水滴チェック


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 いくら何でもマズいんじゃないか?

 保護者からのクレームが怖いご時勢で、あえて女子生徒の全裸水滴チェックを行おうだなんてリスクが大きい。だいたい、うちの生徒は幼稚園児じゃあるまいし、せめて小学校低学年までならわかるのだが……。
 風呂上りの身体がきちんとよく拭けていない。

 だから水滴チェック?
 中学生にもなってねぇ……。

 時は修学旅行。
 中学一年の担任を務める俺は、まさかのまさかで女湯の脱衣所へ足を踏み入れ、これから出てくる女子の裸をチェックすることになっていた。
 素行の悪いクラスや学年などの一部生徒が、びしょ濡れのまま脱衣所に上がり、旅館からのクレームが出たためだ。もちろん教師陣は朝礼などを通して注意を行うが、翌年になっても新一年生の代で再びクレーム。やむを得ず水滴チェックを実施する流れとなった。
 まあ、流れはわかる。
 口頭での注意で改善がされないから、それ以上の措置を取ること自体はまあわかる。
 不幸なのは多くに普通の生徒達で、ほんの一部の馬鹿がいたせいで、悪くもないのにとばっちりを受ける羽目になる。その一部の馬鹿とやらが女子だったため、男子は対象外なのだ。チンコの確認などしたくないので、俺からすればそこは不幸中の幸いだが。
「いいわね? きちんと見るのよ?」
 俺の隣にいるのは中年ババアの教頭だ。
「は、はぁ……」
「女の子だからといって遠慮はいりません。いい加減に灸をすえた方がいいんです。男のあなたがじっくりしっかり見てあげれば、嫌でもきちんと拭くようになるでしょう」
「まあ、そうでしょうねぇ」
 愛想笑いを浮かべて同意しつつも、俺は心の中で「クソババアめ」と罵っている。確かに生徒達の裸を拝めるのは役得だが、楽しみじゃないといったら嘘にはなるが、こいつこそが水滴チェックなどと行き過ぎた指導を思いついた元凶だ。
 未婚のババアが未来ある中学一年の女子を苛めるのは、さぞかし気の晴れ晴れすることなのだろうか。
 俺がこのババアに選ばれたのには、特に深い理由はない。たまたま目が合った、なんか真面目そう、だとかで適当に指名したのだろう。女に興味のないホモでもいれば適役だろうが、生憎ながらそう都合の良い適任者はいなかった。
 さて、すっかり湯気のかかった温泉のガラス戸が開かれて――。

 まず一人目が、俺のチェックを受けに来た。

 胸を右腕で、股間を左手で覆い隠しているのは、とても生真面目な委員長である。綺麗な細い字でノートを取り、休み時間も騒がず静かに過ごしている。こんな子がきちんと拭かないわけがない。
「気をつけ!」
 教頭は今にも苛立ちの篭った機嫌の悪い声で言い放つ。
 ビクっとした委員長は、よもや助けを求める視線を俺に向けていた。――本当にやらなきゃ駄目なんですか? ――どうしても見せるんですか? 声にこそ出さなくとも、悲痛な心の叫びが悲しげな表情から伝わってくる。
「いいじゃないですか。十分拭けてますって」
 一応、俺はそのように言ってみる。
「何を甘いことを言っているんですか! そんなことだから、ふざけた女子が一向に減らないんですよ? ここで厳しくしなければどうしますか!」
「……はあ、そうですね」
 残念ながら、俺が教頭に怒鳴られてしまった。
 こうなっては、委員長も諦めムード。
 何かの処罰を受け入れる勢いの暗い顔を真っ赤に染め、震えながら両腕を下ろす委員長は、歳相応の幼い膨らみを誇っていた。平らなようでいて平らではない、あまりにもわずかな乳房が乳首を尖らせ、下の毛はごくごく薄っすらと生えている。
「さあ、よーく見てあげなさい?」
 命令されて女子生徒を視姦するなど妙な気分だ。
「ご、ごめんねー」
 仕方がないので顔を近づけ、首から胸、腹から太ももにかけ、上から下へ順々に確かめていくのだが、もちろん水滴などどこにもない。
「背中も見せなさい」
 教頭は口答えなど許さない鬼の表情。
 すべすべの背筋も確認して、やがて幼い丸尻を見る。将来性の高い尻は、今の時点でも綿菓子のようにふんわりとした柔らかさを思わせて、指を埋めればどれほど良い揉み心地が手に跳ね返るだろうかと想像させられる。
 いや、いかんいかん。
 生徒の裸に興奮している場合じゃない。
「うん。大丈夫」
 俺はさっさと委員長を解放しようとした。
「何が大丈夫ですか。お尻に一滴残ってるでしょう」
 見れば確かに、一粒だけの水滴が頑固に張り付いているのだが、別にたった一滴の拭き残しがどうしたというのだろう。
「いいじゃないですか。十分ですって」
「いけません。先生、拭いてあげなさい」
 教頭は俺にハンドタオルを渡してくる。
「えぇ……」
「自分で体も拭けないんですから、もう大人がやってあげるしかないでしょう?」
 そんな馬鹿な話があるか。いくらなんでも中学生を馬鹿にしすぎだ。
 と、鬼の形相のババアに歯向かう勇気が俺にはなく、情けないことに生徒のお尻に触ってみたいとすら思っている。
 タオルを受け取った俺は、布越しに尻たぶに触れた。
 見た目の想像に反して、弾力が強くてやや硬めか。ゴムボールのごとく押し返す力が強く、張りのよさがよく指に伝わってくる。俺は人差し指で尻山を突き、クレーター状に凹ませてから、素早く指を引っ込めた。

 ――プルンっ、

 かすかに可愛らしくバウンドした。
 委員長、いいお尻だ。
 いや、だから興奮してはいけないんだ。
「今度こそ大丈夫です」
「そうですね。はい、次!」
 こうして、一人ずつ女子はやって来る。
 誰もが膨らみかけであり、大きさはそれぞれであっても巨乳はいない。より平らな子もいれば、より丸っこく膨らんでいる子もいた。水滴まみれの子なんて一人もいない。順調にチェックをパスしていく生徒達は、俺の背後で静かに着替え始めていた。
 俺はチェックに集中するので、その光景を見ることは無い。ただ衣擦れの音を聞くに、いかに素早く服を着て、この脱衣所から逃れようとしているのかは、ありありと伝わってきた。
 結局、びしょ濡れで上がる子なんていようはずもない。
 委員長にしたって、たった一滴だけだった。
 これは必要なことだったのか?
 しかし、これは来年も実施するつもりでいるらしい。保護者からのクレームがいつきたっておかしくないが、教頭の意思は変わらなかった。




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