百年にも渡る童貞の怨念が染み込み続けた肉体は、対女性に特化した特殊霊力の塊なのであり、かるらがオジサンに勝てない理由は女だからというだけで十分だ。
「そうだねぇぇ? 動かないねぇぇ?」
「ふざけるでないぞ? わらわの肉体は八咫鋼に捧げるのじゃ! わらわがどれほどの想いを抱いておることか! そなたのような下賎の者が指一本触れてよいものではないのじゃ!」
「え? 触りまくってるけどぉぉぉ?」
 全てが思い通りであると示さんばかりに、オジサンはかるらの胸を揉む。生地を捏ね上げるがごときマッサージは、みるみるうちに感度を高めて、乳首でも触られた時には悲鳴が出かねないほどに甘い痺れで満たされる。
「やめぬか! このような真似っ、許されぬぞ!」
「やめまぇぇぇぇん!」
 そして、オジサンは乳首をつまんだ。
「ひやぁぁぁぁん!」
 かるらは喘いだ。
「――あっ、あん! な、何故じゃ! 何故じゃ!」
 乳房に詰まる神経という神経に、快楽を伝えるための信号が満ち溢れる。とっくの昔から硬い乳首は敏感に痺れを散らし、オジサンの指からもらった快感を乳房の生え際から胴体にまで伝えてしまう。
「んっ、うっ、ぐぅ……! や、やめぬか! やめい! やめっ、あぁぁ……!」
 もう肩でも腕でも気持ちがいい。
 肌中が敏感に成り果てて、どこにも触られたくないほどにまんべんなく疼いている。それは着衣エッチが趣味のオジサンが、ブレザーやスクールセーターも残した着衣の上から撫でたにも関わらずであった。
「さあ、僕を見るんだよ? 君の処女を奪うオジサンの顔をねぇぇぇぇ?」
「うっ、ぐぅぅぅう!」
 かるら自身の意志が拒んでも、オジサンの脳から『動け!』『こっちを向け』と念じた力が送られて来るだけで、首も視線も思い通りの角度に操作されてしまう。
(これまでじゃというのか! こんな男に奪われようというのか!)
 かるらは無念にかられていた。
 秘所の部分はとっくに挿入準備が済まされて、あとはオジサンが腰を前方向に動かすだけのことで済んでしまう。
「さあ、入っていくよ? レッツ挿入ぅぅぅぅぅ!」
 侵攻が始まった。
 膣壁の窄まりを押し広げ、肉槍の先端が奥地へ向かって進んでいる。一思いに貫けば一瞬で済むだろうに、それをわざわざ何秒も何秒も、ともすれば根元が収まるまで一分以上かけても構わない勢いで、ゆっくりと入れているのだ。
「よさぬか――あっ、くぅぅ! なんという屈辱じゃ……!」
 嫌だ嫌だと言わんばかりに、何としても脱出したい必死な思いをいっぱいにして、本当なら激しく髪を振り乱していたことだろう。もっと抵抗じみた動きを見せ、じたばたと手足を暴れさせもしたはずだった。
 しかし、M字の脚を変えることさえ、かるらの意志ではできないのだ。
 嫌じゃ! 嫌じゃ! 嫌じゃ!
 そんなかるらの想いを無視して、肉竿の既に半分ほどが膣に埋まってしまっている。もう処女などとっくに破られ、あとは根元まで収めるだけだ。
「よくわかんないけどぁぁぁ? かるらちゃんって、なんか格式が高い存在でしょぉぉ?」
「よくわからぬじゃと!?」
「うん。だって僕そういう霊とか妖怪とか疎いしぃぃぃ?」
「馬鹿な! そのような者が、その程度の者が、わらわを動けぬようにしておるのか!」
「はぁぁぁい! そうでぇぇぇぇす!」
 やがて、やっとのことで肉棒の長さが届く際奥まで到着した。
「なんということじゃ! なんということなのじゃ! わらわが、わらわが!」
 泣いても笑っても、この汚く醜いオジサンの肉棒が根元まで入った事実は、もう変えようがないものとなってしまった。
「そーれ! それっ、それっ、ピストン運動の始まりだよぉぉぉ?」
 オジサンが腰を動かす。
「あぁ……! あっ、やめい……! やめぬかっ、あぁぁ……! んぬぁぁ!」
 楽しくてたまらない元気な腰の運動が、大胆なストロークとなってかるらを貫く。催眠の力が神経にまで作用して、初めてだろうと喘ぐかるらは、自分を犯す男の顔をよく見ることを強制されたまま、感じる顔をオジサンに晒していた。
「あぁっ、あん! はぁん!」
「嬉しいでしょぉぉぉ? お望み通りにたっぷりねっとり愛してあげてるんだからさぁぁ?」
(あっ、くぁっ、なんと無力なのじゃ……!)
 秒刻みで慣らされていく膣口は、もはや電流など通り越し、途方もない快楽の雷となって脳髄さえも打ち抜いている。
(こんなの! どう耐えればよいのかもわからぬ!)
 おまけに乳愛撫まで再開されては、かるらの身体は頭の上からつま先まで、隅から隅にかけての神経全てが、甘く激しい快感によって解かされる。全身がおかしくなっている。もやは突かれれば喘ぐ人形に成り果てているしかない。
「気持ちいいねぇぇぇ? 八咫鋼のオチンチンじゃないのに気持ちいいねぇぇぇ?」
(嫌じゃ! このような者でわらわがこうも乱れているなど! 認められぬわ!)
「すごくいい鳴き声だよ? ははっ、楽器みたいだねぇぇ?」
(何が楽器じゃ! 冗談じゃないわい! ああっ! 八咫鋼ぇ……! わらわを……わらわを救いに来て欲しいぃぃ!)
「ほーらほらほら! イカせてあげるよ!」
「んぁぁ! あいぃ……イクなどぉぉ……! おっ、おあぁぁ!」
 かるらの秘所には何かが集まっていた。見えない何かが、何かとしか言いようのない、言い知れないものが全身を巡って一箇所へと集合する。いつしか見えない風船が膨らみすぎて、破裂するのではないかという予感にかられていた。
「イクよぉぉ? イクねぇぇ? もうイクところだねぇぇ?」
「あぁぁぁぁ! やめっ、やめぬか! おかしくなる! わらわはおかしくなるぅぅ!」
「だーめっ」
 オジサンは最後の一突きとばかりに、ぐいっと貫きトドメを刺す。

「――あぁっ! あぁぁぁあああああああ!」

 それは絶頂だった。
 頭の中から思考が弾け、八咫鋼への想いやオジサンに対して抱いた屈辱も、ありとあらゆるものが吹き飛んで、かるらの脳は純白に染まっていく。
 そして、まるで乾いた地面に少しずつ水が染み出てくるように、だんだんと思考が戻ってくると、次にかるらの心を襲うのは自覚であった。
 
 わらわはこのような者にイカされたのか……。
 初めても奪われてしもうたのか。
 嗚呼、この胸と唇で奉仕に励んだことさえも、この下賎の者を悦ばせていたのじゃ。

 自分がどうなったのか。
 今までどうしてしまっていたのか。
 穢れてしまった事実の自覚。

 ゆ、許さぬ……。
 この因縁、決して浅くはないぞ。




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