女性向け性感マッサージ店


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 女性向け風俗?
 性感マッサージ?

 そんなものの存在を知らされたのは、私が商社のOLとして二十五歳を迎え、友達から相談を受けてのことだった。
「ねえねえ、美恵。ちょっと興味あるんだけど、安全なのか気になるじゃない?」
「いや、まあ……」
「安心してくつろぎたいじゃない?」
「普通のマッサージじゃいかんのか」
「そうなんだけど、やっぱり興味あって……」
 縋るような目つきで私を見てくるのは、さしずめ自分が行くのは怖いから、まずは私が試しにサービスを受けて来てはくれないかという目論見あってのことだろう。
 ……やばいって。
「普通は逆じゃない? どうして女が男に金を払って」
「確かに良い人と素敵な経験って方が理想だけどさ。そうもいかないじゃん?」
「だから金を払って素敵な時間を買ってみようと?」
「そういうこと!」
「ふーむ……」
 性欲があるのは悪いことではないのだろうが、果たして貞操観念的にセーフといえるか。よしんばセーフということにしたとしても、本当に安らぎの性感サービスなど受けられるのか。
 春野恵美、今年で二十五歳。
 男日照りの私とその友達は、彼氏を持たない数年間を共に過ごした底辺の仲である。社内にはイケメンらしきイケメンがおらず、まあ顔の良し悪しは横に置いても、仕事の出来る性格良好なイイ男は他の女子社員に持っていかれている現状だ。
 社内には良いと思える男が残っていないが、かといって外で出会いがあるわけでもない私達は、つまるところ一人寂しい肉体を持て余している。
 ならばお金を払ってでもという発想になることで、ホストにハマる女というのは誕生するわけなのだろうか。
 いや、わかんないけど。
「ねえ、いいでしょ恵美。試してみない? お金は私が半額出すから」
「そんなことを言って私を生贄にされても困りますぞ」
「わかった! じゃあ、駄目だったらどこでも好きなお店で奢ってあげる!」
 そこまでして興味があるとは、ちょっと心配になってしまう。
 ここで私が断ったとて、この子なら仕方なく自分で店を訪れて行くだろう。そこで万が一危険なことになったらやばいのでは?
 大げさな心配かもしれないが、例えば金を出したのは女の方なのに、男の方がフェラチオだとかを頼んできても、サービス業としては最悪だ。安全性ばかりでなく、癒しとくつろぎがあるのかどうかも重要だ。
 ネットでレビューを見ればいいのだが、本当のところは自分で確かめるしかないだろう。
「本当にどこでも?」
「うん! 約束するから!」
「で、半額出してくれるの?」
「うん!」
「ならば致し方あるまい」
 私が結局引き受けたのは、マッサージには小さな思い出があるからだ。


 高校時代の私はバスケ部に所属していた。
 そこには何故か男子マネージャーがいた。
 同じクラスの友田典明くんは、例えるなら汗からフルーツの爽やかな香りが漂いそうな、まあ誇張の過ぎる言い方だけど、艶やかな黒髪を風になびかせる横顔は、どことなく甘いフェロモンを出していたと思う。
 百八十センチに近い身長の持ち主で、体育の授業であったバスケでも、華麗なドリブルからダンクシュートを決めていた。
 マネージャーとかやっていないで、もうお前ちゃんと男子バスケやれよとツッコミを入れたくなるのは言うまでも無い。
 そんな友田君から、私はマッサージを受けたことがあった。
「疲れ、取ってあげようか?」
 激しい練習で立ち上がる気力もなくなって、死体ごっこでもしているしかなかった私に、明るい笑みで微笑んできた友田君は、それから整体だとかエステに興味があって、実はそういう勉強をしているのだと話してきた。
 何となく信用して、私は身を任せた。
 綺麗な手でドリンクを配り、部員の怪我に気づいて声をかけ、重い荷物の持ち運びを手伝って下さる気遣いのできる男の子というポイントはもちろんあったが、果たして私はそれだけの理由でボディタッチを許したのか。
 なんてことはない。
 別に二人きりでも何でもなく、周りには他の女子達もいたので、まさかおかしな真似ができるはずもなかったからだ。
 それに、どの程度接触があるのか尋ねれば、胸やお尻へのマッサージ法もありはするけど、当然NGだろうしやめておくよと、友田くん自身が言うわけなので、あとは際どい内股も嫌だという条件で疲れを癒して頂いた。
 ふくらはぎを揉むのも、太ももに接触するのも、それはどういう手法で効果があるのかを逐一説明していきながら、心地良いマッサージで気持ちよくしてくれた。
 傍目にプロと見えたのか。
 それとも、甘いマスクのイケメンに触られたい下心か。
 何にせよ私へのマッサージが終わるなり、「私も私も!」と群がる黄色い声の女子軍団にも快い笑顔で接していた。
 プロのサービス業者かね、アンタは。
 なんて感想を抱くほど、丁寧な接し方で順番にマッサージを行っていた。


