催眠おじさん 雨野狭霧


目次に戻る

 雨野狭霧は催眠オジサンの所業について察知していた。
 きっかけは冬空コガラシの言葉から、このところ幽奈が何度か、ついさっきまでの自分の行動記憶を失くして帰ってくると聞いてのことだ。狭霧としても気にかかり、コガラシのクラスに注意を向けていたところ――宮崎千紗希が何らかの術を受けていた。
 あろうことか教室の真ん中でフェラチオをさせている。
 思わず顔を覆いたくなるほど、視界に入れることさえ辛いほど、あまりにも醜い顔立ちの中年相手に、千紗希が性的奉仕をするなどありえない。
「貴様ァァァァァァァァァ!」
 誅魔忍として、すぐさまクナイを片手に制裁を下そうとしたのは言うまでもない。
 その結果は……

 ――れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……
 ――ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ……

 千紗希を助けるはずだった狭霧は、一緒になってオジサンの肉棒を舐め上げていた。
「ダブルフェラぁぁぁぁサイコぉぉぉぉぉおおお」
 教室で堂々とだ。
 放課後の時間は迎えているが、まだいくらかの生徒がお喋りか何かで居残り、コガラシや幽奈もそこにいる。しかし、誰も気にも留めていない。まるで存在ごと無視するように、それぞれのお喋りに興じている。
「おかしいな、幽奈。今、そこで狭霧の声がしなかったか?」
「そうですねー。コガラシさん。わたしも聞いたと思ったんですが……」
「二人揃って気のせいか?」
 幽奈とコガラシの目にも、この光景は映ってすらいない。
 オジサンの持つ能力が、自分達の存在を認識させないようにしたからだ。
「狭霧ちゃんっていうんだぁぁぁぁ?」
「……はい」
「可愛いねぇぇぇ? フルネーム教えてぇぇぇぇ?」
「……雨野狭霧です」
 虚ろな眼差しでいる狭霧からは、一時的に意識を剥奪している。ただの人形のように受け答えに応じて、言われた指示に淡々と従うだけの存在だ。
「コガラシくんてさぁぁ? 霊力強いじゃん? こうして認識されないことはできるんだけどさあああ? 万が一? 殴られたら、嫌だぁぁぁぁって」
「……はい」
「ま、今は狭霧ちゃんも舐め舐めしてよ。丁寧にね」
「……はい」
 このオジサンはたった今まで、千紗希一人にフェラチオをやらせていた。
 狭霧が加わることで、二人の舌が肉竿の両サイドにぴたりと触れ、根元から先端にかけて舐め上げる。千紗希の舌が亀頭の先まで到達すると、入れ替わるように根元へ戻り、今度は狭霧の顔が上に来る。
「つーか。宮崎のやつが見当たんねー」
「千紗希さんとは筆談の約束があるんですが……」
「トイレにでも行っちまったのか?」
 面白い光景だった。
 二人の美少女の顔が二つとも、自分のペニスに群がっている。交互に舐め上げ、肉棒を味わい続けているというのに、幽奈もコガラシも、すぐそこにある光景を見向きもせず、ここにいる千紗希のことを待ち侘びていた。
 そして、まるで口紅を塗りたくるようにして、自分達の唇をカウパーで汚し始めた。
 まずは千紗希から、握った肉棒を左右に動かし、閉じ合わさった唇の狭間に沿わせて先走り汁を伸ばしている。
 狭霧も同じく、千紗希の唾液で濡れた亀頭を自らの唇に押し付ける。
 続いて交互にキスをした。
「ちゅっ」「ちゅっ」「ちゅっ」「ちゅっ」「ちゅっ」「ちゅっ」
 亀頭の口へと、自分の唇を数秒間は触れ合わせ、時間が経つと隣と代わり、握っていた手も持ち帰る。
「ではそろそろ千紗希ちゃんは解放してさしあげよう」
 ただそう念じただけで、オジサンは千紗希を思い通りに操作して、奥まで咥える丹念なフェラチオに戻させた。
「――じゅっ! じゅずぅぅっ、ぷっ、じゅぷっ、んむっ、ちゅぷぅぅぅ」
 活発な頭の前後が、肉棒を生温かい刺激で満たしていく。
「うんうん。いいよ? 気持ち良いよ?」
「ちゅっ、ちゅぷっ、はぶぅぅ……むじゅぅ……」
 根元から先端にかけて、発熱して燃え上がるほどの感覚が、やがて射精欲求をこみ上げオジサンは達していた。

 ――じゅ! どぴゅん! どくぅっ、びゅるん!

