ありさ 作法教室


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この作品は『愛と官能の美学』のShy様よりご投稿頂いた作品です。(Shyrock作)



 ありさはもう23歳、落ちつきが欲しいと自分でも思い始めていた。
 そんな時、作法教室の看板を見つけた。
 さっそく電話した。
 立派な門構えの扉横にあるチャイムを鳴らすと中年の男性が出てきた。
 物静かだが少し神経質そうな紳士。
 さすがに和服がよく似合ってる。
 落ち着いた物腰。
 この人が師匠になるらしい。
 ありさが入門の旨を言うと奥に通された。
 別室には誰か来ているらしい。
 ありさは和服を渡された。
 もちろん和服なんて着たことがない。
 そう言うと、

「襦袢になってください。今日は手伝いますから」

 下着はどうしたものかと師匠に聞いたら脱ぐものらしい。
 奧の控え室を借りた。
 ありさは脱いだ衣類をきちんと畳むと棚に置いた。
 こういうことも大事なのだろう。
 ありさが白い襦袢姿で控え室から出てくると、師匠が慣れた手つきで襦袢の形を直す。
 和服を着せられ、きゅっ、きゅっと帯を縛られる。
 和服姿も意外と悪くない。

「今日は座り方を教えます」


 狭い部屋に通されると正座の練習をすることになった。

「背筋が曲がっていますよ」

 軽く師匠が手を触れる。
 どこに触ったのか痛さが走った。
 さんざん足の開きや腰の位置を直される。
 軽い力なのにどこを触られても痛い。
 ようやくできた。
 そのまま15分間壁に向かって座っているように言われた。

「自然体で、きれいな心で座るんですよ」

 師匠がつけ加えた。
 部屋を出て行く。
 ありさの足はすぐに痺れてきた。
 足の裏をもじもじさせながら我慢する。


 パシンと言う音が突然隣室から響いた。
 若い女の悲鳴。
 師匠が何か言っている。
 パシン、パシンとまた乾いた音。

(ひっぱたいている)肌を叩く音だ。

 それが分かるとありさの身体に戦慄が走った。
 少し静かになった。
 師匠が何か言っている。
 ありさの前の壁が軽く揺れた。
 またパシン、パシン、パシンと音が響き始めた。
 さっきよりずっと鈍い音。
 それに合わせるように壁が揺れ、女の低い叫び。
 嗚咽。
 痛さを我慢しているのだ。


 ありさは音と振動から状況を推測せずに入られない。
 手を壁につかせて和服のお尻をめくって師匠が叩いている。
 ありさはそう思った。
 それがわかると急に怖くなった。
 耳をふさいだ。
 でも聞こえてしまう。
 女が恥ずかしげもなく泣き叫んでいる。
 師匠の叩き方は相当に痛いのだ。
 さっき軽く触られただけであれだけ痛いのだ。
 きっと本気だったら並みの痛さでない。
 ありさは姿勢を正した。
 叱られないようにしなくちゃ……と緊張した。

 ありさの横の襖が静かにす〜っと開いた。
 それだけで身体がピクンとした。

「しっかり座っていましたか?」

 物腰がやはり柔らかい。
 この豹変はかえって怖い。
 さっきひっぱたいていた同一人物とはとても思えない。
 背筋をもう少し伸ばすように軽く触れられた瞬間、身体に電流が走る。
 若い女を叩いて泣かせた様子を聞いているので身体が守りに入っている。

「礼儀は形だけではありません。心と身体の美しさです」


 礼儀の心得を師匠は解く。

「こういうのは駄目ですよ」

 何かが目の前に突き出された。
 ありさはハッとする。
 身体に戦慄が走る。
 叩かれると身体が構えた。

「見えないところに清潔なものを身につけるのが女の心構えです」

 ありさの目に汚れを見せつけるように開いた。
 控え室から持ってきたのだ。
 ありさは恐怖と羞恥で頭が真っ白になった。

 いつしか壁に向かって立っていた。
 壁に手をつくよう命じられていた。
 うしろから着物をめくられていた。

 そして……
 23歳の白い尻が師匠の前に突き出されていた。





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