とある保健の性教育


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 私の学校では、コンドームの付け方を教えている。
 教室を男女別々にされ、女子生徒だけになったクラスに、ゴムと模型が配られる。性交時における感染症の危険性や、避妊の大切さを説いた教師が、生徒に実際に付け方を経験させようとしてくるのだ。
 国とか、地方によっては、実際にこういう授業があるらしい。
 初めて聞いた時は、正直「えっ!?」って思ったけど、先進国でこういう授業がないのは日本くらい、とか。避妊の実践は身を守るために大切、とか。こういうことを覚えておくのは大事だという、理論的なことを説かれると、もうしょうがない。
 元々、授業なんだし。
 びっくりはするし、なんか戸惑うけど。
 必死に拒むほどではない気がした。
 先生は何故か男の人だったけれど、真面目な顔で、ちょっと厳しい声色で、静かな雰囲気を作ってくれた。おかげで、そこまで恥ずかしいとは感じない。
 大抵の子達は、指示された付け方を黙々とこなしていた。
 私も、静かに授業を受けた。
 ただ、少しだけ恥ずかしいと思ったのは、配られた男性器の模型が妙にリアルだったことだ。
 硬くて、肉感があって、亀頭の部分は少しプニプニ。本物を触ったことはないけれど、きっとこれくらい、筋肉を硬くした肌触りなのだろうなと、想像させられる。
 見て、触っているだけで、実物が頭によぎる。
 いや、これはもう人間の皮膚を触っている感覚だ。本物のペニスを可能な限り再現して、このためだけに作った模型に違いなかった。
 こんなものに触るなんて……。
 まだ未経験なのに、最悪だな、と。
 そこまで深刻にではないにせよ、多少は思う。
 そんなリアルなペニス模型を机に立てて、先生に習った通りの方法でコンドームを装着する。先端にある精液袋を摘み、中に空気が入らないように気をつけながら、被せていく。
 こうしていると、想像しちゃう。
 これを装着完了したら、いよいよアレが自分の中に入るのだなと、セックスが頭をよぎる。
 挿入してもらうための準備を、私自身がやってるんだ。
 そう思うと、なんだかドキドキするというか。
 でも、怖くもあるような。
 だって、これって、自分を撃つための銃に弾を込めて、射撃の準備をしてあげているみたいな。やられるための準備を自分からするって、なんだかなー。みたいな。
 まあ、所詮は模型だし。
 単なる授業だし。
 銃なんかに例えるほど、そこまでは怖くないけど。
 少しくらいは、やられる想像がよぎっちゃう。
 それが恥ずかしくて、だからこそ私は真面目だった。
 下手に赤らんでみせたり、笑ったり、嫌がったり。そんなことをしたら、それこそ少しでもセックスを想像したことがバレそうで、誤魔化すために真剣に授業を受けた。
 触ることも、頭の中身がバレることも、どっちも少しずつ恥ずかしくて、ドキドキした。
 先生、こんなことをしている私達を見て、妄想したりとかしてないよね?
 っていう不安もよぎった。

 さて、装着完了。

 ゴムを被せたペニス模型を机に転がし、私はそれに指一本触れることなく、一人でチラチラ眺めていた。
 これがアソコに、出入りするのだ。
 恥ずかしいけど、全く無関心かといえばそうでもなくて、実は少しくらい愛されることに興味がある。イケナイ部分を触らせてあげてもいいくらい、私の心の扉を解放してくる、それだけの愛を捧げてくる彼氏がいたらなーって。
 なんだか、むしろ、エッチな想像とは限らない。
 考えれば考えるほど、だんだんと、好きな男子に口説かれる妄想になってきちゃう。
 しかし、ね。
 たぶん、私一人だったら触りまくっていたと思う。
 指でツンツンつついたり、握ってみたり。子供が人形で遊ぶみたいな感じで、弄ってみたかったかなーって。
 好きな男子に口説かれる妄想をして、頭の中で付き合った時間を半年くらい進めてみる。そして、それから、相手のために手でシてあげる想像をしながら、間違いなく握った手を上下に動かすことを試したと思う。
 うん。一人だったら、ね。
 絶対、試した。
 でも、まさかね。
 教室なんかじゃ、できっこない。
 友達の目は気になるし、先生だって生徒の様子をじーっと見てるし。
 だから、触りたくても触れない。
 そんなもどかしい気持ちを抱いたまま、結局は最後までそんなことできずに授業は終わった。
 生徒達の席を見回りにくる先生に、出来をチェックしてもらって、それから回収。
 好きに弄りまくる時間なんてあるわけなくて、ちょっぴり残念な気持ちを抱きながら、授業は終わったのだ。
 そうです。
 頭の中の彼氏のために、手ぐらい使ってあげたかった。
 こんな私の想像がバレでもしたら、きっと私は死んでしまう。
 そういう恥ずかしさ、というか。
 先生、人の頭の中なんか覗かないよね?
 っていう、不安がずーっとあって、授業が終了してから、ようやく安心できたのだ。
 





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