フィリアの奉仕


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 騎士団就任の日。
 国家への忠誠心を証明する儀式に呼ばれ、騎士フィリアは神聖なる王座へと足を進めていく。
 フィリアは妖艶だった。
 白銀の長い髪は、まるで一本一本に輝きをまぶしたように、歩むリズムで揺り動くたび、煌きが散らされている。
 肩章を掲げた騎士装束に身を包み、スカートから眩しい太ももを曝け出すのは、それが指定の服装であり、城内の規則として着用が義務付けられるからである。運動に適さない格好など戦闘上好ましくないのだが、男の思う服を着せるところが、ある意味では女騎士の扱いを象徴している。
 王のほとんど目の前まで辿り付くと、フィリアは膝をついた。
「このフィリア――これより国家に身を属する騎士として、その覚悟と忠誠心をここに表明致しましょう」
 そして、王のズボンに手を伸ばした。
 忠誠の儀と呼ばれる昔からの風習だ。
 剣に命を捧げて育った女が、男根への奉仕によって魂の証明を行うのは、遡れば伝説の女騎士が残した逸話にまで遡る。
 今よりもっと女性の権利が低かった時代において、より多くの女性の身を憂い、権利の向上を求めるとき、ならば覚悟を示されよと、王は女騎士に奉仕を要求した。我が身と引き換えに大勢の女性の権利が高まると考えた彼女は、まだキスもしたことのなかった唇で男根を慰め、いつしか子まで宿したという。
 確かに女性市民の権利は向上して、女の発言力が当時と比べて随分高いが、一度法制化されてしまった儀式については、そんな今でも撤廃されていない。
 それでも、フィリアは騎士を目指してきた。
 この世界は絶えず侵略者に脅かされている。
 幼い頃、自分の住む区画に攻め込んだ魔物に殺されかけ、急な出現に対して辛うじて出動を間に合わせた女騎士が、身を挺して五歳だったフィリアを救った。あの時の騎士は生きているのか死んでいるのか。
 いずれにせよ、戦慄と共に痛感した。
 自分達の平和は誰かの血によって成り立っているのだと……。
 死に掛けて、守られて、騎士の流血を目の前で見てしまった体験は、世界の平和や安全について大いに考えるきっかけとなり、やがて騎士など目指すようになっていた。その途中で伝統の儀式とやらについて知っても、それ以上に平和に貢献したい気持ちが強かった。
 修行は苦しかった。
 基礎体力をつける走り込みでは半日以上走り続けて、もう脚が壊れて二度と動かないような気がするほどに筋肉を痛めつけることを繰り返し、剣術を習うより先に格闘術の訓練もさせられた。剣がなければ何もできないのでは話にならず、そもそも剣とは手の延長と考えられ、格闘能力を身につけた土台の上に剣を生やしていくイメージだ。
 生死の危険に関わる訓練は幾つもあった。魔物とも戦わされた。
 その果てにあるものが肉棒なのかと思うと、フィリアには自分の気持ちを言葉にできない。
 ズボンの中から取り出すと、立派なまでの剛直が目を引いた。
「ではそなたの奉仕を見せるがよい」
 重々しい王の言葉が耳に染み込む。
 一物は一物でも、それは王の肉棒だ。
 騎士団の維持に経費をかけ、装備を整える物品経路や訓練場に、高級な宿舎といったものまで揃える王政は、そんな国防政策によってある意味では人々を守っている一人である。最高権力者から生えた棒だと思うと、どことなく権威の象徴にも見えてきた。
「このフィリアの心意気。どうかお受け取りください」
 顔を近づけた分だけ、血管の浮き出た太さが視界を占め、ムラムラとした淫気が漂い、蒸れた蒸気の塊が顔を包んでくるかのような心地がした。
 相手は王だ。
 圧倒的な身分の違いからして、こうして膝をつくのは礼儀として当然にしても、これら行う奉仕を思うと、一体どれほど深い忠誠が求められるものなのかと、今一度考えさせられる。
 とにかく触ろう。
 天に向かってそそり立つ肉棒に指を触れ、そっと舌を伸ばしたフィリアは、竿と袋のおよそ境目あたりに当てていた。
 竿の熱気が顔にぶつかる。

 れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――。

 と、舐め上げていきながら、首の角度をだんだん上げると、フィリアを見下ろす王の威厳ある顔立ちが目に入った。
 沸騰のごとき勢いで胸に沸き立つ感情は、さしずめ従属感とでも言うべき、自分が権力に跪いていることへの実感だった。
 フィリアにはもっと、平和への願いや騎士としての使命感があるはずだった。
 これはそのための儀式であり、どんな形にせよ忠誠を誓うための場なのだと、騎士たる魂を王に認めて頂くための神聖な執り行いだと心得ていた。そういう試練の一部と捉え、あえて性奉仕を求めることで、心を試されているのだと考えていた。
 そんな数々の考えが消し飛ぶほど、フィリアには肉棒の刺激が強かった。
 まして、キスだってしたことのない唇だ。
 口奉仕のために教わったのは、歯を立てたり、噛んではならないことだけで、具体的な舌使いだとかいったことは何も知らない。
 だから、まずは舐め続けた。
 下から上への繰り返しが、直線状に唾液を馴染ませ、亀頭に滲むカウパーに気づいてからは鈴口をよく舐めた。
 もしも権威に味があったら、これなのだろうか。
 王は上からフィリアを見て、フィリアは下から王を見上げる。文字通りの目上に対する奉仕に励んでいると、広がりゆく従属感が、もう足の先にも染み渡っている心地がした。舐めれば舐めるだけ、全身がそれで満たされている感覚が確かにあった。

 私は王に従う騎士。
 これしきのこと――。

 いつまでもペロペロと、舌先ばかりで動いていると、亀頭の約半分だけが唾液に濡れ、竿の根元に染みた部分はやや乾き始めていた。
 まだ王のお許しは出ない。
 お許しが出るまで続けるのが、この儀式の作法である。
 だからとて、何をどうしたら男は嬉しいものなのか。荘厳なる顔つきのまま表情を変えない王の顔色など伺っても、自分がどれほど王を喜ばせているわけか。まるでわからないフィリアとしては、わからないなりに続けているしかできなかった。
 また根元から亀頭にかけ、下から上への舐め上げに励んでみる。

