第13話「直腸検温」


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 文香はそしてカーテンに囲まれたベッドの上で四つん這いとなり、宮崎と養護教諭の二人にお尻を向けていた。すぐにスカートが捲り上げられ、今日の下着を見られてしまう。純白無地の白い布に覆われた尻肉を観察された。
「準備はいいね?」
「は、はい」
 養護教諭の優しい声に文香は答える。
 週に一度の検査項目として、直腸検温が実施されるのだ。普通は脇の下で測れば十分だが、より正確な体温を知るには肛門に体温計を挿入しなくてはならないという。年代ごとの平均的な体温データを収集するため、これから文香のお尻に体温計が入るのだ。
「じゃあ、下ろすよ?」
 白いパンツをするりと剥かれ、美白の尻肌が曝け出される。生尻だけではない。尻を高くしたこの姿勢では割れ目の中身が丸見えとなり、既に肛門まで剥き出しなのだ。その下の女性器もまじまじと見られているに違いない。
 完全に無防備だ。
 今の時間帯では学校には誰もいない。日曜日ということもあり、休日練習のある運動系の部員が校庭にいる以外は来ている教師も少ないはずだ。もしこの場で襲われて、強姦でもされようものなら、大声を出しても誰の助けも期待できないことになる。
 もちろん本当に襲われるわけがない。これは立派な課題なのだと理解しているが、こんな状況で下半身を出していれば、犯されそうになっても逃げ切れないことに違いはないのだ。最も恥ずかしい部分を見られている羞恥的で惨めな気持ちもそうだが、生殺与奪を握られていることへの不安感は途方も無い。自分の初夜権を相手に握られているような心地さえした。
「下半身を見られてどんな気持ちがする?」
 宮崎に尋ねられる。
「不安なのにドキドキして……。今にも濡れてこないかアソコの具合が気になって仕方がありません」
 こんな危うい状況でさえ、下腹部には甘い痺れが走っていた。いよいよ犯されても文句はいえない。自分で膣分泌液を滲ませているようでは、もうこちらから誘っているも同然にはならないだろうか。もちろん体の仕組みということもあるし、妄想の中以外の場所で実際に強姦をされたいと思ったことは一度もない。ただ、男の側から都合の良い解釈をされ、誘ったのは文香だと言い張って肉棒を突き立てては来ないのか。それこそが恐ろしかった。
 例え宮崎が善良だったとしても、性癖を知った他の誰かが文香の前に現れて、いやらしいことを強要しないか。こうして性的な秘密を知られることで、知らない誰かに弱点が広まり、身の安全が脅かされはしないかという不安があった。
 なのに課題を課せられている理不尽さを思わずにはいられない。
 しかも、やはりアソコは湿ってきて、性器の表面にはねっとりと粘液を含んだ水分が少しずつ滲んでいる。ここまで胸に不安が膨らんでいる中でも、正直な反応をする自分の身体には複雑な気持ちでいっぱいだ。自分一人の時なら自慰が気持ち良くなって最高だが、感度の高さが人前でまで発揮されるなど恥ずかしい。
 一体自分は見られているのが恥ずかしいのか、視姦だけで濡れてしまう体質を見られているのが恥ずかしいのか。どちらなのだかわからない。とにかく耳まで熱く染まっていた。
「入れるよ」
 体温計の先端が菊皺に触れる。
(く、来る!)
 仮にも物を体内に差し込まれるのだ。ただの検温とはいえ、自分では見えない部分に体温計が当てられる。緊張感に全身が固まって、動けなくなった文香はひたすら自分の顔の熱さと心臓の鼓動の強さに意識を傾け、先端の挿入を受け入れる。
「ゆっくり、ゆっくりいくからね」
 細い棒状のプラスチックが少しずつ押し込まれ、肛門内部へ異物感が侵入してくる。トイレで出すものを出すのは日常でも、入ってくるのは普段はない。指で揉んでみる程度のことなら自慰行為の最中に試したことはあったのだが、さすがにアナルバイブまでは所持していない文香にとって、これは未知の経験だった。
「ん。んん……」
 十分な位置まで挿入され、感じたのは違和感だった。痛いわけでも、気持ち悪いわけでもないのだが、違和感のあまりに少しでも早く抜いて欲しい気持ちが沸く。人間の体には体内に侵入した異物を吐き出す仕組みがあったはずだが、まさに直腸が体温計を吐き出したがっているような心地が肛門の内側でしているのだ。
 つい、肛門括約筋にキュッと力を入れてしまう。そのせいで体温計が上下に揺れ、直腸内部を引っ掻かれるような異物感でますます違和感が強くなる。尻尾でも生やしているような気持ちがして、それもまた気恥ずかしかった。
 体温が出るまで、一体何分ほどかかるのだったか。こういう局面に限ってたったの一分が長く感じる。
「行うのは直腸検温だけ。でしょうか」
 恥ずかしいだけではない。不安と心もとなさと異物感と、色んな要素が重なりすぎて、とにかく気を紛らわせたい。ここで出せる話題といったら、他にはどんな検査をやるのかということだけであった。
 質問には宮崎が答える。
「尿検査もあるが、一回採れればいいからいつでもいいな。だが、尿が出る瞬間の性器の状態を撮るから、放尿自体は二回は必要だな」
「撮るんですね……」
 嫌な内容に欝な気分が沸いてくるも、妄想で済ませるだけなら有りかもしれないと、こんなときでもエッチなことを考えてしまう自分がいた。
(私はやっぱり淫乱なの?)
 今までの自分を振り返るに、否定できる材料がどこにもない。男性経験はゼロだとしても、自慰行為までなら十分はまり込んでいる。
「他には淫核亀頭や乳首が勃起していく瞬間の撮影、綿棒を使った検便なんかがある。あとは自慰行為のレポートを忘れるなよ?」
「はい」
「検査を受けて、レポートを提出しきったら完了だな。まあ、これでお前の内申点は下げなくて済むってことだ」
「ありがとうございます」
 形式上お礼を言うが、性器や肛門を見られながら、体温計まで挿入されながら相手にお礼を言うなど惨めな気がしてならない。自分の立場の低さを実感する。屈辱感を覚えなくもなかったが、よくよく考えれば自分はわざとこの学校に残っている。初めから別の学校へ移っていればそもそも性癖がバレる心配すらなかったはずだ。
 いや、しかし現時点でバレたことによる不利益があっただろうか。露出の気を持ち、裸を見られて本当は喜んでいたような自分にとって、今この状況は一種のご褒美と言えなくもない。現にアソコは濡れていて、室内の気流と肌の水分が触れ合うせいで大事な部分がひんやりとしてきている。
 体温計がピっと鳴り、お尻から引き抜かれた。
「あっ……」
 一瞬、寂しいと思ってしまった。さっきまでは異物感が嫌だったが、いつの間にかお尻に馴染んで気にならなくなっていた。検温が終わってしまい、恥ずかしい気持ちに浸っていられる時間の終了に文香は寂しさを覚えていた。





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