女レッド 犬のお散歩


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 真昼の街中、犬の散歩をする光景があった。

 犬といっても、それは人間の首にリードを繋げたマニアプレイの光景である。
 しかも、特撮番組に出るような戦闘員が、赤いタイツの女を引き連れている。
 赤タイツのデザインには装飾が施され、言ってみれば格好良いスーツとなっている。戦隊番組のレッドを彷彿させるものだった。
 マスクは外され、凛々しく見える素顔が丸出しだ。
 そんなレッドが四つん這いで歩いており、戦闘員がリードを握っている。
 まさしく、敗北したヒーロー屈辱的な姿――。
 そんな光景が街中にあった。
「くっ……!」
 レッドは歯噛みする。
 全身を包む赤タイツは、肌にぴったりとフィットして、その体つきを如実に浮かせている。しかし、一部分が切り取られ、丸い尻だけは綺麗に露出していた。
 四つん這いの足が動くたび、そのお尻は左右に振れる。
 プリッ、プリッ。
 と、大きな桃の膨らみは揺れており、そのボリュームと柔らかさがよくわかる。
「いやぁ、いいケツっすねぇ?」
 尻を眺めて、戦闘員が言う。
「だ、黙れ!」
「ははっ、まさか子供一人の命くらいで、本当にこんなことするだなんてねぇ? さすがヒーローッスよ!」
 悪の組織の手先であり、町の小学生を捕えた張本人が、その正義の魂をわざとらしく褒め称える。
「卑怯者……!」
 レッドは肩越しに戦闘員を睨みつけ、歯が砕けんばかりの歯軋りで音を鳴らした。
 それだけなら、十分な凄味があった。正義感からなる怒りの眼差しには、しかし敵を容赦なく食い殺さんとする、激しい炎を宿している。目つき一つで敵を萎縮させ、弱気な者など一瞬で退散させかねないほどの凶眼だった。
 そんな凄味ある目つきにしても、戦闘員の視界からすれば、丸出しのお尻とセットである。
 しかも、彼女は抵抗をしない。
 反抗的態度こそあれ、悪の組織が子供を人質にしている以上は手出しができない。もし彼女が反撃でもしようものなら、ただちに人質が殺されるという状況下なのだ。
 子供の命という盾。
 そうやって武力を封じられているレッドが、切り取られたスーツからお尻を丸出しにして、そんな有様でありながら肩越しに睨んでくる。首輪が巻かれ、リードで繋げられていることまで考えれば、とても愉快な光景だ。
 睨みつけ、反抗的な言葉遣いをする。
 たったそれだけの抵抗しか、今のレッドにはできないのだ。
 その事が大いに実感できて、戦闘員は実に愉快で楽しげな表情になっていた。
「どうした? 早く歩けよ」
「うっ……! 畜生……!」
 屈辱を堪え、レッドは進む。
 人口の多い街中ということもあり、当然、老若男女多くの人が行き交っている。散歩の老人、OL女性、学生服を着た男女のグループや、大学生と見られる若者。
 多くの通行人が行き来する中、レッドはこんなことをさせられている。
「おい、見ろよ」
「嘘……! あれレッドだよね?」
 注目が集まっていた。
「レッド……」
「本当に負けたのか?」
 犬の散歩を目撃した通行人らは、ぎょっとして立ち止まり、レッドの歩くお尻を見届ける。一人で外出していた者は、ただ呆然とする。仲間同士のグループは、ヒソヒソと声を合わせて目の前の光景について語っている。
 そして、戦闘員が言葉を投げかける。
「ほーら、みんな見てるぜ?」
「……くっ、くぅぅっ!」
 まるで体が痙攣して見えるほど、レッドは屈辱に肩を震わせていた。
 パシャッ、パシャッ。
 それはシャッター音声。
「ははっ、撮ってやがんの」
 人々の無情な行いを見て、戦闘員はますます愉快に笑う。
 彼女は今日まで、人々の自由と平和のために尽くした戦隊の一人である。数々の怪人を打ち倒し、既に数え切れないほどの被害者を救済した英雄だ。
 しかし、そんなヒーローの無残な姿を見て、人々の取る行動は写真を取ることだった。何人もの若者がスマートフォンを彼女に向け、それぞれのシャッター音声を鳴らしてお散歩姿を保存する。
 ツイッター、フェイスブック、2ちゃんねる。
 ヒーローの姿はいたるところに晒されて、それが瞬く間に拡散したネット上では、話題と議論が巻き起こされる。晒し行為を叩く声もあれば、それを正当化する声も、開き直って堂々とエロスを嗜む歓喜の声もある。
 いずれにせよ、この場にいる限りの人々だけでなく、もっと不特定多数が彼女の画像を既に見て、使っている。それはおそらく、日本の人口の半数近くにも上っていた。
 画像どころか動画モードの者すらいて、貴重な映像を撮ることに腐心していた。
「ほら、見ろよ」
 戦闘員はスマートフォンの画面を出し、ネットの現状を見せつける。
「……!」
 レッドは顔を歪めた。
「お前の守ってきた人々ってのはさ、まあ所詮こんなもんなんだよね。よく正義感とか燃やせるよねー。ご苦労ご苦労」
 正義を馬鹿にする言葉をかけ、戦闘員は尻を叩いた。

 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ――

 尻を楽しげにタップしながら、実に愉快に語っていた。
「せっかく今まで戦ってきたのに、やってらんないねぇ? お前が過去に救った人々も、みーんなこの画像見てるよ? この呟き見ろよ。お前のケツでオナニーしたってさ」
 レッドはうな垂れた。

 ペチ、ペチ、ペチ、ペチ――

 尻をペチペチ揺らされながら、そんな言葉を聞かされる。やりきれない思いのレッドは、人質さえいなければ、と。猛烈な歯がゆさに苛まれながら、視姦と尻叩きと、それが晒されている現状を胸で堪えた。
「どうなの? お前、こういう奴ら守るの?」
 ぐにっ。
 戦闘員は両手で尻たぶを掴み、ぐにぐにと捏ね始める。
「おーい! 住民のみなさーん? 今日はこの女レッドが、日本の人類のために肛門を晒してくれるそうですよー?」
 その場にいる人々に呼びかけて、戦闘員はスマートフォンを片手にする男を寄せ集めた。ほとんどの、会社員や学生を含めた、この場にいた限りの男が尻に群がり集合し、一目覗き見ようと顔を寄せる。
「……くっ! くぅっ、うぅぅ……!」
 視姦という名の、それは苦痛に耐える呻きであった。
 人々の目という目が、両手で開かれた割れ目に注目し、桜色の雛菊皺を観察する。痛いほどの視線が突き刺さり、まるで肛門を焼き尽くされる心地に、羞恥と屈辱に悶絶した。
「うっ、うあぁぁ……!」
 心理的苦痛に対する、低い低い悲鳴。
 だが、人々はお構いなしだ。
「さあ、みなさん! 拝めるのは今だけですよ? 後悔しないように撮影しちゃって下さい!」
 その瞬間――

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 何度も何度も、執拗なまでにシャッター音声が響き始めた。ありがちなシャッター音声から、メロディーじみた音まで混ざり合わさり、お尻が磨り減って思えるほど、レッドの肛門は撮り尽くされた。




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