 肉棒が弾むたび、首で仰け反るかのように頭をピクっと動かす千紗希は、リング状の唇に圧力を加えて、一滴たりとも零さずに精液を受け入れた。
「ちゅぅぅぅぅぅぅぅ……」
 と、吸いながら頭を引き、白濁を口に含めた千紗希は、大きな喉の音を鳴らして飲み込んだ。
「行っていいよ?」
「……はい」
「君はトイレに行っていた。いいね?」
「……はい」
 催眠から解放すると、まるで何事もなかったように千紗希は、コガラシと幽奈の二人へと、小走りで駆け寄っては明るく話しかけていた。
「おう、宮崎」
「ごめんね。待たせちゃって」
「なに、用事でもあったんだろ? 早く幽奈と話そうぜ」
「うん!」
 フェラチオ上がりの女の子が、あまりにも平然と友達と話している。もしも都合よく記憶を消していなければ、トイレに行っていた設定でも刷り込まなければ、決してこんな光景にはならないだろう。
 その一方で、狭霧にはフェラチオを続行させた。
「はむぅぅぅぅぅ……」
 両手に根元を包み込み、残り半分の竿を全て飲み込む。
「そうだ。この状態で意識を元に戻してみるかなぁぁぁぁ?」
 そして――。

     ***

 そして、雨野狭霧は驚愕した。
「――んっ! んむっ、じゅるぅぅっ」
 パッと目を覚ましたら、既に口内には肉棒が押し込まれ、それどころか自分から積極的に頭を前後させてすらいる。
 すぐに狭霧は思い出した。
 確か教室の中で堂々と、千紗希にフェラチオをさせているオジサンがいて、狭霧は反射的に制裁を加えようとしたはずだった。途端に意識が途切れ、まるでスイッチを戻したように一瞬の切り替えで目覚めると、このような状況に陥っていたことになる。
(くっ! 何故だ! どうなっている!?)
 自ら舌を蠢かせ、肉棒の皮膚を味わってしまっている。
 当然、頭を後ろへ引いて吐き出すなり、噛み付くことさえ考えるが、そうしようと思っても実行できない。どんなにそうする意思を働かせても、狭霧の思考を無視した肉体は、さも美味しそうに貪って、ヨダレの音まで鳴らしていた。
「んじゅ……ちゅく……んじゅるぅ……じゅぶ……んんっ…………」
 あまりにも惨めだった。
「狭霧ちゃん。君って忍者なんだねぇぇぇ?」
(そうだ。私は誅魔忍として……)
「オジサンに負けちゃった負け犬だから、情けなくおしゃぶりしているんだよぉぉぉ?」
(こいつ……!)
 聞くだけで鼓膜が腐り落ちていくような、しわがれた猫なで声の気色悪さに顔を顰めて、狭霧はさらに全身総毛立った。
 なんと醜いオジサンだろう。
 ただ顔を見ただけで、表情を一変させ、拒否反応を表に出さずにはいられない。脂質の汚らしい髪を生やして、顔の肌には吹き出物が広がっている。ふっくらと垂れ落ちた頬の表面も、ニキビだらけの凹凸にまみれ、顔中いたるところに汁が吹き出て、皮膚全体が粘液じみた光沢を帯びている。
 首のあたりには、溜まった垢が固形化して皮膚に浮き出たらしきものが見受けられる。脂っこい肌は体中べったりしており、五十歳を越える加齢と汗の香りの混じった嫌過ぎる体臭が狭霧の鼻腔を貫いていた。
(わ、私は!? こんな顔の男に!?)
 ぞわぁぁぁぁぁっ、と。
 鳥肌が広がっていた。
 これほど醜悪で、臭いもする男の一物など、果たしてゴキブリを食べるのとどちらがマシかと本気で悩む。神経に腐敗物質が入り込み、全身が汚染されていくような気持ちを味わうなど、女の子には拷問的すぎる体験だった。
(しかも、教室ではないか!)
 残っている限りの生徒は全て、狭霧やオジサンのことなど気にも留めない。すぐそこにいる幽奈もコガラシも、それから千紗希も、狭霧など存在しないように振舞っていた。
(ま、まさか幻術の類!? あるいは催眠? こいつの能力ということか!)
 自分がオジサンに奉仕をしている理由はわかった。
 だから自分の意思では肉体が動かず、したくもないフェラチオなんてしているのだ。
(なんて無念なんだ……!)
 ただの性処理道具として扱われる屈辱は途方もない。
 肉体操作の主導権はオジサンにある。
 唇に加える力も、舌の動かし方でさえ、オジサンの思う通りとなり、素人でありながらテクニシャンと同等の口技を披露している。
(くそぉ! くそぉ……!)
 悔しさで頭がどうにかなりそうだ。

 ――ドクゥゥッ! ドクッ、ビュルゥン!