 さしてロマンチックというわけではなく、ただそれだけの思い出だが、練習が辛かったことを大いに汲み取り、労わりながら丁寧に扱って下さるマッサージは、とてもよく筋肉がほぐれて癒されたのだ。
 お金を払ったマッサージ店なら、あの時の感じを上回ってくるのだろうか。
 と、そんなことを私は思ったわけだ。
 ホームページを確認すれば、プレイ内容については事前にNG事項を告げておくこともできるらしい。
「本当に安全に受けられるサービスですか?」
 予約電話の際に尋ねてみた。
「もちろんです。お客様を気持ちよくして差し上げて、くつろいで頂くことが当店の使命になりますから、女性の嫌がることは致しません。もしも途中で駄目だと思ったら、いつでも中断を申し出て頂いても」
 なるほど、なるほど。
「挿入とかって」
「もちろんご希望しだいです。NGにしておきますか?」
「はい。お願いします」
「かしこまりました。局部への愛撫はいかがなさいますか?」
「ええっとぉ……」
「迷われているようでしたら、実際にマッサージを受けてみてのお気持ちで判断して頂くことも可能です。その場合は担当のマッサージ師の方にもお伝えしておきますので」
「はい。じゃあそれで」
「コースはどうなさいますか」
「百二十分でお願いします」
 あとは日曜日の朝に時間を決め、当日を迎えた私は、担当のマッサージ師として案内に現れた男の顔に仰天した。

 ――友田あぁぁあぁああああああああ!

 何故だ! 何故お前なんだ!
 元クラスメイトだぞ!?

 しかも、高身長からなるスラっとしたスタイルの良さは当時から変わっていない。スリムな体格から伸びる脚のラインも、爽やかな香りを放出しそうな顔立ちの良さも、何もかもが百点満点というもので、これを上回るルックスを求めようなど贅沢すぎて罰が当たる。
「あれ? もしかして、春野恵美さん?」
「覚えてるし!?」
 つ、つまり――。
 元クラスメイトにお金を払ってエッチしてもらう状況?
 やばい、やばすぎる。
 どうするんだこれ……。

