性器検査の存在する世界(ショート)


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 こういう検査が常識になったのは、性の低年齢化に伴う性病の低年齢化を恐れてか。あるいは邪な政治家が少女を恥ずかしい気持ちにさせたいのか。
 さすがに後者はないにしても、こうした検査の導入が必要なほど、性経験有りと見られる女子生徒は増えているのだろうか。低年齢化は事実にしても、そこまで大げさに男性経験のある子供は増えたのだろうか。
 若者の事情に疎い沢峰新造としては首を捻るばかりだが、どちらにせよ課せられた仕事はこなすまでなので、細かいことはどうでもいい。
 高校、保健室。
「よろしくお願いします」
 クラスと名前を告げた一人の少女が、新造の前で恥ずかしそうにスカートをたくし上げ、履いているパンツを見せつけた。
「はいよ」
 新造は当然のようにパンツに手をかけ、膝までずり下げ、少女の秘所を確認する。陰毛の茂みを指で掻き分け、割れ目を指でなぞりつける。
 少女の顔は羞恥に歪み、こんな場所を触られている精神的な負担のせいか、涙ぐんだ目からは今にも雫がこぼれ落ちそうになっている。肩は震え、スカートを上げている両手もぷるぷる揺れる。どんなに辛く恥ずかしい思いに耐えているのか、ありありと伝わってくるようだ。
 良識的な大人なら同情でもして罪悪感を覚えるだろうか。
 女を苛めるサディストならば、その少女の顔には嗜虐芯をくすぐられるのだろうか。
 新造にとってはどちらでもない。
 少女が泣こうと特別な感情は何ら沸いてこない。ただ、淡々と仕事をこなすのみである。過剰に恥ずかしがられたり、泣き出されたら検査にならないので、無駄な手間がかからないことを祈るくらいだ。
 ひとしきり外側をなぞったあとは割れ目を開き、肉ヒダの状態を確認する。性経験はおそらくない。膣口は狭いので指を挿入するのはやめておき、淫核亀頭の視診と触診を済ませてからパンツを履き直させる。
「……ありがとうございました」
 少女は涙ぐんだ震え声でお礼を言い、その場をそそくさと去って行く。
 そして、次の生徒がクラスと名前を告げてスカートを捲るのだ。
 女性器検査。
 それが常識となったのはいつからだったか。
 長年医者をやっている新造は、健康診断の時期になると校医として学校へ呼ばれ、毎年のように性器検査を担当している。
 特別な感情は何もない。
 若かりし頃はそれでも性的興奮を覚えていたが、婦人科検診などをこなす職業上、女性器なんてものはどうしても見慣れてしまう。簡単には拝めない秘密の場所などでは決してなく、新造にとっては日常的に検査を行う診察対象以外の何でもなかった。
 スカートから見えるパンツも同じこと。
 薄桃色の無地を見たとき、そういえば少年時代はピンク色の下着が好みだったのを思い出したが、ただそれだけだ。毎年のように見ているものに特別な感動はない。今の自分は下着ごときには興奮しないのだな、などと感慨にふけりつつ、性器を検査するためにずり下げていく。
「――ひっ」
 いきなり下げたせいかビクッとされたが、どうでもいい。
 あと何人分の検査をすれば帰れるだろうかと考えながら、新造は事務的に陰毛具合を確かめる。指で茂みをかき回し、割れ目のラインをなぞりつけ、肉貝を揉むようにして触診する。中身を開くと性経験有りと見られる膣口だったため、中指を挿入して膣壁を指腹で探りまわしてから検査を終わる。
「……ありがとうございました」
 やはり、憂鬱で元気のない声だった。
 この検査を受ける少女に共通するのは、無地で目立たない下着を着けて来ることだ。
 医者の前でスカートをたくし上げ、下着を下げてもらうこの検査方法のせいだろうが、見られることがわかっていながら派手なパンツを履く少女はいない。
 経験上ゼロではないが、多くは純白無地を履いており、それ以外には薄ピンクや水色などの無地が多い。とにかく柄というべき柄はなく、無地という無地尽くしだ。よしんば無地以外の子がいたとしても、ちょっとした刺繍が入る程度で、比較的に大人しい柄しかない。
 性器の状態は様々で、肉貝のぴったり閉じた子もいれば、鶏のとさかのようにビラがはみ出た少女もいる。
 手入れのない密林を見せるのが恥ずかしくてか。ほとんどの陰毛はある程度整えられ、切り揃えられている。中には剃って来る子もいたり、逆に手入れのない子もいるが、整えている少女に比べて少数派だ。
 次の生徒がやって来る。
「……羽野凜です。よろしく……お願い……します――」
 一見気の強そうな彼女だが、初めから声が震えていた。
 声に震えが混じっていたり、やけに元気のない憂鬱そうな子など珍しくもなんともない。自分の大事な性器を見せるのだから、恥ずかしいのは当然なのだろう。
 しかし、羽野凜はどちらかといえば悔しそうだ。
 スカートを捲る瞬間も丈を握る手が震え、爪でも食い込ませているのではと思うほどに拳を固め、歯軋りまでしながら躊躇いがちにたくし上げた。