 口内に白濁を注がれるのは、泥水を飲まされるよりもなお辛い。こうして人としての尊厳を奪われている気持ちでしかなく、それが胃袋に流れ落ちた時には、もはや汚染物質でこれから体内から腐敗が広がるかと思うほどのおぞましさに震えていた。

     ***

 放課後、保健室。
「さあ、オジサンとセックスしようか」
「ふ、ふざけるな! このいかがやしい術を解け!」
 引き続き狭霧で楽しむことに決めたオジサンは、保健室のベッドを借りて、催眠操作で全裸となってもらっていた。
「駄目だよ? 狭霧ちゃんの処女はもうオジサンのものだ」
「誰が貴様などに! くっ、動け! 動け私の体!」
 まるで命の危機であるように、必死に抵抗したがる狭霧だが、狭霧自身の意思では一ミリたりとも動けない。オジサンの力でM字開脚を強要され、ポーズだけを見るならば、むしろ挿入を待ちわびてやまないように愛液まで漏らしていた。
「ほーら、早く動いてごらん? 逃げてごらん? そうしないとぉぉぉ?」
 わざとらしく脱いでみせ、皮下脂肪でたるんだ醜い肌を曝け出す。極限まで勃起している肉棒を見せびらかし、それを見た狭霧の顔はますます歪む。最後まで動こうとする必死の努力をするものの、動けるはずもなく亀頭が性器の割れ目に触れていた。
「やめろ! こんなことをしてタダで済むとでも――」
「はい。挿入ぅぅぅぅ!」
 にんまりと笑うオジサンは、呆気ないまでに処女を奪った。
「そんな……入って……!」
「気持ちいいおマンコだねぇ? 処女卒業おめでとう!」
 お祝いとばかりの表情で、オジサンはせっせと腰を振り、幅の狭い穴の圧力をじっくりと味わい尽くす。
「……ん! んぅっ、くっ、んぁぁっ!」
「いいねぇ? いいねぇ? 気持ちいいねぇぇ?」
 ゾッとするほど醜い笑顔が、狭霧の顔を覗き込む。
(こんな奴に私は……!)
 醜悪な顔立ちにまじまじと見られるほど、自分がいかに下劣な男に犯されているのかと実感させられる。
「ぬっ、くぅ……! んっ、んんっ! んぅ……!」
 狭霧に出来るせめてもの抵抗は、決して心までは奪われていないと示すため、じっとにらみ返していることと、卑猥な喘ぎ声は出さないように歯を食い縛ることくらいだ。
「へぇぇぇぇ?」
 それはそれで、オジサンは狭霧の表情を楽しんだ。
 玩具で遊ぶような気持ちで突き込んで、どこをどう突けば狭霧の顔色が変わるのか。どういう声が出るのかと、さぞかし楽しく腰を振っているのがよくわかる。
「んっ、ぬぅっ、ぬぁぁ……!」
「気持ちいいねぇ? 気持ちいいねぇ?」
(ふざけるな! 貴様などで感じるものか! 気持ちいいものか!)
 否定的なことを叫ぶのは、むしろ大いに感じている証拠である。
 出入りする肉棒が、甘く激しい電流を走らせるたび、こんな男ごときにと悔やむ狭霧は、頑として耐え抜こうとしているのだ。
「にゅふふふ! イカせてあげるよ」
 オジサンはねちっこく狭霧を貫いた。

 ずるぅぅぅぅぅぅぅぅ……

 スローモーションのように腰を引き、だんだん引き抜いていく肉棒が、膣に亀頭の先だけを埋めた状態にまでなったとき、

 ――ずぷっ!

 一瞬にして奥まで押し込む。

「――ぅあん!」

 そして、狭霧は大きく仰け反る。

「にゅふふふふっ、いいねいいね。気持ちいいねぇ?」
「あぁ……! やめっ、あぁ……!」
「ぐひひひっ! えっひひひひ!」

 楽しげなオジサン。
 感じまいとしながら喘ぐ狭霧。

 やがて――

「あぁぁああああぁあああ!」

 狭霧は絶頂しているのだった。




目次に戻る

inserted by FC2 system