 れろぉぉぉぉ――ねろぉぉぉぉぉぉ――。

 ぎこちなく、たどたどしかったフィリアの動きは、慣れるにつれて少しは活発になっていき、やがては竿の裏面にべったりと、まんべんなく唾液のぬかるみが染み込んでいた。
 そして、鈴口を唇で包み込む。
「――ちゅっ、チュチュ、ちゅぅっ、ちゅぶぅっ」
 そこから飲料でも吸い上げたいかのように、先走りの汁を口内に迎え入れ、唾液とカウパーの見分けがつかないまでに亀頭を濡らす。
 もわっとして、蒸れっぽくもある熱い淫気が、心なしか増しているような気がした。
 はち切れそうなほどの怒張から、血管がより濃く浮き出て、一層のこと立派に硬く天を貫く姿勢である。まるで肉棒の存在そのものが、フィリアに対して奉仕を命じているかのようで、ついには亀頭の赤みを飲み込んだ。
 ぷっくりとした唇の輪で、締め付けているのはカリ首の部分である。鈴口とのキスになるまで頭を引いて、それから前に押し出す前後運動は、柔らかに閉じ合わさった唇の合わせ目に、絶えず亀頭を出入りさせていた。
 少しでも唇が離れると、透明な糸が引く。
 咥え直して、また亀頭を出入りさせ、糸を引かせては鈴口にキスをする。繰り返しているうちに竿まで咥えるようになり、そのうちに肉棒の半分までを口に収めていた。
「んじゅぅ……ちゅっ、ぬじゅるぅぅ――――」
 牡の香りっぽさが、口内にまんべんなく満ちている。
 こうしていると、占領によって自分の口内領地を王に取られているような、王と自分が勝者と敗者に分かれてしまった気持ちが沸いてきた――無論、フィリアが敗者側だ。
 身分の違い、立場の差。
 あらゆるものを文字通りに味わっていた。
 大きく口を開けていなければならない顎の負担も、口呼吸が出来ないので鼻で息をしていることも、太さのあまり意識せずとも下が竿に張り付くのも、全てが王に自分を征服されていることの一部な気がしていた。
「もっと顔をよく見せるがよい」
 王の言葉に従うフィリアは、上下に動かしていた顔の角度を上向きにして、肉棒の収まったままの表情を謙譲した。
「ふむ」
 威厳ある王は、実に満足げな顔をして、フィリアの顔をよく眺めた。
 顔面に視線を浴びるフィリアは、ただひたすらに大事なものを差し出す気持ちで、肉棒入りのこの顔を王の視界に与えていた。
 どんな面白い気持ちでいることだろう。
 咥えたままの顔立ちは、いやらしいと映るのか、間抜けと見えるか。どうなのかはわからないが、王が視覚的にもフィリアを楽しんでいることだけは間違いない。そう考えるだけでも皮膚が疼いて泡立つ感じがする。それはまるで、顔の皮膚さえ王の領地に変えられているようだとフィリア感じた。
 フィリアにある従属感とは正反対の感情が、王の中には沸いているはず。
 そうやって、上下関係が構築される。
 これが、儀式。
 自分は配下。王に仕える従者であり、その忠誠心を示すからには、肉体を差し出せと言われれば黙って抱かれる。奉仕を求められれば奉仕する。女騎士の身分に課せられた雑務というのもおかしいが、そんな気がしてきていた。
 忠義の証明方法が、もうこんなことであっても構わない。
 騎士として戦場に赴き、人々を守れるのなら……。

 ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ……。

 溢れ続けるカウパーを舌に舐め取り、そうしている顔も王に捧げた。口付けのごとく先端に唇をそっと当てている顔も、根元から先端まで舐め上げる顔も、咥えて前後に動くのも、何もかも王に捧げた。
「……出すぞ。飲め」
 重々しい命令にフィリアは従う。
 今に来る射精に向け、その精を解き放って頂くために顔を振り、肉棒の脈打つ予兆を感じ取たフィリアは、ここぞとばかりに唇に力を込めた。ぴったりと隙間を閉じて、一滴たりともこぼさないために死力を尽くした。
 
 ――ドクン!

 まず一射が、喉奥に弾のような塊をぶつけた。
 すぐにヒクヒクと、脈打ちを繰り返すごとに――。

 ――ドクッ、ビュル、ドピュン!

 一つ一つの射撃が口内のどこかに命中して、上顎や頬の内側を流れ落ちては、舌の上に溜め込まれる。
 ここで口を開けば、フィリアの下顎は白い水溜りになっているはずだ。
 そして、その白濁に舌がどこまでか浸されているはずだった。
 射精が止まったと見たフィリアは、こぼさないように気をつけながら頭を引き、唇の中に全てを閉じ込めた。
 喉を鳴らして、飲み干した。
 飲み下す瞬間の表情も、きっと王に謙譲せねばならない一つとして、フィリアは顔の角度を上向きにしていた。
 感覚でわかった。
 喉の内側に、食道の壁にこびりついているものが、下へ下へと流れて、腹の内側を目指している。これが胃袋で消化され、フィリアの全身に行き渡るのだ。
「大儀であったぞ」
「お褒めに預かり、光栄にございます」
「うむ。今日は下がってよい」
「はっ、それでは――」
 いずれまた、申しつけを受けるのだろう。
 果たして、それはセックスか。それとも別の奉仕になるか。
 フィリアは今、国家の所有物となったのだ。
 その真実をよくよく実感して、フィリアは王の間を後にした。




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