     ***

 恥ずかしければガウンや下着着用でも良いとのことで、頂いた紙ショーツと紙ブラジャーに着替えた私は、ガウンを羽織って待機した。
 マッサージルームはオシャレな仕上がりだ。
 ラテン系の壁紙模様に艶やかなフローリングと、観葉植物で緑を添えた一室にうっとりとするようなアロマが焚かれ、とても落ち着きやすい雰囲気だ。
「準備はよろしいですか?」
 友田君がベッドの傍へやって来る。
「い、一応……」
「今回春野さんの担当をさせて頂く友田典明です。まあ高校以来になるわけだけど、あれからこういう仕事に就きました」
「マッサージ師?」
「そうだね。あの頃から興味があって、色々と勉強してたんだ」
 穏やかで落ち着きのある声質は、それだけで耳をくすぐるところがある。実は肌からフェロモン物質でも出てはいないかという甘い顔立ちも、長身のスタイルも、全てに乙女心をくすぐるずるさがあった。
 この人から、これから性感マッサージを?
 やばい、緊張する。
「そうだったんだ。私は商社のOLでさ――」
 テンパって声の上ずっている私は、緊張を誤魔化すべくして早口で身の上をペラペラ語り、上司の愚痴をこぼすと友田くんは、うんうん、そうだねと、頷きながらしっかり耳を傾けてくれている。
 友田くんも自分が今の仕事に就くまでを語ってきて、少しのあいだ雑談に花を咲かせた。
「春野さんは昔より綺麗になったね」
 なんてことをサラっと言われてしまっては、「えっ!?」と一瞬私は固まる。
「バスケやってたでしょ? 僕としては背が高めなのは悪くないし、スポーツでラインの出来てる体って、とてもいいと思うんだよね」
 なんぞ褒められているんだ私は!
 ま、まあ……。
 お喋りに夢中になったおかげで、顔の強張るほどの緊張も和らいで、話題が落ち着いたところで友田くんは切り出した。
「そろそろ始めようか」
「……そ、そうね」
 とうとう、この時が来てしまった。
「ガウンはどうする?」
「うーん。着たままでも?」
 だって、いきなり下着姿はちょっと……。
「うん。それじゃあ、初めはそのままにして、だんだん気持ちを高めてあげるからね」
「あのっ、優しくしてね? 友田くん」
「もちろん」
 ニコっとした微笑みは、やっぱり反則くさい。
 アイマスクがあるというので視界を閉ざし、マッサージ用のベッドにうつ伏せとなり、全身の力を抜いた私は、枕に顔面を埋め込んだ。
 私のガウンはパチっと留めるスナップボタン式で、バスタオル巻きのようなことになっているので肩から腕にかけては露出している。背中の肩甲骨まわりも見えている。丈は十分に膝のあたりまでかかっているが、一体どこから触るのだろう。
 アイマスクの厚みが完全に光を遮断して、物音でしか周りの様子がわからない。 
 わからないから、周囲にやたらと意識がいく。
 何か、棚から取った音だろうか。
「アロマオイルの効能で肌を良くするからね」
 きっとオイルを手に取ったのだろう。足首から太ももにかけ、トロみのあるものが伸ばされて、私の足はヌルヌルにコーティングされていく。
 友田くんの気配が背後へまわり、指先がそーっと触れてくる感触があったのは足首だ。触れるか触れないか、いわゆるフェザータッチがアキレス腱を細やかにくすぐって、円を描くように撫で始めた。
「始めるからねー」
 ブルブルと腕を振動させた指の震えが、産毛だけを撫でてぐるぐると、回転しながらふくらはぎへ上がってきて、膝の裏まで到達すると、アキレス腱のスタート地点に戻ってしまう。
 な、なんだこの感じは……。
 くすぐったいようでいながら、本当にくすぐったいのとは違う微妙な心地が、私の皮膚を少しずつ溶かしているようだ。
 そ、それに熱い! 火照ってくる!
 皮膚が発熱した熱さは、もしやオイルの仕業なのか?
 タオルの丈が少しだけ上にずれると、まずは約半分ほど出た太ももに同じアロマオイルをまぶしていく。ぬかるみによって固められた私の皮膚は、振動気味のフェザータッチでわずかに産毛だけで浴びていた。
 むぅっ、ムズムズしてきた。
 なんて丁寧なんだ。
 というか、オイルを広げる以外では、皮膚の表面しか責めていない。
 足だけで時間を使うので、いきなり恥ずかしい部分には来ないとわかって安心するが、太ももまで来たからにはもう……。
 タオルがさらに持ち上がり、ギリギリでお尻が隠れるだけの脚の丸出しぶりとなり、たぶん枕に深く埋まった私の顔は、カァァっと燃え上がっていると思う。
 やばい、やばい、やばいぞ。
 指先がお尻に迫っている――。
「ふぬぅ――――」
 脚の付け根と、尻部の下限の境目で皮膚がゾワつき、私は珍妙な声を上げてしまった。
「お尻を拝見するからね?」
 甘い囁き声で言われても困るよ!?
 あぁぁっ、また友田くんの手が丈を掴んで、紙ショーツなんぞ履いている私のお尻は、これでもう視線の下だ。
「凄くいい形じゃない。綺麗だよ?」
「いやそんなね。私のデカいのなんて褒められてもだね」
「そうかな? 自信を持っても良さそうだよ。大きさは男が喜ぶし、プリプリした丸っこさが可愛くて、とっても美尻だよ?」
「そ、そう? なの……? プリプリとかちょっと恥ずかしいから!」
 喜んでいいのか? そんなに美尻か?
 というか、そんなプリプリとかいう単語を爽やかな声で言い切らないでくれ。
「さあさあ、このプリプリの厚みにも触っていくからね?」
 なんて言うものだから――。
 てっきり、すぐにお尻を揉むと思ったが、触れるといっても下弦と上弦を責めている、紙ショーツの生地がわずかばかりに及んでいない、山のような丸みのふもとの方だ。
 ――来るか?
 生地のエリアに指が入ると、大胆に揉まれるのかと覚悟しかけるが、そんな私の胸によぎった緊張感とタイミングを合わせるようにして、指は太ももへと移っていた。
 さーっとなぞり、また接近。
 ……来ない。フェイントかね。
 お尻を飛ばして、さらにタオルの丈を上げ、私の体はもう腰まわりまで見えている。そこにまたアロマオイルが垂らされて、皮膚の表面がヌルヌルになったところで、膨らみの上弦を可愛がる。
 うおおっ、そこは尾てい骨くらいの高さにあるお尻の端っこで、丸い膨らみと腰の境にあたる部分を――よしよし、ナデナデ、とでも言うべきか。絶対に幼い子供を愛しむノリの撫で方をしていると思う。
「うっ、うぅぅぅ……」
 声だけ聞けば、今の私は苦しみの呻き声を発しているかのようだ。
「もう気持ちよくなり始めているみたいだね」
 お尻の上端だけでなく、腰からくびれにかけても指先が這い、オイルのついた指の先端でヌルウゥゥゥっと、やっぱり皮膚の表面だけを責め立てる。
 ああぁぁっ、何だこの甘ったるい肌の熱さは――。
 皮膚がトロトロに溶解していく錯覚が、今までオイルを塗られた箇所全てに広がって、下半身がムズムズしてたまらない。
「そろそろ、このプリっとしたお肉を見てあげるよ」
 次の瞬間、恐ろしいことが起こった。
 私の紙ショーツはスライド式で、施術に合わせて露出度を変えられる。

