幽奈さんの自主特訓


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「いやぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!」


 ……今日もやってしまった。


 ゆらぎ荘の湯ノ花幽奈は、とてもとても寝相が悪い。気がついたら同室の冬空コガラシに絡み付いてしまっていて、気が動転するとポルターガイストを起こしてしまう。
 毎朝、日常的にコガラシのことを部屋の外へと飛ばしているのだ。
 どうすれば、迷惑をかけずに済むだろう。
 そうだ。慣れるしかない。
 真夜中の幽奈は、コガラシの浴衣寝巻きに手を伸ばし、はだけた胸板に手を触れた。

(す、すごく逞しいですねっ)

 こうしてみると、二の腕も太くて、腹筋も割れている。強い男の体にだんだん顔が赤らんできた幽奈は、恐る恐る撫でていた手を咄嗟に離した。

(はわわっ! まずかった! たぶんもう少しでまた――)

 でも、それでは慣れる訓練にならない。
 もう少しだけ頑張らなければ!

(いつも、その……。色んなところにコガラシさんの手が当たるから……)

 幽奈は丸裸になり、豊満な乳房をコガラシの胸板に押し付ける。

 ――かぁぁぁぁ!

 と、さらに赤らんだ。

(むむっ、胸にコガラシさんの体温が!)

 それだけじゃない。

 ――ぐにぃっ、

 すっかり寝付いたコガラシだけど、その手が急にお尻を掴んでいた。

(どうしよう――!)

 このままでは!
 大変だ。せっかく熟眠しているコガラシをポルターガイストで起こしてしまう。

(我慢! 我慢です!)

 一生懸命耐え忍ぶ。
 脱出しようとするけれど、すぐにコガラシが寝返りを打つせいで、幽奈はその下敷きにされてしまった。

(――どうしよおおおお!)

 慌てふためく幽奈は、だけどコガラシの下から脱出できない。
「んーむにゃむにゃ……」
 どんな夢を見ているのか。
 気持ち良さそうな寝顔が、幽奈の顔のすぐ横から、耳の穴に寝息を吐き出す。

(ひやぁぁ! こ、このままでは……!)

 みるみるうちに頭が真っ白になっていき――。
 踏み止まる!
(駄目です! ちゃんと慣れなくちゃ!)

 必ず脱出できるタイミングがあるはずだ。
 それまで我慢!
 しかし、アソコに手を伸ばされては、ますます耐え切るのが大変だ。

(コガラシさん! そ、そこは……!)

 幽奈の縦筋が、指先によって撫でられた。

(ひゃああああ!)
 
 幽霊であれ、コガラシほどの霊能者に手にかかれば、愛撫によって濡れてしまう。霊的な刺激が、どんどん甘い痺れを呼び起こし、布団に愛液の染みを広げていた。

(お、お願い! コガラシさん! 早く寝返りを……!)

 やっとのことで、コガラシの背中が向こうを向く。
 今だ! 脱出!

「ふぅ、助かりました」

 一安心した翌朝だ。

「な、何だこれ!? まさか俺がこの歳にもなって!?」
 まずいことに、コガラシは自分が漏らしたものと勘違いだ。
「違います! それはコガラシさんじゃなくて――」
 さすがに否定しないわけにはいかなくて……。
「それじゃあ一体……」
 当然、だったら何故布団が触れているのか疑問になり、コガラシの目は自然と幽奈の方へ向けられる。
 何だかもう、バレているような心地がして――。

「いやぁぁぁぁ!」
「なぜだー!?」

 結局、コガラシを飛ばしてしまった。




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