 本来の男性なら、これはどれほど興奮するはずだった光景だろう。
 スカートをたくし上げ、純白無地のパンツを見せつけている羽野凜は、目に涙を溜め込みながら肩を震わせ、歯軋りで奥歯を摺り合わせている。悔しそうなことこの上ない赤面顔をした少女ほど、本来ならそそるものはないだろう。
 もっとも、新造はそれでも仕事を済ませることしか頭にない。
 純白無地のパンツを膝まで一気に引き下ろし、貝の閉じきったような美観ある性器をチェックした。
 陰毛は剃り落とされ、つるりとしている。
 刃を入れたことによる皮膚の痛みや細かな切り傷でもないか、新造は顔を近づけ視診するのだが、目でわかる範囲で外傷は見られない。皮膚病に順ずる疾患もなく、健康そのものといって良かった。
 ただ変わっていることといえば、割れ目の隙間から滲む分泌液が、若干ながらも性器を湿らせていることだ。
 見られて感じているということか。
 いや、正確には診られてか。
 ということは、触診の際に羽野凜は性的刺激を受ける可能性が極めて高い。指からなる刺激で膣分泌液を分泌させ、新造の指に絡み付いてくることが想定できた。
 手が汚れることになってしまうが、元より診察用のビニール手袋は一度使ったら取り替えているので衛生面は問題ない。いくら感じやすい体質でも、診察だけでよがり狂うような女もいないだろう。
 よって、検査に支障はないと考えられる。
 新造は性器へ触れ、割れ目を撫でる。
「――んっ! くうぅぅぅ……」
 触れた瞬間に羽野凜は肩を弾ませ、喘ぎを堪えた。声を出さないようアゴを閉じ、膝を震わすようにしながら耐え始める。
 我慢をしてくれるのはありがたい。
 もし、膝が必要以上にガクガク震えていたなら、触診が行いにくく時間がかかる。新造が受けた彼女に対する感情は、強い刺激に耐える姿を見てなお、それだけだった。
 触診では指の腹を使って上下に撫でる。
「――くっ、くうぅぅ……く……」
 割れ目に沿って中指を動かしていると、羽野凜はみるみるうちに膣分泌液を漏らし出す。ぬるりとした粘性の液が活性油となり、指を滑らせやすくはなるが、皮膚と指とのあいだに余計な壁が出来る形となって、誤診を招く可能性もある。
 ガーゼでアソコを拭き始めると、彼女はより悔しそうに顔を歪める。医療行為の一環に過ぎないわけだが、そこまで悔しいことだろうか。新造はなんら性感情を抱いていないが、それでも過度な羞恥を抱かれるのは不思議な気持ちだ。
 再び割れ目を上下に撫で、中身を守る包皮の触感を確かめる。まんべんなくチェックするため、貝の片側につき数回以上は往復し、見過ごしのないように触診していく。
「――くっ、くふぅぅ……」
 羽野凜は声を我慢し、ただ熱い吐息だけを漏らしている。
 初々しい肉芽が突起してきたので、そこもじっくり触診した。
「――ふはぁぁ……ん……くう……」
 羽野凜はやがて溜め込んだ涙をこぼし、泣きながら睨んでいた。新造をというわけでなく、ただただ他人にこんな場所を触れられること自体が悔しくて、彼女は睨むような表情をしてしまっているようだった。
 所詮は診察なのだから、もう少し割り切れないものだろうか。
「――あっ」
 中身を開くと、とうとう明らかな喘ぎが一声響く。
 羽野凜は悔し泣きのまま羞恥に歪み、二度と声は出すまいと歯を噛み締める。より気合いを込めて声を我慢するつもりだろうが、触診は終了したので無意味なことだ。肉ヒダから尿道口と膣口を確認し、陰唇を視診したところで検査は終わる。
「お疲れ様」
 新造は淡々とパンツを履き直させた。
 彼女は即座にたくし上げていたスカートから手を離し、丈の内側へパンツを隠す。
 そして。
「――あ、あり……」
 蟻。
 新造の頭に浮かぶのは虫の名前だが、もちろん彼女はそんな単語を呟こうとしているわけではない。
「――ありが……とう……ごさい…………ました………………」
 途切れ途切れの小さな声だ。
 そういえば、忙しいなか来て頂いている医師に対して、生徒は立場上お礼をきちんと述べなくてはいけないのだったか。羽野凜ほど不本意そうに述べた者はいなかったが、その他大勢の子も決して好きで述べている雰囲気ではなかった気がする。
 性器を見せた相手にその事でお礼を述べる。
 なるほど、よくわからない。
 学校側はそのように指導しているようだが、こちらは生徒十数人を相手に素早く仕事を済ませなくてはならないので、いちいちお礼を言ってもらえたかどうかなど新造は気にしない。あくまで学校の依頼を受けたのであり、生徒個人から検査を頼まれているわけではないので、礼儀上のお礼は学校から言ってもらえれば十分だ。
 そこは生徒に礼儀を覚えさせる意味合いなのだろうから、それもまた構わないが。
 とにかく新造は仕事を消化していった。




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