 ――ずるっ、

 と、友田くんが私の紙ショーツを中央に手繰り寄せると、いとも簡単にTバックと化す私のお尻は、割れ目が隠れる以外は丸見えなのだ。
「ととと、友田くん! 友田くん!」
 恥ずかしい! 恥ずかしいって!
「お尻から嫌だ嫌だって声が聞こえてきそうだね」
 し、しまった!
 私はそう見えかねないお尻の振り方をしてしまった。仕方ないじゃないか。熱いしムズムズするし、何だか腰がくねってしまうもの。
「ここも気持ち良くしていくよ」
 とうとう、お尻の上に手の平がやってきた。
 アロマオイルを塗り塗りと、広げる時にも無理な力は入れていない。どこまでも優しく軽い手つきのみで、全体的に馴染ませると、今度こそ指先オンリーの愛撫がお尻を丁寧に丁寧に、細やかな踊りで責めている。
 あぁぁぁっ、骨の芯まで甘ったるいよぉぉぉ。
 一箇所だけで時間をかけて愛撫するから、もう既に三十分以上は経過していまいか。
 だからお尻もたっぷりと、良い子良い子と褒めんばかりの手つきにトロけていき、もうどうにでもなれという諦めの境地に私は達した。
 だって、Tバックの露出度をガン見されてるんだもの。アイマスクのおかげで指の感触は如実すぎるほどよくわかるし、恥ずかしげもなくサラっと褒めるし、何というか私はもう何もできない。
 ――もういいです。
 ――どうぞお好きに性感マッサージをお願いします。
 やっとのことでお尻の愛撫が打ち止めになると、ガウンの内側に隠れた背中へオイルを広げて、肩や二の腕にかけても伸ばしていく。
「はぁっ、あぁぁ……」
 私は絶対、変な声を出している。
「もうアソコも濡れている頃でだろうね」
「……友田くん。そんなまさか」
「大丈夫だよ。本当に嫌がることはしないけど、一旦仰向けになってもらっていい?」
 上を向いても、アイマスクによって広がる暗闇で、私には何も見えない。ただ枕に後頭部を置き、肌に染み込んだ皮膚中の熱い疼きに甘美なまでにうなされる。
 前開き式のガウンなどあっさりとオープンされ、私は下着姿で友田くんの目の前に横たわっていることとなった。
 不思議なほど恐怖感はない。
「今度は先に全部オイルを塗るからね」
 断りを入れてから、べったりと私の肌に張り付く手の平も、あくまでオイルを広げようと這い回り、下着に隠れた部分以外は、首から下が全てオイル濡れとなる。
 そっか、いやらしさが無いんだ。
 いやらしさというか、欲望にまみれた身勝手な揉み方が一切ない。自分が楽しむためなら、お尻なんかはもっと大胆に揉みしだいてもおかしくないのに、そういうことを一度もしないで私への性感だけに集中している。
 本当に女性を感じさせることが目的で、自分自身の欲望は横にでも置いているのだ。
 ずっと鼻腔を癒し続けるアロマの香りの効果もある。
 表側への愛撫も、足の先から太ももにかけ、時間をかけて上へ上へと迫ってくるが、内股のきわどい位置まで接近しながら、焦らさんばかりにアソコには触れてこない。腰や腹に指先が踊り、肋骨をわたって胸の真下に指は来た。
 やっぱり、簡単には触ってくれない。
 脇下から迫る形で、だんだん乳房に来ると思ったら、端っこをちょっぴりするだけで、指は鎖骨へ移動する。
「だいぶ気持ち良さそうな顔になったね」
「んん……っ、そんなことは……ぁ……んっ!」
 もう駄目だ。私の腰はモゾモゾと動いている。
 こんなにも肌が沸騰して、快感が広がってくるなんて――。
「春野さんのこういう声が聞こえて光栄だな。高校時代は高値の花だと思っていたから」
「ひゃ……そんな私っ、高値だなんてぇ……っ!」
「自分で思っているよりも、春野さんは人気者だったんだよ?」
「んっ、うそぉっ、だってぇぇ……!」
「さあ、脚を少し開いてもらうよ」
 私の足のあいだにスペースを作り、友田くんがそこに座った気配がわかる。股を閉じようとするだけで、友田くんの正座の膝にぶつかって、もう開いたままでしかいられない。
「あっ」
 むああっ、わき腹……!
「いっ……にぃ……いにゃぁ……!」
 下から掻き揚げる四指の愛撫が、数センチずつ脇の下へと向かっていき、ギリギリで乳房とは言えない付け根の部分を集中的に――。
 指が離れ――次はどこ?
 鎖骨の中央に指が一本置かれた。それが下へと、乳房のあいだに入るものの、触れるようで触れずに乳房を離れ、今度は肋骨で指が踊った。乳房の下弦に迫るも、やはり触れずに他所へ指を置き直してばかりである。
「春野さんのオッパイを見ちゃおうかな」
 友田くんは私の紙ブラジャーを掴んだ。
「はい。バンザイ」
 と言われれば、私はその通りにしてしまって、ずるりと持ち上げるように脱がされる。これで私を守ってくれるのはショーツだけだ。
 あぁぁっ、オッパイを見られている。
「乳首が硬くなっているね」
「言わないでぇ……!」
「夢みたいだな。自分では信じられないだろうけど、僕にとっては『あの春野さん』が下着一枚だけなんだよ」
「言わないでってぇ……」
「もっと感じる状態にしてあげる」
 友田くんはやっと、私の乳房を――。
 いや、膨らみの端っこだけで、上の方には来ようとしない。丸みに沿って、ぐるりと一周かけてくすぐるが、ほとんど乳房というよりその付け根だ。
 ううっ、これじゃあ一体いつになったら私のオッパイは責めてもらえる?
 しかし、代わりにおへその穴に指が入って、もう片方の手は下腹部のあたりだ。ショーツ越しに陰毛の生えた部分をさわさわと、それから両手ともV字ラインに沿った股を撫で、性器に限りなく接近した。
 スライド式の布地を――いや、紙ショーツだから紙地を閉じて、アソコが本当にギリギリで隠れるだけの露出度となり、出ている肌がまさぐられる。
「んんぅぅ……まさかっ、あそこを……?」
「ここがNGかどうかは決めていないんだよね」
「そうだけど……」
「決めた。アソコに欲しい気分にさせてあげるよ」
 それがどれほど、爽やかな風を吹かせたニッコリ笑顔による宣言なのか。アイマスクを解していても、私にはよくわかった。
 私が覚える危機感は一つ。
 アソコの淫らな状態を認めさせられてしまう……!
「そんなのいいって……!」
「だめ、リラックスしなきゃ」
 次の瞬間――。
 んむぅぅぅぅ!
 ――乳首!
 完全な不意打ちで乳首をつままれ、私は大きく仰け反ってしまった。
「いい反応だよ。可愛いね」
 あぁぁっ、指のお腹でよしよしって、乳首を両方とも可愛がってる。乳房の内側にどんどん快楽が詰まってきて、もう自分でも状態がわからない。
 な、何だこの『何か』は――。
 何かはわからないけど、この『何か』はもう快感と呼ぶしかない。それが私の全身にしつこいほど循環して、腰がくねくねと動いてしまう。お尻が少し浮いてしまう。シーツもギュっと鷲掴みにしていると――。
「すごく幸せそうになってきたね」
 友田くんは嬉しそうにそう言った。
 ええっ、友田くんが喜ぶの? 今の私を見て?
 今の私って、どうなってるの…………。
「そのまま、そのまま、頭を真っ白にしていって、気持ちよくなることだけを考えて?」
「えうっ、んむぁ……っん!」
「春野さんはもう凄く濡れているよ? アソコの部分にオイルとは関係のないものが出て、ヌルヌルなのが見ただけでわかるから」
「いやぁ……わたしそんなに……あぁぁ……!」
 あっ、アソコの状態なんて……。
 駄目駄目!
 もう恥ずかしくて考えられない!
「好きなだけ感じてごらん?」
「あぁぁ……ふっ! ひむぅぅっ、んぅ……!」
 今まで指先オンリーだった愛撫が、手の平べったりとなって私の腹を這い回る。軽やかなフェザータッチが、オイル濡れの皮膚の表面をするする滑り、わき腹から肋骨へと、そして胸を軽く揉む。
 優しく扱う指の圧力で、ふわっと軽やかに包んで離す。
 指でコリコリと乳首をつまみ、刺激の強さに肩が浮いたり首がよれたり――。
「いっ、うん……!」
「可愛い声にはもっとサービス」
 ――ちゅっ。
 き、キス!?
 私のおでこにそっと唇が触れていて、さりげない一瞬で離れていった。
「友田くんってば……!」
「びっくりした? 今の表情もキュンとしたよ」
 友田くんは私の両耳を掴み、親指で撫で回す揉み方を行った。
「もおっ、変なことばっかり――」
「そういう店に来たのはどこの誰かな?」
「そ、それは……」
「アソコも変なことになってるし、いっぱい感じてくれて嬉しいな」
 友田くんの動く気配がしたと思うと、おそらくベッドを降りて脇に動いた。
 ……次はどうするの?
 物音がなくなると、私には暗闇しかないからわからない。今一番よく聞こえている音といったら自分自身の心臓だ。もうバクバクいっている。全力疾走したみたいに荒れた呼吸が私自身よくわかる。
 最後の一枚を脱がそうと――。
「んひぃ……!」
 友田くんの手が紙ショーツを掴んでいた。
「NGって言わないと、ここもメチャクチャにしちゃうよ?」
 私には悪魔の囁きにしか聞こえない。
 だって、こんなに火照った体を放っておかれたら……。
「え、えぬ…………」
 それでも、やっぱり恥ずかしい。
 アソコを見られてしまうだなんて、どうしても考えられなくて、私は震えながら口にしかけていた。
「本当にいいの?」
「うぅ……」
「いっぱいサービスするんだけどな」
 ど、どうしよう……。
 私は……ええと、でも……。
「ほら、今のうちに決めないと間に合わないよ?」
 肌の上からずれる感触で、紙ショーツに隠れていた下の毛が、ほんの少しだけ見えているであろうことが私にはわかった。
「あっ、あぁ……わっ、わたし…………」
 それでも、数秒間は待ってくれていたと思う。
 だけど――。
「はい。時間切れ」
 意地悪な悪魔がいかにニヤっと微笑んだか。
 声だけでわかるほどだった。
「あぁっ……!」
 私の全てが曝け出された。
「隠しちゃ駄目だよ」
 反射的に動いた私の手首が、友田くんの手に捕らわれる。乱暴ではないけれど、軽い力で掴まれるだけでも、魔法のように抵抗力が奪われて、私はだらりとしてしまった。
「見ないでぇ……」
 私に出来るのは懇願だけだ。
「アロマオイルは綿密に広げたからね。ヌルっとした春野さんの全身を包んでいて、かなりエロい光沢がかかっているよ」
 嫌ぁぁ……!
 説明しなくていいのに!
「だけど、アソコがヌルヌルになっているのは、オイルのせいじゃないね。こんなに感じてくれて嬉しいよ」
 友田くんの指先が、私の割れ目を撫で上げた。
「ひぃぃ……!」
 電流でも流されたように、ブリッジに挑戦して腹を持ち上げようとしたように、私の腰と背中は高らかにビクっと弾んでいた。
「あーあ、動かれたらマッサージができないよ?」
「ひあっ、そんなぁ……っ! 意地悪なこと――いっ、言われても……んふぁっ!」
 友田くんは私の横合いに立っている。
 右手の指を愛撫に使い、左手では私のお腹を軽く押さえているけれど、決して強引な力は入れないから、私の腰のくねりは押さえられない。
「駄目じゃない。春野さん動きすぎだよ」
「だってぇ……! 友田くんがぁ……!」
「おっ、おぁ……! お願いィィ……! いじめ……ないでぇ…………」
「あくまでサービスだよ」
「ひぃぃぃああああ――!」
 恥ずかしいほど珍妙な声で、私は達してしまっていた。
「あらら、すごい潮だね。僕の服にもかかっちゃったよ」
「うそ……私……ごめんなさい……」
「いいんだよ? まあ、お仕置きはしておこうか」
 ぐっと、急に押し付けが強くなったと思うや否や、私の割れ目に友田くんの指が挿入されていた。
「そっ、そんな――」
「もう一回、イってみようか」
 指の出入りに逆らえなくて、もう私は滑稽な踊りのようにお尻を浮かせ、腰をくねらせていたと思う。
 噴き出す潮が、私自身のお腹にかかってきた。
 ビクン、ビクンと、全身の筋肉が痙攣して、「またイったね?」と聞こえてきた。
 指が二本に増えていた。
 もう頭が真っ白で、嵐のような気持ちよさの中で、散々喘ぎ尽くす羽目になったとしか言いようが無い。

 はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……

 わたし、何回イっちゃったの?

 凄かった。
 もう色々と、凄かったと友達には伝えておこう。

 絶頂地獄が終わったあとも、まだ少し時間は残っていた。
 さすがに手加減してくれたけど、何というべきか、気がついたら背面座位のようにして、私のお尻は友田くんのあぐらの上に乗せられていた。体重を後ろに預けると、背中には良い胸板の厚みが接触してきた。
「春野さん。いっぱい感じちゃったね」
 友田くんの顔が後ろから、私の耳のあたりへ降りてくる。
 甘みのある声が至近距離から、耳の穴がくすぐったい。
「ねえ、なんか想像を絶するんだけど」
「それくらい幸せになってもらえれば本望だな」
 胸にお腹にアソコまで、残り時間をかけての愛撫で、私は子供のようにあやされていた。どんなに濡れたか、愛液を指に絡め取られては直視できずに目を背け、そんな私の反応を可愛いなんてからかってくる。

 終了後は――

 着替えのあとにドリンクを用意してくれた。
「たくさん濡らしたから、水分補給をしておかないとね」
 という一言付きで。
 ああもう、気持ちよかったよ。

「よければ次も来て頂戴ね。挿入サービスもあるから」

 そ、挿入……。
 いや、まずリピート自体をどうしよう。
 なんということか、行く行かないで迷っている自分がいた。




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